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第三章 愛した人
六
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***
拓海先輩、元気なかったな……、それに恐らくさっきのは避けられた。
秀也は拓海の顔色の悪さを心配しつつ、彼のそっけない態度を思い出し、心臓がドキンと跳ねた。
やっぱり、連絡を取らなかったのは良くなかった、か。まさか、愛想を尽かされた?
そう考えていると、秀也のスマホが振動する。
画面には〈父さん〉と書かれている。秀也はため息をついて電話に出る。
落ち着け、これでやっと終わるんだ。
「もしもし」と機嫌をうかがうような声色で電話に出る。
「秀也、驚かないで聞いてくれ、その、彼女との婚約の話なんだが……」
端末から発せられる父親の自分を心配する声に、秀也は少しの間を空けてから、掠れた声で返事をする。まるで、予期していなかった事の様に秀也は小さな演技をする。
「破棄してくれと相手側から言われてな」
その言葉に「……そうですか、」と意識的に声を震わせた。
父親の慰めの言葉を、空を見上げながら聞く。すでに去っていった拓海の姿を脳裏に浮かべて。
拓海先輩の声が聞きたい。けれど、今日は振られてしまった。もう少し、気をつけるべきだった。
「――ということだ、あまり気にするなよ」
半分以上話しを聞いていない電話が終わると、やっと終わったかと意識を元に戻す。
拓海先輩にも、気付かれないように彼女と計画して親同士が決めたこの婚約を破棄するように仕向けていた。
やっと、先輩に触れられると思ったのに。
秀也は、自分がしてしまった事だから仕方ない、と拓海に謝罪する内容を考えながら、次の講義に向かう。
「やあ、池上さん」
講義室に入ろうとした時、後ろからこの世で一番憎い男に声を掛けられた。
「……南さん」
にやりと笑いながら「少しいいか?」と南は言った。校内でスーツ姿の彼を見るのは珍しいからか、南という男を知っている他の学部生達が二人の事をチラチラと好奇の目で見ている。
「今から授業なんで」
秀也は無愛想にそう言うと、南の返事を待たずに講義室に入った。
席についてから、南に声をかけられた講義室の扉を見る。
まだそこにいた南は秀也の視線に気付くと、手を振った。無視をしているととチャイムがなり、講義が始まった。
「話がある」
講義が終わると南は足早に自分のところに来てそう言った。
「僕に何の用ですか?」
「……その反応、まさか拓海から聞いてないのか?」
「拓海先輩!? 何の話ですか!?」
秀也は勢いよく椅子から立ち上がると、南に詰め寄った。
「いや、ええと、実は――」
拓海先輩、元気なかったな……、それに恐らくさっきのは避けられた。
秀也は拓海の顔色の悪さを心配しつつ、彼のそっけない態度を思い出し、心臓がドキンと跳ねた。
やっぱり、連絡を取らなかったのは良くなかった、か。まさか、愛想を尽かされた?
そう考えていると、秀也のスマホが振動する。
画面には〈父さん〉と書かれている。秀也はため息をついて電話に出る。
落ち着け、これでやっと終わるんだ。
「もしもし」と機嫌をうかがうような声色で電話に出る。
「秀也、驚かないで聞いてくれ、その、彼女との婚約の話なんだが……」
端末から発せられる父親の自分を心配する声に、秀也は少しの間を空けてから、掠れた声で返事をする。まるで、予期していなかった事の様に秀也は小さな演技をする。
「破棄してくれと相手側から言われてな」
その言葉に「……そうですか、」と意識的に声を震わせた。
父親の慰めの言葉を、空を見上げながら聞く。すでに去っていった拓海の姿を脳裏に浮かべて。
拓海先輩の声が聞きたい。けれど、今日は振られてしまった。もう少し、気をつけるべきだった。
「――ということだ、あまり気にするなよ」
半分以上話しを聞いていない電話が終わると、やっと終わったかと意識を元に戻す。
拓海先輩にも、気付かれないように彼女と計画して親同士が決めたこの婚約を破棄するように仕向けていた。
やっと、先輩に触れられると思ったのに。
秀也は、自分がしてしまった事だから仕方ない、と拓海に謝罪する内容を考えながら、次の講義に向かう。
「やあ、池上さん」
講義室に入ろうとした時、後ろからこの世で一番憎い男に声を掛けられた。
「……南さん」
にやりと笑いながら「少しいいか?」と南は言った。校内でスーツ姿の彼を見るのは珍しいからか、南という男を知っている他の学部生達が二人の事をチラチラと好奇の目で見ている。
「今から授業なんで」
秀也は無愛想にそう言うと、南の返事を待たずに講義室に入った。
席についてから、南に声をかけられた講義室の扉を見る。
まだそこにいた南は秀也の視線に気付くと、手を振った。無視をしているととチャイムがなり、講義が始まった。
「話がある」
講義が終わると南は足早に自分のところに来てそう言った。
「僕に何の用ですか?」
「……その反応、まさか拓海から聞いてないのか?」
「拓海先輩!? 何の話ですか!?」
秀也は勢いよく椅子から立ち上がると、南に詰め寄った。
「いや、ええと、実は――」
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