【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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番外編 クルミ

魔王の反応2

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「はぁ~~~俺の番可愛い、最高。誰にも見せたくない……」

 父様は私の格好をみてもしっかりいつも通りで母様を抱き上げて嬉しそう。

 クロム兄様の魔力を宿す指輪をして、クロム兄様の色に包まれているというのに。

「じゃあクルミ、会場でね?」

「あ……うん」

 母様が気を利かせてくれた。
クロム兄様が来てから4人で移動なんて地獄だもの。

 兄様を待つ間、ソワソワしてしまう。ミリーナが後ろで呆れるぐらい。

 匂いと気配で庭からやってくるのが分かってどんな顔で会えばいいのか分からなくなる。

 勝手にニヤニヤしてしまう口元を誤魔化す為に頬をつねったら、ミリーナに触るなと怒られた。

「クルミ?凄く……可愛い、行くのやめる?僕とデートに変更しようか」

「兄様も、父様みたい」

 大笑いする兄様にびっくりする。
本当に楽しそう。あと、嬉しそう。

 そんな兄様は近衛の式典用の物なのか、紺地に金と銀の装飾が為された軍服を着ている。

 かっっっこいい!!

 金の飾緒が肩から揺れて、胸には青い宝石が嵌め込まれた勲章が光る。

「兄様こそ……素敵です……」

「あはは、近衛の軍服は豪華なだけだよ、さぁ行こうか。お手をどうぞ?お姫様」

 うちの軍隊にはない騎士の礼をして私に手を差し出す。

 キャパオーバーで鼻血が出そう!!!



◇◆◇


「我ら竜族、中立者の元に天馬が聖地を定めた事、ラズウェルが益々の神威の庇護にあずかる事と同意である。世界は神威にて護られ、いかなる悪しきものも寄せつけぬ。
各々肝に銘じ、神託のままに勤めを果たせ」


 フォルド伯父様、何言ってんだろ。テトが集めちゃっただけなのに…………無理やりすぎない?
みんな信じてるっぽいしまぁいいけど。

 伯父様は小難しい言葉で簡単に他国を騙してこの問題を終わらせてしまった。
ポンコツだけど、頭は凄くいい。実は威厳もある。喋らなければ。

 音楽が鳴り始め会場の緊張感がほぐれて、ざわざわとしたお喋りが始まった。

————「クルミ姫!」

 懐かしい声がして振り返ると、シルバーグリーンの髪を片側だけあげてオシャレをしたライがいて、私の前で礼の姿勢を取る。

「ライ!久しぶり!招待されていたの!?会えて嬉しい!お国はどう!?」

 ライを立ち上がらせて、礼を断り話しかける。

「ああ!もうかなり復旧してきたんだ!!また遊びに来て欲しい、春には雪が溶けてまた街並みがかわるから」

 レスター兄様が壇上からこちらに気付いて降りてくるのが見える。
レスター兄様がわざわざ降りてしゃべりに来る程の国、と周りには伝わる。
パーティーとはそういう政治的な面が大きい。
だから母様は嫌いなのかも。

「よう、ライ」

 ライが跪いて礼を取る。
「王太子殿下におかれましてはご機嫌麗しく、日々お健やかにお過ごしのことと存じます」

「礼はいい、立て。その後はどうだ」

 ゆっくり立ったライは私達に笑いかける。

「溺れる程の祝いを貰ったんだ、立ち直れないはずがないよ」

「ダチの所に天馬が嫁いだからな。気持ち足しただけだよ」

 ああまだそういう設定か。みんな耳を大きくして聞いてるもんね。
でも、レスター兄様と気安く喋る国の王子というだけで、もうすでに世界中から信頼を集めたも同意だ。ライ本人は弱小国と揶揄っていたけれど、もうバカにする国もいなくなる。バックにエルダゾルクがついているのだから。

「あとはまぁ、失恋への見舞いだな!わははは!!うちの妹はダメだ!軍神が目を光らせてる!気晴らしにトーナメントしようぜライ!!」

「うちは集団で弓で戦うのが戦法なんだぞ!!勘弁してくれ!!!」

「へぇ、弓か。弓の競技はあんのか?」

「競技?それは楽しそうだな。やってみたい」

「トーナメントに弓競技いれてやる!」

ガシッと肩を組んだレスター兄様がライの頭をワシワシとなでる。

「うわっ!やめろよ!精一杯カッコつけてきたんだぞ!!」

「さあクルミ、羽とレスターはほっといて踊ろう」

兄様が私の手を引く。
兄様、まだライのこと羽って呼んでた…………



◇◆◇




「クルミ?周りばかり気にしてるとつまずくよ?」

「に、兄様が素敵すぎて、ご令嬢の目が……殺気が…………」

 兄様に群がる(私が隣にいるのに!)全令嬢を微笑でかわし、私とダンスを踊る兄様は本当に王子様みたいでうっとりするほど素敵。

 レスター兄様のおかげでエルダゾルクにもかなりダンスの習慣がついてきた。他国が招かれるパーティーではダンスも催されるようになったもの。

 レスター兄様はまだライと喋っていて楽しそう。

 秋は最近パーティーにお呼ばれするのが趣味になったアイラちゃんのエスコートをしてる。
アイラちゃんの外国風のフリフリドレス、なかなか可愛い。似合ってる。


 母様は父様と二階の王族専用スペースにずっと引っ込んでる。何しにきたんだ。ほんと嫌いだな、パーティー。

「キョロキョロしてるのも可愛いけど、僕に集中して?」

 兄様が私の肩におでこをスリっと擦り付ける。子供みたいな仕草に笑ってしまう。
公爵様で、陛下の側近で、凄くカッコいい人が。

「兄様、私、ずっと兄様のこと、好きで」

「ん」

「…………兄様も?」

 多くを語ってはくれない兄様に、これからはたくさんの質問をしたい。優しいから、全部答えてくれるはず。

「そうだよ?知らなかったのはクルミだけじゃない?あ、母上は加護がある筈なのに自分の願望と一緒になっちゃって、わかってなかったみたいだね」

「…………すごく、嬉しい……です」

「ん」

やっぱりお返事は短いけれど、それも心地いい。

「あとは僕が頑張らないとね……」


 曲の終わりにボソッと言った兄様は、私を秋に託してから壇上を向いた。

 いつの間にか父様がいて、他国の王族達から挨拶をうけている。

 母様はと探すと、クレア様とレアット様と3人で休憩スペースでお茶会を始めている。
本当に自由な人だよ。
ガチガチに周りを軍部が警備していて、父様の過保護がやばい。挨拶すら全拒否の構え。


「秋、必ず守れ、傷一つつけるな」

「はっ!」

 秋が真面目な返事をしてる。兄様がピリついているからだ。何?どうしたの?

 そのままツカツカとどんどん父様に近づくクロム兄様の背中を見送る。

 父様が兄様に気付き、賓客達が下がる。

——————兄様は父様の数メートル前で止まると、二振りの刀を片手に持ち、フロアにダンッっと鞘底を鳴らして打ち付けながら跪きこうべを垂れた。











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