279 / 329
タイコの湖
279.侵入
しおりを挟む
「これが、イスイの街なのね」
あまり感情を見せないガーラでも、イスイの街並みを見て感嘆のため息を漏らす。
外壁の上に登ると、そこにレンガ造りの町並みが広がる。街を仕切る壁はさらに4枚もあり、奥に行くにつれて高さを増してゆく。そして、イスイの街の最大の特徴といえるのが、大河であるソウ川から引き込まれて造られた水路になる。水路は街の至る所に張り巡らされ、まるで水に浮かんだ街よのうにも見える。
目の前に見える大きな建物群は、全て大きな水路で囲まれ建物毎に船着き場がある。街の外壁に近い場所は、荷物を運ぶだけの水路でなく、防犯や外壁を越えてきた外敵を足止めする水堀の役目も果たすのだろう。
「ここが水の都イスイでさっ」
「ここは倉庫街なのか?」
「ええっ、タカオからの物流も減りオヤの街も混乱状態なので、ここが一番の人気のない場所になりやす」
「それで、一番の奥にあるのが領主の館になるのか?」
「そうでさっ。三層以降はあっし達が行けるような場所じゃないっすけど、一応領主の館があるらしいっすね」
「行ったことあるんだろ?」
「旦那、あそこを見て下せえっ!」
チェンはあからさまに話を逸らしてくるが、そこに見えてきたものは十分にその効果がある。
「もしかして、あれは飛行船?」
「そうですぜっ、驚きやしたでしょ!アシスの中でも魔法技術の粋を集めてつくられた飛行船でさっ」
アシスの魔法技術を集めれば飛行船くらいは造れるのかもしれないが、蟲人族は魔法に特化した種族ではなく、その技術を持っているとは思えない。それなのにチェンは自分の事であるように自慢してくる。
「飛行船は蟲人族が造ったのか?」
「まあ、それは色々でさっ。ただ運用出来るのは、蟲人族しかいないんすよっ!」
飛行船は、首都トーヤでエルフ族やドワーフ族、巨人族などの全ての技術を集めて造られたが、その一番の目的は、タカオやオヤの街の資源や物資を運ぶことにある。
そして飛行船を操れるのは、風を読む能力に長けて、巨大な船を操る人員を集めれるの蟲人族しかいない。ましてハーピーのような空を飛ぶ魔物が現れれば戦う必要がある。
「さあ、時間がありやせん。先を急ぎやしょう!」
チェンは周囲の様子を窺うと、案内役のトンボ族に合図を送る。その行動が、これが正規の認められたルートであるとは考え難い。
「最短距離といっても、このルートは大丈夫なのか?」
「大丈夫でさっ。昔から良く使うルートなんで、自信がありやす!」
「何の自信なんだ?迷わない自信じゃないだろ!」
「もちろん、見つからないに決まってるじゃないっすか!」
俺は名にも聞いていないし、それに名にも知らない!今は自分にそう言い聞かせなければ、この先に進む自信はない。
『そんなの無理よ。どの世界に壁を飛び越えて侵入することが問題にならない街があるの。いくらイスイの防衛隊であっても、こんなのが···』
「さあ、急ぎやしょう!時間がもったいないっすよ」
チェンはサムズアップすると、今度は逃げるように壁から飛び降りて姿を消してしまう。その動きは非常に慣れていて、何の迷いもなくどんどんと先へと進んでしまう。
『逃げられたわね』
「壁を飛び越えてしまえば、もう後戻りは出来ないんだろ」
『もうチェンが越えてしまったから遅いわよ。立派な共犯者でもあり、見つかれば殺されても文句は言えないでしょ』
それならば、もう見つからずに完璧に侵入してみせるしかない。諦めてチェンの後を追いかけるが、チェン達はハンドサインを送りながら、動きを止めることなく先へ先へと進んでゆく。その姿は全うな蟲人族であったとは思えない。
しばらく黙ってチェンの後を追いかけるが、最短距離と言った割には街の中心からは遠ざかり、次第に人の気配もない場所へと進んでゆく。そして船着き場が見えてくると、俺達を見つけた船頭達は手際よく船を出す準備を始める。
「旦那、ここからは船に乗りやすっ。しかし、なるべく水には触れないようにしてくだせっ!」
そのチェンの言葉にブロッサが反応する。
「カショウ、ここの水には気をつケテ。もう、毒で汚染されてルワ」
ブロッサに言われて水路を見ると、確かに水には普通では見れない臭いが感じ取れる。
『ブロッサ、これもヒガバナの毒なの影響?』
そしてブロッサは水路の水を掬うと口に含む。
あまり感情を見せないガーラでも、イスイの街並みを見て感嘆のため息を漏らす。
外壁の上に登ると、そこにレンガ造りの町並みが広がる。街を仕切る壁はさらに4枚もあり、奥に行くにつれて高さを増してゆく。そして、イスイの街の最大の特徴といえるのが、大河であるソウ川から引き込まれて造られた水路になる。水路は街の至る所に張り巡らされ、まるで水に浮かんだ街よのうにも見える。
目の前に見える大きな建物群は、全て大きな水路で囲まれ建物毎に船着き場がある。街の外壁に近い場所は、荷物を運ぶだけの水路でなく、防犯や外壁を越えてきた外敵を足止めする水堀の役目も果たすのだろう。
「ここが水の都イスイでさっ」
「ここは倉庫街なのか?」
「ええっ、タカオからの物流も減りオヤの街も混乱状態なので、ここが一番の人気のない場所になりやす」
「それで、一番の奥にあるのが領主の館になるのか?」
「そうでさっ。三層以降はあっし達が行けるような場所じゃないっすけど、一応領主の館があるらしいっすね」
「行ったことあるんだろ?」
「旦那、あそこを見て下せえっ!」
チェンはあからさまに話を逸らしてくるが、そこに見えてきたものは十分にその効果がある。
「もしかして、あれは飛行船?」
「そうですぜっ、驚きやしたでしょ!アシスの中でも魔法技術の粋を集めてつくられた飛行船でさっ」
アシスの魔法技術を集めれば飛行船くらいは造れるのかもしれないが、蟲人族は魔法に特化した種族ではなく、その技術を持っているとは思えない。それなのにチェンは自分の事であるように自慢してくる。
「飛行船は蟲人族が造ったのか?」
「まあ、それは色々でさっ。ただ運用出来るのは、蟲人族しかいないんすよっ!」
飛行船は、首都トーヤでエルフ族やドワーフ族、巨人族などの全ての技術を集めて造られたが、その一番の目的は、タカオやオヤの街の資源や物資を運ぶことにある。
そして飛行船を操れるのは、風を読む能力に長けて、巨大な船を操る人員を集めれるの蟲人族しかいない。ましてハーピーのような空を飛ぶ魔物が現れれば戦う必要がある。
「さあ、時間がありやせん。先を急ぎやしょう!」
チェンは周囲の様子を窺うと、案内役のトンボ族に合図を送る。その行動が、これが正規の認められたルートであるとは考え難い。
「最短距離といっても、このルートは大丈夫なのか?」
「大丈夫でさっ。昔から良く使うルートなんで、自信がありやす!」
「何の自信なんだ?迷わない自信じゃないだろ!」
「もちろん、見つからないに決まってるじゃないっすか!」
俺は名にも聞いていないし、それに名にも知らない!今は自分にそう言い聞かせなければ、この先に進む自信はない。
『そんなの無理よ。どの世界に壁を飛び越えて侵入することが問題にならない街があるの。いくらイスイの防衛隊であっても、こんなのが···』
「さあ、急ぎやしょう!時間がもったいないっすよ」
チェンはサムズアップすると、今度は逃げるように壁から飛び降りて姿を消してしまう。その動きは非常に慣れていて、何の迷いもなくどんどんと先へと進んでしまう。
『逃げられたわね』
「壁を飛び越えてしまえば、もう後戻りは出来ないんだろ」
『もうチェンが越えてしまったから遅いわよ。立派な共犯者でもあり、見つかれば殺されても文句は言えないでしょ』
それならば、もう見つからずに完璧に侵入してみせるしかない。諦めてチェンの後を追いかけるが、チェン達はハンドサインを送りながら、動きを止めることなく先へ先へと進んでゆく。その姿は全うな蟲人族であったとは思えない。
しばらく黙ってチェンの後を追いかけるが、最短距離と言った割には街の中心からは遠ざかり、次第に人の気配もない場所へと進んでゆく。そして船着き場が見えてくると、俺達を見つけた船頭達は手際よく船を出す準備を始める。
「旦那、ここからは船に乗りやすっ。しかし、なるべく水には触れないようにしてくだせっ!」
そのチェンの言葉にブロッサが反応する。
「カショウ、ここの水には気をつケテ。もう、毒で汚染されてルワ」
ブロッサに言われて水路を見ると、確かに水には普通では見れない臭いが感じ取れる。
『ブロッサ、これもヒガバナの毒なの影響?』
そしてブロッサは水路の水を掬うと口に含む。
0
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
世界⇔異世界 THERE AND BACK!!
西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。
友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。
しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。
「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」
これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。
週一、不定期投稿していきます。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。
ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~
スィグトーネ
ファンタジー
年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。
それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。
そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。
異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。
彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。
どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。
※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。
※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。
クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら
リヒト
ファンタジー
現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。
そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。
その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。
お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。
ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。
お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる