精霊のジレンマ

さんが

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オオザの崖のゴブリン

41.セイレーンの姉①

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「ソースイ、その石柱を壊せっ!」

ソースイが、ハンドアックスを振り上げる。

「グラビティ」

重量を増したソースイの一撃。

斧が当たった場所の石柱は部分的に砕けるが、全体が崩れるには程遠い。
斧刃が短い為に、威力は一点に集中しやすいが、大きく砕くには不向き。

「ソースイ、バスターソードを使え!」

俺はジェネラルが持っていた、剣を指し示す。

ソースイが、ヒーターシールドを地面に置くと、バスターソードを拾い上げ両手で構える。

「グラビティ」

両手で構えた全力での一撃。石柱に大きなヒビが入る。まだバスターソードは折れてはいない。
大きく振りかぶり、グラビティを載せた渾身の一撃。

パキーンという音とともにバスターソードは折れてしまうが、石柱も中程で折れ崩れ落ちる。

『アースウォール』

ムーアが、崩れ落ちる石柱からセイレーンを守る。

『あんた達、加減とか限度って言葉は知らないの?何考えてるのよ!』

「お姉ちゃんっ、大丈夫っ!」

ベルが急いで飛んでくる。捕らわれていた事と、崩れる石柱。どっちの心配なのかは・・・。

石柱に縛り付けられていた鎖からは解放されているが、身体が透けて見えるくらいの半透明。
人魚のような身体で、上半身は裸。背中には小さな羽根が付いている。この羽根で空を飛ぶ事は出来ないだろうが、成長し進化する前の名残かもしれない。

『存在が消えかけてるわ。死ぬことはないけど、このままだと何百年も存在は消えてしまうわね』

「カショウ、お姉ちゃんと早く契約してっ!」

「姉ちゃんの意思もあるだろ?」

『名付けすれば、後はセイレーンが決めるわよ』

「ああ、分かったよ」

俺が名付けすることが前提になっているが、俺の意思は無視されている。信用されているからこそなんだろうけど・・・。
それに、すぐ名前って言われてもな・・・。

俺は、うつ伏せに倒れてるセイレーンの前で膝を付き、声をかける。

「“リズ”だ、名前は“リズ”!」

セイレーンの頭が微かに動く。
指がピクリと動き腕を伸ばそうするが、手首から上が持ち上がった程度。地面に引き摺るようにして、腕を伸ばしてくる。
俺の事を探しているのか?そっと伸びてくる手を掴んだ瞬間!

セイレーンがしっかりと俺の手を握り、反対の腕を俺の首にまわして、抱きついてくる。
驚いた俺は地面に倒れてしまう。セイレーンは強く抱きついたまま。
存在が薄くなっているとはいえ、体の感触は伝わってくる。もちろんセイレーンの上半身は裸。

心なしか、俺の着ているチュニックが鎧のように堅くなっている気がする。その感触を伝えまいとするように。

「ありがとう。妹も助けてくれたのね」

そして、セイレーンは体を起こすと、俺に口づけする。

「今日から私の名はリズ。しばらくはあなたの中で眠る事になるけど、ヨロシクね」

そして、リズはブレスレットに吸い込まれるように消えた。

クオンがヒト型で現れる

“後で教育が必要ね”

『カショウは初だから、つけこまれそうね!』

「何デモ順番ガアル」

何も言わず、冷めた眼でこっちを見るソースイ。

ルーク、メーン、カンテが壊れた石柱の周りを調べるかのように飛んで、明滅する。
ナイスだ、良いタイミングだよ!

「あのさ、この石柱がセイレーンの魔力を吸っていたじゃないか?」

『名付けしたなら、リズでしょ。ちゃんと名前を呼んであげないと、嫌われちゃうわよ♪』

悪そうな笑みを浮かべるムーアを無視して、話を進める。

ソースイに破壊された事により、石柱の機能は停止している。もう魔力を吸収する事は無いが、残った柱の根元から僅かに魔力が溢れ出ている。

「この魔力はリズの魔力だよ」

『よく分かるわね、そんなの?』

「ムーアの魔力も分かるぞ。元は俺の魔力でも、ムーアが取り込むと少し質が変わるぞ」

『無属性自体がレアだから詳しくはないけど、ちょっと特殊なスキルかもね』

「石柱がリズの魔力を吸収していたのは間違いない。そして、その周りからゴブリンがポップアップする。確信はないけど、そんな気がする」

『魔力だまりから魔物がポップアップするとはいわれるけど、この石柱が強制的に魔力だまりをつくっているって事?』

「精霊の魔力を使ってな。精霊が姿を表さないんじゃなくて、居ないんじゃないか?」

『それだったら、もう1人のセイレーンも危ないんじゃない』

話を聞いていたベルが急にあわて始める。

「お姉ちゃん、危ないのっ」

「ベル、あまり時間はないかもしれない。東の湖まで急ぐ。戦闘は避けて、最短で目指すぞ!」
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