【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

文字の大きさ
169 / 173
番外編 クルミ

魔王の反応1

しおりを挟む

 
 父様が何を考えているのかわからない。

 私がクロム兄様の指輪を薬指に付けているのを見ても、父様は何も言わない。気がついてない?そんなわけない。
逆鱗程じゃないけれど持ち主の魔力を宿してる。

 もっと強い父様には何も感じないとか?よく分からない。

 母様は指輪を見てニコニコしてるので分かりやすい。母様の幼いクロム兄様への溺愛っぷりは、竜国では伝説になるぐらいなので母様は大丈夫。

「あの、父様はこの事、ご存知なのかな?」

 母様との昼デートなるものに行っている間にそれぞれの天馬の世話をしに来ていた父様の幹部達に聞く。

「その事について特に何か話されたことは無いように思いますが……」

「それね~~~クロムの気持ちは気がついてるはずだけどね~~~」

 ユアンが言い、ルースが答える。

「クロム坊がエルダゾルク一の美姫と結婚かぁ、俺が着物でいると懐に入り込んで丸くなって眠ってたあいつがなぁ…………泣ける……」

「あはは、私は美姫なんかじゃないよ」

「「「………………」」」

「魔王と兄弟の鉄壁が凄いっスからね!」

 小道からプレゼントを山ほど抱えてきたリツが言う。

「リツ、また父様から?」

「はい!今日は町デートなんで、天女さんの視界に入ったもの全部買うんス!」

えーー、それは…………すごいな。

「クロム兄様のお気持ちなんて、私は知らなかったの。みんなは知ってたの?」

 皆そういう口ぶりだ。私と、母様以外。

「あ~~~、親子で似てるけど、つむつむはぼんやり系でクルミ殿下は天然系ね~~~」

 なんだろ、そうかな?それ今関係あるのかな?

「あれ?俺、公爵で姫婿な最強男から兄って呼ばれるんスか!!??やばいっス!!パーティー用の経歴書類に書こう!!1番上に書こう!!赤文字で!!」

「必死~~~」

 話がどんどん違う方向にいっちゃうな……

「クロム兄様は、おもてになるでしょう?地位も、力もあるから……」

「そりゃあなぁ、かつてのリヒトを見てるようだよなぁ」

「クロムは大丈夫ですよ、姫殿下を手に入れる為に必死ですから。他は全く見えておりません」

クロム兄様が…………必死?何でもスマートにこなして出来ないことなんてないのに?

 父様は何て言うんだろう。
兄様に怒るかな。伯父様みたいな感じなら大丈夫そうだけれど、父様は何か違う感じがする。

「殿下がどう出るかは我らでも分かりませんね」

「レスター兄様も同じ事を言ってたの。私は父様には、喜んで頂きたい……」

「何とかなるっしょ~~マジ殺そうとしたら俺らも止めるよ~~~」

 ルースがニコニコしながら恐ろしいことを言う。

「私、父様が闘っているところ、見たことないの。魔力が高いのは分かるけど…………やっぱり強いんだよね……」

「えぐいね~~~クロムが軍神なら殿下は魔王だよね~~~」

お、おぅ…………。

——————「ルースにぃ、クルミを脅すのはやめて頂きたい」
うしろからひょいと抱かれて目線が上がる。
大好きな匂いですぐ分かる。

「ようクロム!久々に手合わせすっか~~~?」

「いえ、ルース兄とやるのは骨が折れますので」

「んで~~~?どーすんの、王族と婚約するのに本人同士だけで済むわけないのは分かってるだろ?」

 ルースナイス!!!どうなさるおつもりなのか聞けなかった事が簡単に聞ける!!!

「まぁ、殺される覚悟で行くしかないでしょうね…………クルミ、明日の夜会は一緒に出ようね?スカーレットに頼んでいた着物が来たから持ってきた」

「ひぇっ…………」

 妹から恋人への急なクラスチェンジに私の全細胞がついて行かない!!!

 兄様からの!!プレゼント!!!!

「クロム坊、陛下から成人までプレゼントも禁止されてなかったか?」

「有耶無耶にして押し通します」

「わはははははは!!!!腹いてぇ!!!」
ルースがお腹を抱えて笑い、ユアンがため息をつく。

「お前はやっぱりリヒトに育てられただけあるな」
クロードが呆れて言った。




◇◆◇




「わぁ!銀のシルクジャガード!高級な織物だねぇ!!」

 母様が兄様からのプレゼントを衣桁いこうにかけながら言う。
ほんとにうっとりするほど綺麗。

「帯はダークグレー?何か全体的に暗くない?大人っぽすぎるっていうか…………おわ!この箱、重い!!何!?」

 恐る恐る母様と2人で箱を開けると薄い色味のエメラルドをふんだんに使ったアクセサリー。
髪用と、ネックレスと、耳飾りと…………。

 銀の髪と、ダークグレーの瞳、その中の薄いエメラルドグリーンの虹彩。完全にクロム兄様の色。

「リヒト様も凄いけど、クロム君もたいがいだねぇ」

「………………」

「あ、シフォンの帯飾りが沢山入ってる!帯にこれ飾ればかわいくなるね!ミリーナさんに小さいリボン沢山のやつにしてもらおう!」

 ぼんやりしてしまって、はしゃぐ母様の言葉が半分も入ってこない。

「私もお揃いでリヒト様色にしよ~~~!最近飽きて着てなかったから!」

「きっとちょうど良いのが今届きましたよ」

ミリーナが箱を抱えて入ってきて言う。

「父様から?私も見たい!」

 父様から母様への贈り物は、落ち着いた紺色の地に金のキラキラした星がちった着物。

本物の夜空みたいに綺麗。

「わぁ~~~、天の川みたい!」

 母様は時々意味のわからない事を言うけれど、子供の時からずっとなので、私達にはスルースキルが付いている。

「母様、お揃いのお化粧、する?」

「クルミは外人顔だからお化粧なんていらないじゃん!でも楽しそう!いいね!」

 母様が夜会にノリノリなのはいい事だ。
母様はなぜかあまりパーティーに参加したがらない。他種族が集まるようなパーティーは、特に。

 今日は天馬の件の報告も兼ねているから主要他国も集まる。
世界中の天馬がここに集結した事を不安視する声が出ているせいだ。

 兄様のパートナーとして出る初めての夜会が、天馬関連の夜会になった事に大きな意味を感じてしまう。

 不安しかないけれど、私には天馬100頭がついていると思えるから。




しおりを挟む
感想 1,228

あなたにおすすめの小説

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。  天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。  学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。

処理中です...