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家族編
アルトバイス
しおりを挟む「紬ちゃ~ん!おめでとう~~~~~~!!」
クレアちゃんとレアットちゃんが庭から歩いてくる。
あの夜から、私は憑き物が落ちたかの様にレスターが誰に触られても平気になった。
ガルガル期が終わったのだ。
陛下や陛下の侍従の方たちに謝りに行ったら、笑って許してくれた。ちゃんとレスターも抱いてもらった。
「ありがとう!レスターっていうの!」
「知ってるよ~~~国中が二週間も生誕祭してたんだよ!?」
「え!?そうなの!!??」
し、知らなかった……
レスターは人型を取ることが多くなった。
リヒト様曰く、喋りやすいから、らしい。
いまは庭でクロム君と喧嘩?殴り合い?手合わせ?をしている。
目で追えないからもう見るのをやめた。
「アイラさんがユアン様を恋しがってるよ~~!」
「アイラさんズルい。みんなのユアン様なのに」
私へのヘルプがおわったので、ユアンさんの送迎が無くなったお母さんの嘆く姿が目に浮かぶ。
「ふふふ、今度温泉旅行のやり直しに連れて行ってくれるって。その時にユアンさんいっぱい見れるよ!あ、ルース君が怒るか」
クレアちゃんが急激に赤くなる。
「ゆ、ユアン様は憧れだから、別枠!!」
「ふーん、今日の帰り、どっちに頼む?」
可愛くて意地悪な質問をしてしまう。
ルース君の気持ちがちょっと分かる。
「そ、そ、そ、それは、もう、来てくださるって、ルース様が……」
「「 何それ素敵!! 」」
ルース君、やるなぁ。
クレアちゃんの恋バナを散々聞き出していたら、直ぐに夕方になってしまって、ルース君が庭からクレアちゃんを迎えに来た。二人で飛んで帰るらしい。空のデート、いいな。
「わたしもそろそろ帰ろうかな」
「あ、じゃあ誰かに頼んで……」
「いいの、私のうち結構近いから。歩けるしね」
下から覗かれたら嫌だから、女子はあまり飛ばない。飛ぶならすごく高く飛ぶらしい。
「じゃあ門まで送ってもいい??」
「妃殿下、優しい……」
「ふふ、アルトバイス、おいで!」
庭でまったりしていたアルトバイスに声をかける。仔馬が産まれてからというもの、ヴァルファデとアルトバイスも私達と仲良くしてくれるようになった。クリストフも、私には懐かないまでも庭に来てくれる。何故かは分からないけど、ファミリーに入れてもらえたって感じ。まだみんなには言ってないけど。
縁側に置いてあったテトの手綱をアルトバイスに装着して一緒にお散歩をする。
レアットちゃんと並んで歩いて、茶色のアルトバイスが少し前をゆっくり歩く。私達を急がせない様に配慮してるのが分かる。優しい、賢い子。
いくつか門を潜って、三個目の門衛さん。新婚ほやほやで、いつも奥さんの羽を持ち歩いてる虎獣人の軍人さん(奥さんは鳥の獣人らしい)。話のわかる人で、王宮に行く時はよく挨拶する。
「あ!マルケスさん、ちょうど良かった!レアットちゃんに渡したかったもの、忘れちゃったの!すぐ取ってくるから少しの間レアットちゃんの護衛、お願いしてもいいですか!?」
「おう妃殿下!全然いいぜ!今度うちの嫁にも甘いもの、くれよ!」
「オッケー!じゃ、レアットちゃん、このお兄さん超いいひとだから大丈夫。ここでちょっとだけまってて!」
「ん、わかった。お土産、期待!」
ふふ、可愛いな。
「さ、アルトバイス、行こっか」
小走りに王宮の方へかけていく。アルトバイスも何をするかもう分かっているのか進みに淀みがない。
近道をどんどん抜けて、王宮の三階のあの窓。近づくいていくと、まだあと三十メートルはあるという距離で勢いよく窓が開く。
「つむぎ!?は!?アルトバイス!!?」
「リヒト様ー!クロードさん、いるー?」
窓から覗いたクロードさんが驚愕の眼差しで私を見た後、すぐに下に降りてきてくれた。
「何でアルトバイス!?どうやって!?」
クロードさんはアルトバイスが私と共にいることに混乱してる。
「クロードさんあのね、レアットちゃんを送る役目、いろんな軍人さんが取り合っちゃって、レアットちゃんが困ってるんだけ」
「すぐいく。アルトバイス、いくぞ」
被せたな。最後まで言わせてよ。
「じゃあ行きましょうか。青の門です!」
鞍なしでアルトバイスに騎乗したクロードさん、ちょっと目がすわってる。
「リヒト様~!私もつれてって~!」
ドン引きしてるリヒト様が降りてきて、私を抱いてアルトバイスの後をおってくれた。
「おまえわざとだろ。まぁいいけど」
「ふふふ、ちょっといたずら。マルケスさんが殺される前に連れて行ってね?」
「はぁ~~~~~~~~~~~俺はお前に甘いなぁ……」
「ふふふ」
作戦は概ね成功で、クロードさんの圧にマルケスさんが半泣きになってしまった事だけが失敗といえば失敗だ。
鞍がないので、お姫様抱っこのままクロードさんがレアットちゃんを送って行った。
レアットちゃんは最後私に嬉しそうに手を振ってたから良かった。
マルケスさんには山盛りのクッキーを渡して謝っておいた。
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