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番外編 クルミ
魔王の反応1
しおりを挟む父様が何を考えているのかわからない。
私がクロム兄様の指輪を薬指に付けているのを見ても、父様は何も言わない。気がついてない?そんなわけない。
逆鱗程じゃないけれど持ち主の魔力を宿してる。
もっと強い父様には何も感じないとか?よく分からない。
母様は指輪を見てニコニコしてるので分かりやすい。母様の幼いクロム兄様への溺愛っぷりは、竜国では伝説になるぐらいなので母様は大丈夫。
「あの、父様はこの事、ご存知なのかな?」
母様との昼デートなるものに行っている間にそれぞれの天馬の世話をしに来ていた父様の幹部達に聞く。
「その事について特に何か話されたことは無いように思いますが……」
「それね~~~クロムの気持ちは気がついてるはずだけどね~~~」
ユアンが言い、ルースが答える。
「クロム坊がエルダゾルク一の美姫と結婚かぁ、俺が着物でいると懐に入り込んで丸くなって眠ってたあいつがなぁ…………泣ける……」
「あはは、私は美姫なんかじゃないよ」
「「「………………」」」
「魔王と兄弟の鉄壁が凄いっスからね!」
小道からプレゼントを山ほど抱えてきたリツが言う。
「リツ、また父様から?」
「はい!今日は町デートなんで、天女さんの視界に入ったもの全部買うんス!」
えーー、それは…………すごいな。
「クロム兄様のお気持ちなんて、私は知らなかったの。みんなは知ってたの?」
皆そういう口ぶりだ。私と、母様以外。
「あ~~~、親子で似てるけど、つむつむはぼんやり系でクルミ殿下は天然系ね~~~」
なんだろ、そうかな?それ今関係あるのかな?
「あれ?俺、公爵で姫婿な最強男から兄って呼ばれるんスか!!??やばいっス!!パーティー用の経歴書類に書こう!!1番上に書こう!!赤文字で!!」
「必死~~~」
話がどんどん違う方向にいっちゃうな……
「クロム兄様は、おもてになるでしょう?地位も、力もあるから……」
「そりゃあなぁ、かつてのリヒトを見てるようだよなぁ」
「クロムは大丈夫ですよ、姫殿下を手に入れる為に必死ですから。他は全く見えておりません」
クロム兄様が…………必死?何でもスマートにこなして出来ないことなんてないのに?
父様は何て言うんだろう。
兄様に怒るかな。伯父様みたいな感じなら大丈夫そうだけれど、父様は何か違う感じがする。
「殿下がどう出るかは我らでも分かりませんね」
「レスター兄様も同じ事を言ってたの。私は父様には、喜んで頂きたい……」
「何とかなるっしょ~~マジ殺そうとしたら俺らも止めるよ~~~」
ルースがニコニコしながら恐ろしいことを言う。
「私、父様が闘っているところ、見たことないの。魔力が高いのは分かるけど…………やっぱり強いんだよね……」
「えぐいね~~~クロムが軍神なら殿下は魔王だよね~~~」
お、おぅ…………。
——————「ルース兄、クルミを脅すのはやめて頂きたい」
うしろからひょいと抱かれて目線が上がる。
大好きな匂いですぐ分かる。
「ようクロム!久々に手合わせすっか~~~?」
「いえ、ルース兄とやるのは骨が折れますので」
「んで~~~?どーすんの、王族と婚約するのに本人同士だけで済むわけないのは分かってるだろ?」
ルースナイス!!!どうなさるおつもりなのか聞けなかった事が簡単に聞ける!!!
「まぁ、殺される覚悟で行くしかないでしょうね…………クルミ、明日の夜会は一緒に出ようね?スカーレットに頼んでいた着物が来たから持ってきた」
「ひぇっ…………」
妹から恋人への急なクラスチェンジに私の全細胞がついて行かない!!!
兄様からの!!プレゼント!!!!
「クロム坊、陛下から成人までプレゼントも禁止されてなかったか?」
「有耶無耶にして押し通します」
「わはははははは!!!!腹いてぇ!!!」
ルースがお腹を抱えて笑い、ユアンがため息をつく。
「お前はやっぱりリヒトに育てられただけあるな」
クロードが呆れて言った。
◇◆◇
「わぁ!銀のシルクジャガード!高級な織物だねぇ!!」
母様が兄様からのプレゼントを衣桁にかけながら言う。
ほんとにうっとりするほど綺麗。
「帯はダークグレー?何か全体的に暗くない?大人っぽすぎるっていうか…………おわ!この箱、重い!!何!?」
恐る恐る母様と2人で箱を開けると薄い色味のエメラルドをふんだんに使ったアクセサリー。
髪用と、ネックレスと、耳飾りと…………。
銀の髪と、ダークグレーの瞳、その中の薄いエメラルドグリーンの虹彩。完全にクロム兄様の色。
「リヒト様も凄いけど、クロム君もたいがいだねぇ」
「………………」
「あ、シフォンの帯飾りが沢山入ってる!帯にこれ飾ればかわいくなるね!ミリーナさんに小さいリボン沢山のやつにしてもらおう!」
ぼんやりしてしまって、はしゃぐ母様の言葉が半分も入ってこない。
「私もお揃いでリヒト様色にしよ~~~!最近飽きて着てなかったから!」
「きっとちょうど良いのが今届きましたよ」
ミリーナが箱を抱えて入ってきて言う。
「父様から?私も見たい!」
父様から母様への贈り物は、落ち着いた紺色の地に金のキラキラした星がちった着物。
本物の夜空みたいに綺麗。
「わぁ~~~、天の川みたい!」
母様は時々意味のわからない事を言うけれど、子供の時からずっとなので、私達にはスルースキルが付いている。
「母様、お揃いのお化粧、する?」
「クルミは外人顔だからお化粧なんていらないじゃん!でも楽しそう!いいね!」
母様が夜会にノリノリなのはいい事だ。
母様はなぜかあまりパーティーに参加したがらない。他種族が集まるようなパーティーは、特に。
今日は天馬の件の報告も兼ねているから主要他国も集まる。
世界中の天馬がここに集結した事を不安視する声が出ているせいだ。
兄様のパートナーとして出る初めての夜会が、天馬関連の夜会になった事に大きな意味を感じてしまう。
不安しかないけれど、私には天馬100頭がついていると思えるから。
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