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2. 名案と詐欺 - ①
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“本当は女”だったのは、殿下ではなく俺のルームメイトの方だった。
俺はルイと宿舎に戻ってきた。見知った部屋に、見知ったルームメイト。ルイは自分の部屋にいると言うのに気まずそうな顔をしている。
「とりあえず座るか」
混乱し過ぎると人は冷静になるらしい。二人分の飲み物を用意して、椅子に腰掛ける。ルイは自分のベッドに座った。
ルイはいつもと変わらない、涼しげな顔に見えるが緊張が滲んでいるようにも見える。
「ルイ」
「何だよ」
「殿下は、ルイに残って欲しいっておっしゃってるよ。俺もルイに残って欲しい」
ルイは顔を上げて俺を見た。一瞬顔を歪め、盛大にため息を吐く。
「ありがとう」
ルイは部屋全体に防音の結界を張った。
「さっきの話だけど、本当だよ。私は女なんだ。女は近衛騎士にはなれない。法で決まってるし、入団時の個人情報の詐称は本来は死罪だ。殿下に知られた以上、私はここに残れない」
「でも殿下は性別なんてどっちでも良いって言ってた!」
「それが問題だよ。私の性別を知ってそれを許容している状況下に殿下を置くわけにはいかない。誰かにバレても、最悪外に漏れる前にそいつを殺してでも誤魔化そうと思ってたけど……まさかそれが殿下本人になるとはね」
計画している手段が過激すぎるし、考え方が潔癖すぎる。ルイはそういうところがあるけれど、その性格が遺憾無く発揮されていた。
ルイはふっと笑った。
「身勝手だろ。私は殿下にお仕えしたくて法を破る人間だから、こんな倫理観の欠如した臣下はそばに置かない方がいいんだ。潮時だよ。お前も残って欲しいって言ってくれてありがとう。嬉しかった」
ルイは立ち上がって、荷物を纏めようとする。
「ちょっと待てって!」
「何?」
「性別の詐称が問題なら、男装やめて王宮に残るのは?女だって働いてるだろ。メイドとか侍女とか……」
そこまで言いかけて、俺は口をつぐんだ。
メイドは管轄が殿下と関係ないからどこの部屋につけられるかわからないし、お茶を入れたり清掃をしたり、人の身の回りの世話や部屋のメンテナンスをするだけ。ルイの能力では役不足だ。
侍女はお妃様や王女殿下付きになる。他の部署も殿下の顔を見る機会はない。
一番可能性があるのは文官だけれど、殿下と直接話せるレベルの役職は女性の前例がなく、役職の空きもない。
俺は殿下にルイを引き止めるようにお願いされている。それに、何より俺は、ルイがこのままここを去るのは嫌だ。何か手段はないのだろうかと頭を巡らせてみるが、すぐには思いつかない。こういう時に解決方法を考えるのは、本当は俺よりルイの方が得意なのだ。
女性として殿下の近くにいるには、王太子妃になるか、それか……。
俺は一つ思いついたことがあった。
「ルイ、俺と結婚しよう!」
「は?」
「殿下の秘書官だよ!既婚女性か、未亡人ならなれるだろ?ほぼ前例ないけど、一応法で決まってる。殿下に任命権があって、女性が就ける要職だ」
この法は大昔に既婚女性の愛人を囲いたかった王族が作った法だった気がするが、使えるものは使うべきだ。
ルイも近衛騎士になる時の試験で、王族に関連する国の法律を勉強したはずだ。
思い当たることがあったのか、ルイはすぐには否定しなかった。
「でも……」
「秘書官だったら殿下の言うことなんでも聞く役職だから今とほぼ変わらないし、ついでに近くにいれば護衛もできるしちょうどいいだろ!俺と結婚すれば一緒に暮らすのも今まで通りだし、全部解決だ!」
思わぬところに解決策があって大喜びしてしまった。ルイの手を握ってぶんぶん振り回すと、ルイは困惑した顔をして手を振り払おうとしてきた。
「いや、何も解決じゃ……」
「今すぐ結婚して殿下に秘書官に任命してもらおう!」
俺は宿舎を飛び出して、先程出たばかりの殿下の執務室に向かった。後ろからルイの呼び声が聞こえたけど無視しておいた。
俺はルイと宿舎に戻ってきた。見知った部屋に、見知ったルームメイト。ルイは自分の部屋にいると言うのに気まずそうな顔をしている。
「とりあえず座るか」
混乱し過ぎると人は冷静になるらしい。二人分の飲み物を用意して、椅子に腰掛ける。ルイは自分のベッドに座った。
ルイはいつもと変わらない、涼しげな顔に見えるが緊張が滲んでいるようにも見える。
「ルイ」
「何だよ」
「殿下は、ルイに残って欲しいっておっしゃってるよ。俺もルイに残って欲しい」
ルイは顔を上げて俺を見た。一瞬顔を歪め、盛大にため息を吐く。
「ありがとう」
ルイは部屋全体に防音の結界を張った。
「さっきの話だけど、本当だよ。私は女なんだ。女は近衛騎士にはなれない。法で決まってるし、入団時の個人情報の詐称は本来は死罪だ。殿下に知られた以上、私はここに残れない」
「でも殿下は性別なんてどっちでも良いって言ってた!」
「それが問題だよ。私の性別を知ってそれを許容している状況下に殿下を置くわけにはいかない。誰かにバレても、最悪外に漏れる前にそいつを殺してでも誤魔化そうと思ってたけど……まさかそれが殿下本人になるとはね」
計画している手段が過激すぎるし、考え方が潔癖すぎる。ルイはそういうところがあるけれど、その性格が遺憾無く発揮されていた。
ルイはふっと笑った。
「身勝手だろ。私は殿下にお仕えしたくて法を破る人間だから、こんな倫理観の欠如した臣下はそばに置かない方がいいんだ。潮時だよ。お前も残って欲しいって言ってくれてありがとう。嬉しかった」
ルイは立ち上がって、荷物を纏めようとする。
「ちょっと待てって!」
「何?」
「性別の詐称が問題なら、男装やめて王宮に残るのは?女だって働いてるだろ。メイドとか侍女とか……」
そこまで言いかけて、俺は口をつぐんだ。
メイドは管轄が殿下と関係ないからどこの部屋につけられるかわからないし、お茶を入れたり清掃をしたり、人の身の回りの世話や部屋のメンテナンスをするだけ。ルイの能力では役不足だ。
侍女はお妃様や王女殿下付きになる。他の部署も殿下の顔を見る機会はない。
一番可能性があるのは文官だけれど、殿下と直接話せるレベルの役職は女性の前例がなく、役職の空きもない。
俺は殿下にルイを引き止めるようにお願いされている。それに、何より俺は、ルイがこのままここを去るのは嫌だ。何か手段はないのだろうかと頭を巡らせてみるが、すぐには思いつかない。こういう時に解決方法を考えるのは、本当は俺よりルイの方が得意なのだ。
女性として殿下の近くにいるには、王太子妃になるか、それか……。
俺は一つ思いついたことがあった。
「ルイ、俺と結婚しよう!」
「は?」
「殿下の秘書官だよ!既婚女性か、未亡人ならなれるだろ?ほぼ前例ないけど、一応法で決まってる。殿下に任命権があって、女性が就ける要職だ」
この法は大昔に既婚女性の愛人を囲いたかった王族が作った法だった気がするが、使えるものは使うべきだ。
ルイも近衛騎士になる時の試験で、王族に関連する国の法律を勉強したはずだ。
思い当たることがあったのか、ルイはすぐには否定しなかった。
「でも……」
「秘書官だったら殿下の言うことなんでも聞く役職だから今とほぼ変わらないし、ついでに近くにいれば護衛もできるしちょうどいいだろ!俺と結婚すれば一緒に暮らすのも今まで通りだし、全部解決だ!」
思わぬところに解決策があって大喜びしてしまった。ルイの手を握ってぶんぶん振り回すと、ルイは困惑した顔をして手を振り払おうとしてきた。
「いや、何も解決じゃ……」
「今すぐ結婚して殿下に秘書官に任命してもらおう!」
俺は宿舎を飛び出して、先程出たばかりの殿下の執務室に向かった。後ろからルイの呼び声が聞こえたけど無視しておいた。
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