【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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最終章 人族編

クレアの逃亡2

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「わぁ~~~前と全然違う!!」

「す、すごい、こ、国宝だよね!?えぇ……」

 人間族の家や神殿は全て取り壊されて跡形もない。あの偽物の離れも。

 私が嫌な思い出を思い出さない様にとリヒト様が気を遣って建物のイメージから全て変えてくださった。全く別の場所に見えるようにリヒト様が采配してくださってありがたい。

 ずっと偽物の離れにいたので、天空領自体に恐怖や嫌悪を感じるわけではなくてよかった。
同じ作りの離れにはまだトラウマがあるけれど、本物の離れの改修は断った。私は本物の離れが好きだから。

 丘の上にたつ、レンガのお家。小さな教会みたいで可愛らしい。

 レンガのお家の二階の窓から外を見ると、下の方に見える湖の真ん中にある浮島に、中世ヨーロッパ風の石造りのお城までできてる。すごく素敵。ロマンチックが過ぎる!

「わぁ!全然寒くないのに暖炉まである!」

 レンガのお家はわりとシンプルで、リヒト様好みなのかも。
 いつかカルネクアの辺境でいったあの教会ににてる。
 こういう所に住みたいって私が言ったのを覚えていてくれたと分かる。

「よぉ妃殿下!急にどうした?家出か?お披露目は一週間後だったはずだろ?」

 開けっぱなしだったドアからひょいとマルケスさんが顔を出す。

「ん~~~似た様なものかも!マルケスさん!奥さんは?」

「天馬の厩に坊ちゃん達を案内してからすぐ来るぜ!やっと紹介できるな!」

 王宮の青の門の門番だった虎獣人のマルケスさんが夫婦で天空領の建物の管理人をしてくれている。

 奥さんが鳥獣人で高い所に住みたかったらしく、募集に一も二もなく応募してきたので即採用してもらった。因みにお給金も増やしてもらった。

 まだレンガのおうちと、湖のお城の二つしか建物がないので管理人は彼らだけ。これから増やすんだって。

 マルケスさん達は大きな木の上にツリーハウスを作ってすんでるらしい。素敵すぎ。

「お土産に美味しいワインを持ってきたの!奥さんに甘いものも!」

「最の!高!!!」

 ノリも良くて優しくて、奥さん大好きなマルケスさんは、話のわかる超いい人。
 奥さん大好きオーラを隠さないせいか、リヒト様がヤキモチを妬かない数少ない人だ。

「つつつつむぎちゃん!こ、国宝に、私、国宝踏んでる!?」

 そりゃまぁ国宝っていっても土地ですし。踏まないと立てないしね!

「「 ははうえ~~~! 」」

 二人の息子が荷物を持って飛んで来た後から、背中に白い羽のあるおっとりした女性が入ってきた。黄緑の髪を片側でゆったり結んでいて、水色の目が涼やかだ。

「妃殿下、お初にお目にかかります。マルケスの家内でございます。カカラと申します」

「わぁ!ずっとお会いしたかったんです!マルケスさんの大好きな奥さん!」

 にこにことおっとり笑うカカラさんと真っ赤になったマルケスさんに手早く事情を耳打ちして、窓の外を見ていたクレアちゃんに声をかける。

「クレアちゃん、湖に行ってみよう!」

丘の上からおしゃべりしながら湖までお散歩する。
子竜二人がもつれあって私達の前方を飛んでいる。

気分転換になったのか涙は引っ込んだ様で、天空領を物珍しげにみながらキャアキャアと楽しく下って行くと、目の前に広い湖が広がっていた。

「わぁ、つむぎちゃん!湖に月が映ってすごく綺麗!」

「ほんとだね、素敵!!二十年後のイケメンがお相手してくれるよ!ちょうど二人いるし!」

 息子達を指差して、笑い合う。
ぎゃ、二人とも湖に入った!お風呂入ったばっかりなのに!!!

————「クレア……」

「っ、ルース、様……………………」

 来たな、不誠実な男ども。
後ろにいるリヒト様は完全なるとばっちりだけどね!思い出してイライラしただけだし!

「クレアちゃん、ルース君のお話し、ちゃんと聞いてあげて?前の私みたいにこじれちゃう前に」

「つ、つむぎちゃん……でも……」

 クレアちゃんににっこり笑ってみせて、ルース君に向き合う。

「明日までクレアちゃんに侍女を付けます。既に石のお城で待ってるはず。ルース君、頑張って?這いつくばって謝るしかないけど!」

 ルース君が私に頭を下げる。
クレアちゃんの背中を優しく押して、戸惑うクレアちゃんをルース君に託してから、リヒト様の方に駆け寄るとすぐに抱き上げてくれた。

「とばっちりで家出された!!!!ルースの野郎!!」

「ふふ、子供達をお風呂に入れ直さなきゃ、大きな温泉にみんなではいろう?心配かけてごめんね?」

 リヒト様には事情を書いたお手紙の最後に、思い出してイライラするから私も一緒にいってくるね!と書いた。

 もう一通はルース君宛。
クレアちゃんの様子と、早くあやまりにおいでって書いた。

 石のお城に泊まる第一号の栄誉を与えたのだ!頑張れルース君!

 ミリーナさんに用意してもらったステキお泊まりセットで、侍女につけたカカラさんに可愛くしてもらってね、クレアちゃん!

「なんで俺が部下の尻拭いを………………あいつ、マジ女の趣味わりぃんだよ!!!」

「リヒト様の元カノ達と似てるよ?」

「やぶ蛇!!!!!!」

「ふふふ、クロム君、レスター!温泉に入りにいくよー!」

「ガキと一緒……?別だよな?」

「家族で!!入ろうね?」

「ルースの野郎!!あいつ首だ!!!!」

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