1 / 14
1. 殿下の秘密 - ①
しおりを挟む
「俺、殿下は女だと思うんだ」
「は?」
休憩用の控室にて昼食を食べた後、俺は内密な話をするために厳重に防音結界を張った。同僚のルイが俺の話に眉を顰める。
俺は、どうしてもこの秘密を誰かに言いたくて仕方なくて、相部屋で信頼関係があり、口が堅いルイに話すことにした。
「……どうしてそう思うんだ?」
「可愛いから」
ルイは軽く目を見開くと、はぁ、と小さなため息を吐いた。そして遠くの方に見えている王太子殿下に目を向ける。すぐに俺に視線を戻した。
「確かに殿下は中性的な外見をしていらっしゃるけど、遠征中に川に入ってるところも見てるじゃないか」
「でもいつも白いシャツ着たままだ。絶対服脱がないだろ」
「高貴な方は私たちの前では脱がないよ」
「可愛いし」
「可愛い可愛い言うんじゃない。不敬だよ」
「褒めてるのに?」
「王族の外見について我々が評価を下すべきじゃない。それに男がそんなこと言われても嬉しくない。可愛いって言われてお前は嬉しいの?」
「くそ真面目だな。俺は嬉しくないけど殿下は女だから……」
「チャールズ」
ルイは眉を寄せた。
「いい加減にしろ」
「だって……可愛すぎて好きになっちゃいそうなんだよ!」
俺が叫ぶと、ルイは俺に憐れむような視線を向けた。
*
俺は惚れっぽい、らしい。
自分ではそう思ってない。
好きな人ができて周りに報告すると、「知ってた」「またか」「惚れっぽいな」といつも同じ反応をされてしまう。
惚れっぽいんじゃなくて、素敵な子が周りにたくさんいるし、運命の出会いをしてしまったら仕方ないだろう。
好きになると俺は隠していることができないので、とにかく相手にアピールする。
まずはできる限り頻繁に会いに行って挨拶して名前と顔を覚えてもらう。以前は好きな子の前では自分の自慢話ばかりして上手くいかなかったけれど、ルイに色々とアドバイスをもらった結果、状況は改善された。好かれたかったら自分の話をするより相手の話を聞くのが良いと言われた。
騎士団で一番か二番かというほどモテるルイが言うなら間違いない。
俺はルイのアドバイスを実行し、相手の話をよく聞くようにした。そして相手が好きそうな話題を振り、いつも笑顔でいるように心掛けた。
その結果、箸にも棒にもかからない状態から、いい友人にまでは到達するようになった。しかしいい友人までだ。
俺が分かりやすく好意を伝えているというのに、仲良く話をするだけで終わるし、他の男へのプレゼント選びに付き合わされたことまである。
なんでだよ。
「今度は殿下か。娼館の女の子の方がまだ望みがあるな」
「娼館の女の子はみんなお前が好きじゃん!」
「……」
ルイは否定せずに笑った。ベージュの髪がさらっと揺れて、その様子が非常に様になっている。
この男は、女の子に邪な視線など向けたことありませんというような涼しい顔をしているが、殿下の近衛騎士で一番か二番かという頻度で娼館に通う。
俺も恋人も婚約者もいないので、溜まってむずむずする前にそれなりの頻度で通うが、皆俺の前でルイの話をしてくるので嫌になって足が遠のいている。
女の子からは、ルイは普段は優しいのに、挿入がいつもバックからで激しいのがたまらないとか、聞きたくねぇんだが、という同僚のシモ事情が耳に入ってくる。
勘弁してくれと思っている。
「いつもは応援してあげるけど、殿下相手じゃ応援できないな」
「なんであんなに可愛いんだ。職場に邪な気持ちを持ち込んでしまう」
「いいんじゃないか?」
ルイは一瞬だけ殿下に視線を投げた。
「本人をじろじろ見たり、触ったりしなきゃ、好きでいる分には迷惑かけてるわけじゃないよ。相手の幸せを考えて行動するって考えれば普段の仕事とやることは変わりないし、少し個人的な好意が混ざったくらいならあの方はきっと受け止めてくれる。ただし成就は期待しないことだな」
俺も殿下に目を向けた。
殿下は文官と書類仕事のやりとりをしているが、俺が見ていることに気付くと、湖のような明るい青い瞳を細めて微笑んでくれた。
俺とルイは立ち上がって礼をした。殿下は楽しそうに笑って、ジェスチャーで着席を促した。
やっぱり可愛すぎる。
ルイがふっと笑った。
「チャールズは本当に面食いだね」
「人は自分にないものを求めるものなんだ」
「お前もそれなりな顔してるけどね。キリッとしてて男らしいって、顔は意外と人気あるよ」
“顔は”も“意外と”も余計ではないだろうか。慰めるならもうちょっとちゃんと慰めて欲しかった。
ルイは俺の顔をじっと見つめた。りんごのような色をした、明るいグリーンの瞳が俺に向いている。
輝かしい顔をしている。
「お前に言われても嫌味だ。俺が好きになった子、みんなお前のこと好きじゃん」
ルイは否定せずに笑った。
「は?」
休憩用の控室にて昼食を食べた後、俺は内密な話をするために厳重に防音結界を張った。同僚のルイが俺の話に眉を顰める。
俺は、どうしてもこの秘密を誰かに言いたくて仕方なくて、相部屋で信頼関係があり、口が堅いルイに話すことにした。
「……どうしてそう思うんだ?」
「可愛いから」
ルイは軽く目を見開くと、はぁ、と小さなため息を吐いた。そして遠くの方に見えている王太子殿下に目を向ける。すぐに俺に視線を戻した。
「確かに殿下は中性的な外見をしていらっしゃるけど、遠征中に川に入ってるところも見てるじゃないか」
「でもいつも白いシャツ着たままだ。絶対服脱がないだろ」
「高貴な方は私たちの前では脱がないよ」
「可愛いし」
「可愛い可愛い言うんじゃない。不敬だよ」
「褒めてるのに?」
「王族の外見について我々が評価を下すべきじゃない。それに男がそんなこと言われても嬉しくない。可愛いって言われてお前は嬉しいの?」
「くそ真面目だな。俺は嬉しくないけど殿下は女だから……」
「チャールズ」
ルイは眉を寄せた。
「いい加減にしろ」
「だって……可愛すぎて好きになっちゃいそうなんだよ!」
俺が叫ぶと、ルイは俺に憐れむような視線を向けた。
*
俺は惚れっぽい、らしい。
自分ではそう思ってない。
好きな人ができて周りに報告すると、「知ってた」「またか」「惚れっぽいな」といつも同じ反応をされてしまう。
惚れっぽいんじゃなくて、素敵な子が周りにたくさんいるし、運命の出会いをしてしまったら仕方ないだろう。
好きになると俺は隠していることができないので、とにかく相手にアピールする。
まずはできる限り頻繁に会いに行って挨拶して名前と顔を覚えてもらう。以前は好きな子の前では自分の自慢話ばかりして上手くいかなかったけれど、ルイに色々とアドバイスをもらった結果、状況は改善された。好かれたかったら自分の話をするより相手の話を聞くのが良いと言われた。
騎士団で一番か二番かというほどモテるルイが言うなら間違いない。
俺はルイのアドバイスを実行し、相手の話をよく聞くようにした。そして相手が好きそうな話題を振り、いつも笑顔でいるように心掛けた。
その結果、箸にも棒にもかからない状態から、いい友人にまでは到達するようになった。しかしいい友人までだ。
俺が分かりやすく好意を伝えているというのに、仲良く話をするだけで終わるし、他の男へのプレゼント選びに付き合わされたことまである。
なんでだよ。
「今度は殿下か。娼館の女の子の方がまだ望みがあるな」
「娼館の女の子はみんなお前が好きじゃん!」
「……」
ルイは否定せずに笑った。ベージュの髪がさらっと揺れて、その様子が非常に様になっている。
この男は、女の子に邪な視線など向けたことありませんというような涼しい顔をしているが、殿下の近衛騎士で一番か二番かという頻度で娼館に通う。
俺も恋人も婚約者もいないので、溜まってむずむずする前にそれなりの頻度で通うが、皆俺の前でルイの話をしてくるので嫌になって足が遠のいている。
女の子からは、ルイは普段は優しいのに、挿入がいつもバックからで激しいのがたまらないとか、聞きたくねぇんだが、という同僚のシモ事情が耳に入ってくる。
勘弁してくれと思っている。
「いつもは応援してあげるけど、殿下相手じゃ応援できないな」
「なんであんなに可愛いんだ。職場に邪な気持ちを持ち込んでしまう」
「いいんじゃないか?」
ルイは一瞬だけ殿下に視線を投げた。
「本人をじろじろ見たり、触ったりしなきゃ、好きでいる分には迷惑かけてるわけじゃないよ。相手の幸せを考えて行動するって考えれば普段の仕事とやることは変わりないし、少し個人的な好意が混ざったくらいならあの方はきっと受け止めてくれる。ただし成就は期待しないことだな」
俺も殿下に目を向けた。
殿下は文官と書類仕事のやりとりをしているが、俺が見ていることに気付くと、湖のような明るい青い瞳を細めて微笑んでくれた。
俺とルイは立ち上がって礼をした。殿下は楽しそうに笑って、ジェスチャーで着席を促した。
やっぱり可愛すぎる。
ルイがふっと笑った。
「チャールズは本当に面食いだね」
「人は自分にないものを求めるものなんだ」
「お前もそれなりな顔してるけどね。キリッとしてて男らしいって、顔は意外と人気あるよ」
“顔は”も“意外と”も余計ではないだろうか。慰めるならもうちょっとちゃんと慰めて欲しかった。
ルイは俺の顔をじっと見つめた。りんごのような色をした、明るいグリーンの瞳が俺に向いている。
輝かしい顔をしている。
「お前に言われても嫌味だ。俺が好きになった子、みんなお前のこと好きじゃん」
ルイは否定せずに笑った。
40
あなたにおすすめの小説
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない
千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。
失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。
ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。
公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。
※毎午前中に数話更新します。
ミリしらな乙女ゲームに転生しました。
猫宮乾
恋愛
父親の葬儀後、幼い弟の手を握っている時に甦った過去の記憶。主人公の私(リリア)は、ミリしらな乙女ゲームに転生してしまった事を悟った。未来の宰相補佐官×王族の裏の護衛の侯爵令嬢で固定のお話となります。他サイトにも掲載
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【本編完結】美女と魔獣〜筋肉大好き令嬢がマッチョ騎士と婚約? ついでに国も救ってみます〜
松浦どれみ
恋愛
【読んで笑って! 詰め込みまくりのラブコメディ!】
(ああ、なんて素敵なのかしら! まさかリアム様があんなに逞しくなっているだなんて、反則だわ! そりゃ触るわよ。モロ好みなんだから!)『本編より抜粋』
※カクヨムでも公開中ですが、若干お直しして移植しています!
【あらすじ】
架空の国、ジュエリトス王国。
人々は大なり小なり魔力を持つものが多く、魔法が身近な存在だった。
国内の辺境に領地を持つ伯爵家令嬢のオリビアはカフェの経営などで手腕を発揮していた。
そして、貴族の令息令嬢の大規模お見合い会場となっている「貴族学院」入学を二ヶ月後に控えていたある日、彼女の元に公爵家の次男リアムとの婚約話が舞い込む。
数年ぶりに再会したリアムは、王子様系イケメンとして令嬢たちに大人気だった頃とは別人で、オリビア好みの筋肉ムキムキのゴリマッチョになっていた!
仮の婚約者としてスタートしたオリビアとリアム。
さまざまなトラブルを乗り越えて、ふたりは正式な婚約を目指す!
まさかの国にもトラブル発生!? だったらついでに救います!
恋愛偏差値底辺の変態令嬢と初恋拗らせマッチョ騎士のジョブ&ラブストーリー!(コメディありあり)
応援よろしくお願いします😊
2023.8.28
カテゴリー迷子になりファンタジーから恋愛に変更しました。
本作は恋愛をメインとした異世界ファンタジーです✨
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる