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第一章 運命の出会い
四
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桜並木が散り終わりそうで、葉に申し訳程度に花弁を残している。まだ、四月半ばだというのに入学式を終えると初夏が到来したように、汗をかきそうなほどの日が差し込んでいる。すでに、恒温動物の性質上熱を外に逃がそうと半袖姿で出歩いている姿がちらほらとある。
拓海も数日前までは薄手のセーターを着ていたが、流石に暑すぎたため、薄手の長袖の白い服にハーフパンツを履き、黒いキャップを被っている。それでも、服の中は熱気が籠もっている。
「拓海先輩! おはようございます!」
そんななか、正門で秀也が汗一つ流さず、白いシャツを腕捲くりして、夏物のグレーのスラックスの教授風な出で立ちで、拓海を出迎えた。荷物を持っていない事から、教室に置いて拓海が来るのを正門で待っていた事が伺える。
「流石に今日は暑すぎて驚きましたね」シルバーフレームを煌めかせながら、世間話をし始めた。
拓海は一人で話し続けている秀也を見て、どうして自分の名前を知ってるんだ? いつから外で待っていたんだ? そんな疑問が頭の中に浮かび、秀也の話しを聞いていなかった。
「それで、先輩が四年生だと聞いて、あと二年間しか一緒にいられないと知ったので、明日の休みにどこか遊びにいきませんか?」
秀也は拓海と話せるだけで楽しそうに笑顔を浮かべている。拓海の方は数時間前までアルバイト先で呑んでいたお酒が抜けきらず、適当に返事を返していた。もちろん、先程の秀也の誘いにも返事をしてしまった。
秀也が「それじゃあ、友達登録してください」と言ってスマホを差し出した時にやっと、拓海は話しを聞いていなかった事を深く後悔した。
流石にこの状況で断るのも可哀想な気持ちになり、一度遊ぶくらいなら良いか、それで脈がないと分かれば離れていくだろうと思い、連絡先を交換した。
しかし、ただでさえ奨学金とアルバイトの給料でやりくりをして医大に通っている拓海は、余計に絡まられる事があると困るので条件を付けた。
「深夜帯にメッセージを送ってきても返信はしない。演習が入ったら午後は返信出来ない。あと、……むやみやたらと連絡してこないで。あ! 電話も駄目」
拓海はこれくらい言っておけば、この時点で少しは諦めるだろうと思い、秀也の顔を見るとそこには自分が想像していた表情とは正反対に宝物を手に入れたと子供の様に喜んでいた。
拓海はその顔を見て、最低な条件付きで不満を顔に浮かべても、何も言わないと心に決めていたのに、拍子抜けしてしまった。
「そんな嬉しいか?」
そう言うと、秀也は首を縦に機械のように上下させた。
本当に、この男は可愛いところしかないな。
拓海は秀也が入学式に告白してきた時の緊張気味な姿と、恰幅のある身体で子供のように小さい事で一喜一憂する姿を見てから、少しずつ【運命】に絆されている事に気づいていない。
拓海も数日前までは薄手のセーターを着ていたが、流石に暑すぎたため、薄手の長袖の白い服にハーフパンツを履き、黒いキャップを被っている。それでも、服の中は熱気が籠もっている。
「拓海先輩! おはようございます!」
そんななか、正門で秀也が汗一つ流さず、白いシャツを腕捲くりして、夏物のグレーのスラックスの教授風な出で立ちで、拓海を出迎えた。荷物を持っていない事から、教室に置いて拓海が来るのを正門で待っていた事が伺える。
「流石に今日は暑すぎて驚きましたね」シルバーフレームを煌めかせながら、世間話をし始めた。
拓海は一人で話し続けている秀也を見て、どうして自分の名前を知ってるんだ? いつから外で待っていたんだ? そんな疑問が頭の中に浮かび、秀也の話しを聞いていなかった。
「それで、先輩が四年生だと聞いて、あと二年間しか一緒にいられないと知ったので、明日の休みにどこか遊びにいきませんか?」
秀也は拓海と話せるだけで楽しそうに笑顔を浮かべている。拓海の方は数時間前までアルバイト先で呑んでいたお酒が抜けきらず、適当に返事を返していた。もちろん、先程の秀也の誘いにも返事をしてしまった。
秀也が「それじゃあ、友達登録してください」と言ってスマホを差し出した時にやっと、拓海は話しを聞いていなかった事を深く後悔した。
流石にこの状況で断るのも可哀想な気持ちになり、一度遊ぶくらいなら良いか、それで脈がないと分かれば離れていくだろうと思い、連絡先を交換した。
しかし、ただでさえ奨学金とアルバイトの給料でやりくりをして医大に通っている拓海は、余計に絡まられる事があると困るので条件を付けた。
「深夜帯にメッセージを送ってきても返信はしない。演習が入ったら午後は返信出来ない。あと、……むやみやたらと連絡してこないで。あ! 電話も駄目」
拓海はこれくらい言っておけば、この時点で少しは諦めるだろうと思い、秀也の顔を見るとそこには自分が想像していた表情とは正反対に宝物を手に入れたと子供の様に喜んでいた。
拓海はその顔を見て、最低な条件付きで不満を顔に浮かべても、何も言わないと心に決めていたのに、拍子抜けしてしまった。
「そんな嬉しいか?」
そう言うと、秀也は首を縦に機械のように上下させた。
本当に、この男は可愛いところしかないな。
拓海は秀也が入学式に告白してきた時の緊張気味な姿と、恰幅のある身体で子供のように小さい事で一喜一憂する姿を見てから、少しずつ【運命】に絆されている事に気づいていない。
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