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タイコの湖
313.崩壊
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「さあ、行くワヨ!」
ブロッサの言葉で、ナルキが俺を障壁から引き剥がすべく後方へと蔦を張り巡らせると、ソースイは何時でも俺の腕を粉砕できるようにと金棒を構える。
「さあ、カショウ様!」
そして俺の心の準備をする時間はなく、作戦開始の合図を要求される。
「イッショ、行くぞ!」
そう言いながら、マジックソードのイメージを解くと、一瞬で魔力の塊へと変わる。イッショは魔力の塊を吸収し、障壁は魔力を嫌って吸収を拒んでいるが、障壁自体に魔力を吸収してしまう性質があるのか、完全に魔力吸収を拒絶することは出来ていない。
柄が消えたことで両手を自由に動かせる空間が出来、予定通り両腕を引き抜く為に障壁に足を掛けようとした時に、パキパキッと嫌な音が聞こえてくる。
障壁が崩れるかもしれないと思わせ、足を掛けることを一瞬だけ躊躇わせる。しかし、音が聞こえてくるのは障壁のひび割れた表面ではない。俺の手のある場所よりもさらに奥の、マジックソードあった空間から聞こえてくる崩壊の始まりの音。
「奥からか?」
「お主、何をしている早くしろ!」
イッショに言われて、壁に掛けた足に力を込める。ナルキの蔦や翼、ありとあらゆる手段で俺の腕引き抜く為に力を込められる。埋もれていた肘が出てくると、そこから抜けるスピードが加速する。しかし、それは腕が抜ける始めただけでなく、同時に障壁の奥からか崩壊が始まる。
ボオオオォォォォーーーンッ
腕を抜く為に加えた力と障壁が弾けた力が合わさり、俺は凄い勢いで弾き飛ばされてしまう。
そして弾けた障壁の無数の礫が、俺へと襲いかかってくる。ミュラーの金属盾が間に割って入るが、至近距離で放たれた礫に対しては、回避することも防ぐことも間に合わない。
吹き飛ばされながらも、迫ってくる障壁の礫が見える。ゆっくりとスローモーションで礫が迫ってくるのは、これこそが本当の走馬灯なのかと思える。そして、無意識のうちに俺の手が顔を隠すようにと動いている。
そこで手は無事だったという事と、ブレスレットも無傷で残っていることを認識する。見た目はボロボロの革紐にしか見えないが、触った感じは金属の感触がする不思議なブレスレット。そのボロボロの姿すら全く変えることなく、何事もなかったかのように手首に吸い付くように収まっている。
もしかして、このブレスレットには精霊の加護があり、俺を守ってくれている存在なのかもしれないと期待してしまう。
「チッ!」
その期待も虚しく、礫は何の抵抗も受けることなく俺の手に触れてしまう。そして礫は手や腕を貫通し、さらにこちらへと向かってくる。
不思議と礫がぶつかった衝撃も、痛みすらも感じない。しかし礫は、間違いなく手や腕を貫通し、無数の礫が降り注いでくる。そして、痛みは感じないが体の中に礫が入り込む感覚があり、それは想像を絶する痛みに感覚が麻痺しただけなのかもしれない。
それでも意識はハッキリし、思考は出来ている。部屋の中央にいたゴルゴンを通り過ぎても、俺が吹き飛ばされた勢いは衰えていない。
せっかく助けようとしたゴルゴンだったが、障壁の礫に巻き込まれ蛇達が消滅しているのも見える。助けようとした魔物が俺の巻き添えになってしまうのだから、複雑な気持ちでしかないが、力のある蛇達に頑張ってくれとしか言えない。
そこからは、視界を完全に塞いでしまうほどの、無数の障壁の礫が襲いかかってくる。ミュラーの盾も貫通しボロボロになってしまったのかもしれない。そして覚悟を決めた瞬間、スローモーションに感じていた時間が急激に加速し始める。
光の中に包まれたような感覚で、視覚も魔力探知も機能せず、ただ身を任せるしかない。そして、背中に衝撃が走ると、麻痺しているのかと思っていた痛みが襲いかかってくる。
痛みがあるとういう事は、まだ死んでいないという証明にはなるが、とても歓迎出来るとものではない。衝撃と痛みに耐えるために閉ざした目をゆっくりと開けると、もう光は消え暗く閉ざされた空間に戻っている。
「どうなっているんだ?」
『無事終わったみたいね』
「何が無事終わったって言うんだ?」
全身から感じる痛みに堪えながら、両腕を確認する。形は問題なし、指の数も揃っている。そして、握ったり開いたりを繰り返すが、しっかりと動いてくれるし痛みもない。
ブロッサの言葉で、ナルキが俺を障壁から引き剥がすべく後方へと蔦を張り巡らせると、ソースイは何時でも俺の腕を粉砕できるようにと金棒を構える。
「さあ、カショウ様!」
そして俺の心の準備をする時間はなく、作戦開始の合図を要求される。
「イッショ、行くぞ!」
そう言いながら、マジックソードのイメージを解くと、一瞬で魔力の塊へと変わる。イッショは魔力の塊を吸収し、障壁は魔力を嫌って吸収を拒んでいるが、障壁自体に魔力を吸収してしまう性質があるのか、完全に魔力吸収を拒絶することは出来ていない。
柄が消えたことで両手を自由に動かせる空間が出来、予定通り両腕を引き抜く為に障壁に足を掛けようとした時に、パキパキッと嫌な音が聞こえてくる。
障壁が崩れるかもしれないと思わせ、足を掛けることを一瞬だけ躊躇わせる。しかし、音が聞こえてくるのは障壁のひび割れた表面ではない。俺の手のある場所よりもさらに奥の、マジックソードあった空間から聞こえてくる崩壊の始まりの音。
「奥からか?」
「お主、何をしている早くしろ!」
イッショに言われて、壁に掛けた足に力を込める。ナルキの蔦や翼、ありとあらゆる手段で俺の腕引き抜く為に力を込められる。埋もれていた肘が出てくると、そこから抜けるスピードが加速する。しかし、それは腕が抜ける始めただけでなく、同時に障壁の奥からか崩壊が始まる。
ボオオオォォォォーーーンッ
腕を抜く為に加えた力と障壁が弾けた力が合わさり、俺は凄い勢いで弾き飛ばされてしまう。
そして弾けた障壁の無数の礫が、俺へと襲いかかってくる。ミュラーの金属盾が間に割って入るが、至近距離で放たれた礫に対しては、回避することも防ぐことも間に合わない。
吹き飛ばされながらも、迫ってくる障壁の礫が見える。ゆっくりとスローモーションで礫が迫ってくるのは、これこそが本当の走馬灯なのかと思える。そして、無意識のうちに俺の手が顔を隠すようにと動いている。
そこで手は無事だったという事と、ブレスレットも無傷で残っていることを認識する。見た目はボロボロの革紐にしか見えないが、触った感じは金属の感触がする不思議なブレスレット。そのボロボロの姿すら全く変えることなく、何事もなかったかのように手首に吸い付くように収まっている。
もしかして、このブレスレットには精霊の加護があり、俺を守ってくれている存在なのかもしれないと期待してしまう。
「チッ!」
その期待も虚しく、礫は何の抵抗も受けることなく俺の手に触れてしまう。そして礫は手や腕を貫通し、さらにこちらへと向かってくる。
不思議と礫がぶつかった衝撃も、痛みすらも感じない。しかし礫は、間違いなく手や腕を貫通し、無数の礫が降り注いでくる。そして、痛みは感じないが体の中に礫が入り込む感覚があり、それは想像を絶する痛みに感覚が麻痺しただけなのかもしれない。
それでも意識はハッキリし、思考は出来ている。部屋の中央にいたゴルゴンを通り過ぎても、俺が吹き飛ばされた勢いは衰えていない。
せっかく助けようとしたゴルゴンだったが、障壁の礫に巻き込まれ蛇達が消滅しているのも見える。助けようとした魔物が俺の巻き添えになってしまうのだから、複雑な気持ちでしかないが、力のある蛇達に頑張ってくれとしか言えない。
そこからは、視界を完全に塞いでしまうほどの、無数の障壁の礫が襲いかかってくる。ミュラーの盾も貫通しボロボロになってしまったのかもしれない。そして覚悟を決めた瞬間、スローモーションに感じていた時間が急激に加速し始める。
光の中に包まれたような感覚で、視覚も魔力探知も機能せず、ただ身を任せるしかない。そして、背中に衝撃が走ると、麻痺しているのかと思っていた痛みが襲いかかってくる。
痛みがあるとういう事は、まだ死んでいないという証明にはなるが、とても歓迎出来るとものではない。衝撃と痛みに耐えるために閉ざした目をゆっくりと開けると、もう光は消え暗く閉ざされた空間に戻っている。
「どうなっているんだ?」
『無事終わったみたいね』
「何が無事終わったって言うんだ?」
全身から感じる痛みに堪えながら、両腕を確認する。形は問題なし、指の数も揃っている。そして、握ったり開いたりを繰り返すが、しっかりと動いてくれるし痛みもない。
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