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【番外編】『背が高いだけの私が、美形兄弟と!? 〜妹ミクの物語〜』
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ヨウコが答えを出したあと――。
妹のミクにも、新しい小さな物語がありました。
少し切なくて、でも温かいスピンオフをお楽しみください✨
(本文)
ヨウコとヨウヘイは、ついに恋人同士となった。
二人が並んで歩く姿は自然で、誰が見てもお似合いに見えた。
そしてトウジは――表面上は笑顔で二人を祝福しながら、ヨウコと「友人」として過ごしている。
だが、ミクにはわかっていた。
姉のそばにずっといたからこそ、トウジの瞳に宿る影が見えたのだ。
長年寄り添ってきた想いは、そう簡単に消せるものではない。
「はぁ……トウジさん、辛いだろうなぁ。あんなにお姉ちゃんを好きだったのに……」
夜、部屋でぽつりと呟く。胸の奥が切なくて、ため息ばかりがこぼれる。
ふと窓の外に目をやると、白い雪がしんしんと降り始めていた。
「わぁ……雪だ」
そう言って窓ガラスに手をかけた瞬間、視線が玄関先に向かう。
――そこに、黒髪のあの人が立っていた。
真っ直ぐに見上げる瞳。その先は、姉の部屋の明かりへと向いている。
心臓が跳ねた。気づけば足が勝手に動き出していた。
階段を駆け降り、勢いのまま玄関を開ける。
冷たい夜気が頬を打ち、次の瞬間、黒曜石のように澄んだ瞳と視線がぶつかった。
「……よう。近くを通りかかっただけだ」
トウジはいつもと変わらぬ笑顔でそう言った。
その言葉が胸を締めつける。
気づけばミクは、傘もささず裸足のまま彼に飛びついていた。
「トウジさん!辛いなら辛いって言ってください!
お姉ちゃんはバカだ!トウジさんがこんなに思ってるのに……友だちなんて、そんなの辛すぎる!」
堰を切ったように涙があふれ、声が震えた。
驚いたように目を見開いたトウジは、黙って小柄なミクを抱きしめ返す。
その後頭部に額を寄せ、ひとすじの温かい雫を流した。
「……本当に好きだったんだ。何もかも捨てられるくらいに」
低く掠れた声が夜に溶ける。
ミクはわんわんと泣きながら、さらに強く抱きしめ返した。
「なんでお前が泣くんだよ……」
そう言って笑うトウジの声が、かえって切なくて。
でも次に聞こえた「ありがとう」の一言が、心の奥に灯りをともした。
――その夜は、静かに更けていった。
翌朝。
目が腫れたまま朝食を取るミクに、心配そうにヨウコが声をかける。
「目……どうしたの?腫れてるよ」
「えっ、あ、昨日動画の感動シーン見ちゃって、めっちゃ泣いちゃって」
慌てて笑ってごまかすと、ヨウコは「そう……?」とだけ呟き、食卓に視線を落とした。
やがていつものように支度を済ませたヨウコは、通学路へ向かう。
家の前では、いつも二人――ヨウヘイとトウジ――が待っているはずだった。
しかし、その日は違った。そこにいたのはヨウヘイただ一人。
「トウジ、どうしたの?」
ヨウコの問いに、ヨウヘイは少し迷ったように口を開く。
「今日からは……二人で行けって。兄さんが」
一瞬、沈黙が流れる。
ヨウコは目を閉じ、そしてふっと微笑んだ。
「そっか。……うん、ヨウヘイ、行こう」
吹っ切れたような声。
その背を見送りながら、ミクは胸に小さな痛みを抱えたまま中学へと向かう。
角を曲がったその時――
黒曜石の瞳が、こちらを見ていた。
「途中まで一緒だろ。一緒に行こう」
そう微笑んだトウジに、ミクの頬が熱くなる。
えっ……なに?どうして……?
戸惑いながらも隣を歩き出す自分がいる。
――その様子を、天界からルミエールが覗き見ていた。
「ふふっ☆ 出会いって、どこから始まるのかわからないから面白いのよね」
柔らかな風が、雪の残る朝を静かに吹き抜けていった。
---
(後書き)
読んでくださり、ありがとうございます!
ヨウコの物語が一区切りついたあと、妹ミクの目線から描く日常を少しだけ覗いてみました。
読後にほっこりしていただけたら嬉しいです。
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