【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり

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第ニ章 運命の番

十三

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 低予算で見つけた賃貸のアパートの二階。大学からは近く、駅からは遠い住宅地の中にある。
 二人はすでに、拓海の部屋のベッドの上にいた。ベッドの下には、秀也の黒いコートと拓海のカーディガンが脱ぎ捨てられていた。
 空は夕暮れ。カーテンの隙間から茜色の日が仰向けになっている拓海の顔にかかり、拓海の顔は恥ずかしさなのか、日差しのせいなのか、分からないほど赤くなっている。その肌に触れる秀也のスラリとした長い指。拓海はくすぐったそうに目を細める。日差しによって睫毛の影が長く濃くなった。

 僕の拓海先輩。嬉しい。やっと触れられる。
 長かった。二年……ようやく手に入れた、僕の愛しい人。

 秀也は二年の時間をかけてようやく彼の【運命】を叶えた。
 自分の普段の表情も彼への接し方も、社交場での彼の姿を知っている人が見たら、声を揃えて言うだろう。
 ――「あれは誰だ?」と。
 それほど、この二年間、拓海が自分という人間を受け入れるようにと、彼の割れた心の隙間に金継ぎを施すように彼の"優しさ"と"甘い"性格を利用して秀也は彼の心を修復していった。
 秀也は自分が彼の【運命の番】になれずとも、彼の"唯一"になれる日が来ると確信していた。なぜなら、徐々に拓海が自分を受け入れている事に気付いてたからだ。
 だから、秀也は一度も拓海から距離を置いたりしなかった。拓海が南を【運命の番】と認めるまでずっと……。
 後は、彼の人生のなかで大きな問題を起こすだけだと、誕生日を迎えるまで機会を窺っていた。
 あの日、バーに行く前に仕事があった南を遅くに呼び出した。拓海が南を見て【運命の番】だと認識するためにだ。
 秀也の計画は成功だった。拓海に手を振り払われた時は、悲しさが込み上げてきたが、南にも近づかれるのを恐れていた姿を見て、安堵した。
 これで、今の彼は【運命】を拒否していない事が分かった。それは、自分に【運命】を感じてくれている事の証拠ともなった。
 秀也の酷い妄想だと、思うかもしれないが、南が四年間も隣にいてきたのにも関わらず拓海は彼を【運命の番】と認識することは無かった。しかし、秀也が現れてから、拓海は【運命】に少なからず動かされていたのだと秀也は理解したのだ。
 さらに、秀也は路地裏で鉢合わせのタイミングに合わせ、あの場所に悪質で有名な記者を呼び寄せていた。誰も疑わないだろう。たまたま居合わせただけだと、記者が言えば、誰が自分の地位を脅かす記事を書かせるか、と人々は思うだろう。
 結果、理事長も、父親でさえも秀也の思惑に気付かなかった。全て秀也の思い通りに事は進んだ。

 拓海先輩が僕を、【運命】を受け入れてくれた。

「拓海先輩……好きです、愛してます」
 秀也はそう言って、拓海のシャツを捲り、彼のほんのり赤くなった肌に長い指を滑らせると、彼の体温を感じために掌で薄い腹を撫でる。拓海の身体は外の寒さなどとうに忘れたように熱を帯びている。
「恥ずかしい事を言わないで、はやく……」
 拓海は赤い目元の潤んだ瞳を隠すように、顔を背けて言った。秀也は彼の様子に頬を赤く染めながら、彼の赤くなった温かい肌に吸いついた。
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