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番外編 クルミ
エピローグ1 つむぎside
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クルミの卒業と同時にクロム君はクルミと祝言をあげた。
びっくりするほど鮮やかに各方面の根回しから、祝言の段取り、衣装の用意までの全てを涼しい顔でやってのけていた。
祝言は神への奏上を嫌がった陛下の代わりにレスターが横から奪い奏上するというハプニング以外はつつがなく終わった。
本当に焦ったし、クロム君の舌打ちを初めて聞いた。
陛下の拒否をよそに、クルミはすぐに妊娠し、卵を一つ産んだ。
けれどここで困ったことが起きた。
もうあと少しで卵がかえる、というときにクルミがまた妊娠したのだ。
竜族の女性は卵を躍起になって守る。
お腹の中にいる時はコントロールできる程度らしいけれど、卵でいる期間は夫以外を寄せ付けない。
それは自分の子供も入るそうで、本当に卵のことしか考えられないそうだ。殻が破られた瞬間からその呪縛は終わるらしい。
竜人こわ。
陛下の邸の中に夫婦の居室を貰ったクルミ達の部屋に急遽呼ばれた。
————卵に、ヒビが入った!?
私に似ている娘の出産ということで、大事をとって王族の誕生の儀はクルミが落ち着いてからにしてくれたらしい。
私達家族だけ、息子夫婦の部屋に呼ばれている。
パリパリとヒビが大きくなる。
どんな子が生まれてくるんだろうか。
「止まったな~なんでみんな一度止まるんだろうな?」
レスターがのんびり言う。
「出るぞ」
リヒト様が言って、揺り椅子に座るクルミのそばに寄り添うクロム君がこちらを凝視している。
急に部屋に竜巻が起こって、卵がいっぺんに粉々になり、その殻が渦を巻いて小さな小さなシルバーの子竜の周りを舞う。
ぐるぐると舞う殻を不思議そうに眺める小竜。小さくて、すごく可愛い。
「レスター、頼む」
クロム君がかけより、抱き上げながらレスターに言う。
「はい兄上、只今」
レスターが書類を天界から呼び寄せてクロム君の前に出す。
「なんて名前?」
——青・レイリン・リア・エルダゾルク
「あれ?また漢字、あ……………………」
「どうした?紬しか読めない、読んでくれ」
皆が私を見る。
私は覗き込んだ書類の青の文字の上を指でなぞる。なんども、なんども。
「母上…………?どうされたのです、何故、お泣きに…………」
困惑したクロム君が私に問い、驚いたリヒト様が私を抱きしめる。
「私の父親の…………貴方達のおじいちゃんの名前なの……アオ、と読むよ。おじいちゃんの名前は、青也」
顔を覆った私をリヒト様が抱きしめて肩を撫でる。
「お父さん……名前を一文字くれたのね、ありがとう」
腕の中で呟くと、私を抱く腕にギュッと力が入った。
「母上、抱いてやってください」
「駄目よ、クルミが先」
「母様、その子はもう大丈夫なの。私から生まれたなんて信じられないぐらい魔力も高い、大丈夫だから、抱いてあげて」
「それでも、クルミが先」
頑なな私をみてクロム君がまずクルミに抱かせる。あっさりとだきあげて、またあっさりとクロム君に返すクルミをぼんやり眺める。
卵の間は、私すら拒否するぐらいこの子をまもっていたのに。
私の腕の中に来たシルバーの子竜が私を見るまんまるな目。凄く凄く可愛い。
お父さんの字を受け継いだ。小さな小さな竜の男の子。
滂沱の涙を流す私を見て、リヒト様が子竜ごと抱き上げてふんわりとソファーに座らせてくれた。
「うちを選んで生まれてきてくれて、ありがとう。青、待ってたよ、会えて凄く嬉しい」
私の言葉をしっかり聞いてる。目をぱちぱちさせたかと思うと虹色になり、ぐにゃっと歪んだ。
次の瞬間、私の膝に、小さなクロム君がいた。
「クロム君!!??」
「クロム!?」
リヒト様まで叫んでる。
ふわふわの髪の、くりくりした目の美少年。
「あ、兄上そっくり…………」
レスターと秋までびっくりしてる。
「髪の色がやや違います」
クロム君が冷静に答える。
う、うん?言われてみればこの子はシルバーの髪。クロム君は今でこそ銀がかった髪だけれど、幼い時は灰色だった。
「母様、母様が青の乳母になって。私はきっとまた誰も寄せ付けなくなってしまう」
「そんなの!あたりまえだよ!!クルミが帰ってくるまで、私がこの子を育てる!!」
「よしおまえ、俺の事は主と呼べ!」
「あ!リヒト様ずるい!私のことはね、ははう……あ、だめだそれはクルミだ!お嬢って呼んでごらん!?」
「おじょ」
「~~~~~~♡♡♡♡」
「あるじ」
「っ、お、おう。俺が一からしごいてやる」
「ん」
「~~~~~~♡♡♡可愛い!可愛い!!可愛い!!」
「あ゛~~~こいつも母上との縁が深いなぁ…………」
「クロム兄様?どうしたの?」
キョトンとしたクルミの視線の先を追うと、前髪をくしゃっと握ってうつむくクロム君がいる。手がかすかに震えてる。泣いている……?
ばっと頭を下げたクロム君が、下げた姿勢のまま言う。
「父上、母上、孤児だった僕を愛してくださった事、決して忘れません。家族を授けていただいた事は僕の生きる理由になりました。僕が今ここで幸せなのは、あなた達2人のおかげです」
リヒト様にアオを預けると、リヒト様の胸元に裸ん坊の青がびたっとくっ付いた。背中の小さな銀の羽が可愛い。
「モモンガの遺伝子……強ぇな……」
ボソッとリヒト様が言うのが聞こえ、私は頭を下げたままのクロム君に近づく。
「兄妹の中で1番たよりになって、1番甘えん坊な私の息子は、私達の宝物なの。小さなあなたを育ててこれたのは私達の幸せだったの、これからも、ずっと」
ゆっくり礼をといたクロム君がふにゃっと泣き笑いの顔になり、それからクルミと顔を合わせてにっこりした。
「リヒト様ずるい!私ももっとだっこする!」
「よし青、お前武器は何にする!」
「なんで赤ちゃんに武器を持たせるの!!馬鹿!!」
「あるじ、武器なにある?」
「なんでもある。最初はインスピレーションが大事だ。今から武器庫行くか!」
「行く」
「ちょっと!?」
「おじょうも一緒」
「はぁ~~~♡いこうね♡」
「いかん、母上と親父がミニ兄上に夢中だ」
「これはアイラちゃんも取られそう……」
「あいつは兄上みたいに喋りが下手なんじゃなくて死ぬほど無口なだけだな。母上は違いがわかってなさそうだけど」
「ちょっと僕と同じ匂いを感じる……」
「どうだろうな、めんどくさがってるというより、熟考してるって感じがする…………あなどれん……ミニ兄上……」
びっくりするほど鮮やかに各方面の根回しから、祝言の段取り、衣装の用意までの全てを涼しい顔でやってのけていた。
祝言は神への奏上を嫌がった陛下の代わりにレスターが横から奪い奏上するというハプニング以外はつつがなく終わった。
本当に焦ったし、クロム君の舌打ちを初めて聞いた。
陛下の拒否をよそに、クルミはすぐに妊娠し、卵を一つ産んだ。
けれどここで困ったことが起きた。
もうあと少しで卵がかえる、というときにクルミがまた妊娠したのだ。
竜族の女性は卵を躍起になって守る。
お腹の中にいる時はコントロールできる程度らしいけれど、卵でいる期間は夫以外を寄せ付けない。
それは自分の子供も入るそうで、本当に卵のことしか考えられないそうだ。殻が破られた瞬間からその呪縛は終わるらしい。
竜人こわ。
陛下の邸の中に夫婦の居室を貰ったクルミ達の部屋に急遽呼ばれた。
————卵に、ヒビが入った!?
私に似ている娘の出産ということで、大事をとって王族の誕生の儀はクルミが落ち着いてからにしてくれたらしい。
私達家族だけ、息子夫婦の部屋に呼ばれている。
パリパリとヒビが大きくなる。
どんな子が生まれてくるんだろうか。
「止まったな~なんでみんな一度止まるんだろうな?」
レスターがのんびり言う。
「出るぞ」
リヒト様が言って、揺り椅子に座るクルミのそばに寄り添うクロム君がこちらを凝視している。
急に部屋に竜巻が起こって、卵がいっぺんに粉々になり、その殻が渦を巻いて小さな小さなシルバーの子竜の周りを舞う。
ぐるぐると舞う殻を不思議そうに眺める小竜。小さくて、すごく可愛い。
「レスター、頼む」
クロム君がかけより、抱き上げながらレスターに言う。
「はい兄上、只今」
レスターが書類を天界から呼び寄せてクロム君の前に出す。
「なんて名前?」
——青・レイリン・リア・エルダゾルク
「あれ?また漢字、あ……………………」
「どうした?紬しか読めない、読んでくれ」
皆が私を見る。
私は覗き込んだ書類の青の文字の上を指でなぞる。なんども、なんども。
「母上…………?どうされたのです、何故、お泣きに…………」
困惑したクロム君が私に問い、驚いたリヒト様が私を抱きしめる。
「私の父親の…………貴方達のおじいちゃんの名前なの……アオ、と読むよ。おじいちゃんの名前は、青也」
顔を覆った私をリヒト様が抱きしめて肩を撫でる。
「お父さん……名前を一文字くれたのね、ありがとう」
腕の中で呟くと、私を抱く腕にギュッと力が入った。
「母上、抱いてやってください」
「駄目よ、クルミが先」
「母様、その子はもう大丈夫なの。私から生まれたなんて信じられないぐらい魔力も高い、大丈夫だから、抱いてあげて」
「それでも、クルミが先」
頑なな私をみてクロム君がまずクルミに抱かせる。あっさりとだきあげて、またあっさりとクロム君に返すクルミをぼんやり眺める。
卵の間は、私すら拒否するぐらいこの子をまもっていたのに。
私の腕の中に来たシルバーの子竜が私を見るまんまるな目。凄く凄く可愛い。
お父さんの字を受け継いだ。小さな小さな竜の男の子。
滂沱の涙を流す私を見て、リヒト様が子竜ごと抱き上げてふんわりとソファーに座らせてくれた。
「うちを選んで生まれてきてくれて、ありがとう。青、待ってたよ、会えて凄く嬉しい」
私の言葉をしっかり聞いてる。目をぱちぱちさせたかと思うと虹色になり、ぐにゃっと歪んだ。
次の瞬間、私の膝に、小さなクロム君がいた。
「クロム君!!??」
「クロム!?」
リヒト様まで叫んでる。
ふわふわの髪の、くりくりした目の美少年。
「あ、兄上そっくり…………」
レスターと秋までびっくりしてる。
「髪の色がやや違います」
クロム君が冷静に答える。
う、うん?言われてみればこの子はシルバーの髪。クロム君は今でこそ銀がかった髪だけれど、幼い時は灰色だった。
「母様、母様が青の乳母になって。私はきっとまた誰も寄せ付けなくなってしまう」
「そんなの!あたりまえだよ!!クルミが帰ってくるまで、私がこの子を育てる!!」
「よしおまえ、俺の事は主と呼べ!」
「あ!リヒト様ずるい!私のことはね、ははう……あ、だめだそれはクルミだ!お嬢って呼んでごらん!?」
「おじょ」
「~~~~~~♡♡♡♡」
「あるじ」
「っ、お、おう。俺が一からしごいてやる」
「ん」
「~~~~~~♡♡♡可愛い!可愛い!!可愛い!!」
「あ゛~~~こいつも母上との縁が深いなぁ…………」
「クロム兄様?どうしたの?」
キョトンとしたクルミの視線の先を追うと、前髪をくしゃっと握ってうつむくクロム君がいる。手がかすかに震えてる。泣いている……?
ばっと頭を下げたクロム君が、下げた姿勢のまま言う。
「父上、母上、孤児だった僕を愛してくださった事、決して忘れません。家族を授けていただいた事は僕の生きる理由になりました。僕が今ここで幸せなのは、あなた達2人のおかげです」
リヒト様にアオを預けると、リヒト様の胸元に裸ん坊の青がびたっとくっ付いた。背中の小さな銀の羽が可愛い。
「モモンガの遺伝子……強ぇな……」
ボソッとリヒト様が言うのが聞こえ、私は頭を下げたままのクロム君に近づく。
「兄妹の中で1番たよりになって、1番甘えん坊な私の息子は、私達の宝物なの。小さなあなたを育ててこれたのは私達の幸せだったの、これからも、ずっと」
ゆっくり礼をといたクロム君がふにゃっと泣き笑いの顔になり、それからクルミと顔を合わせてにっこりした。
「リヒト様ずるい!私ももっとだっこする!」
「よし青、お前武器は何にする!」
「なんで赤ちゃんに武器を持たせるの!!馬鹿!!」
「あるじ、武器なにある?」
「なんでもある。最初はインスピレーションが大事だ。今から武器庫行くか!」
「行く」
「ちょっと!?」
「おじょうも一緒」
「はぁ~~~♡いこうね♡」
「いかん、母上と親父がミニ兄上に夢中だ」
「これはアイラちゃんも取られそう……」
「あいつは兄上みたいに喋りが下手なんじゃなくて死ぬほど無口なだけだな。母上は違いがわかってなさそうだけど」
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