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第四章 最愛の番
十二
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一か月後、昼間南は自宅に戻ると人の気配がないことに違和感を覚えた。
仕事でいないだけだよな?
部屋のなかに入ると、その違和感は確証に変わった。
拓海が家に住んでから増えたものが減り、一人で生活していた時の物の多さに戻っていた。
南は焦りと不安に襲われ、部屋のなかをひっくり返すように拓海の私物を探したが出てこなかった。
暫くして落ち着いてから、改めて部屋を見渡した。
いつも共にしていた食卓の上に手紙が二枚置かれていた。
目に入ってすぐ手に取った目を通した。
そこには、これまでの南への感謝と南と病院にも迷惑をかけた事への謝罪、今後は自分を探さないでくれと涙の痕を残して書き留められていた。
「くそッ」
南は手紙を投げ捨て靴の踵を踏んで外に出た。
そして、真っ先に向かったのは以前拓海がアルバイトをしていたママのお店だった。
拓海の自宅に向かわなかったのは、手紙の中には南が持ってる拓海の自宅の鍵を処分してほしいと書いてあったからだ。
あの人なら、拓海の居場所を知ってるかもしれない。
しかし目の前に広がる状況に、南は絶望した。
ママのお店にはすでに別の名前が書かれた看板が置かれていたからだ。
南が店の前でうろちょろしていると、買い物袋を両手にぶら下げる見た事もない男に声を掛けられた。
「誰だ? まだ開店前だよ」
「ここの店主は?」
「あ? 俺だよといっても今日からだけどな」
その言葉を聞いて南は血の気が引いた。
「どいてくれ。開店までまだ時間があるからどっかで暇を潰しててくれ」
男はポケットから鍵を取り出し、玄関を開ける。
扉が閉まるのを思わず防ぐ。
「あの! ここの前の店主が今どこにいるか分かりますか」
「あのな、そんなこと知るわけないだろう。はあ、俺の店に用がないならどっか行ってくれ」
そりゃそうだよな。邪魔するのも悪い。
南は「すみません」と謝った。
南が次に向かったのは病院だ。
病院に関しても謝罪をしていたからすでにやめてしまったのだろう。俺に連絡が無かったということは院長なら何か知ってるかもしれない。
病院に着くと拓海がいないのが当たり前の空気がそこにはあった。
今日まで休みのはずの南がいることに驚いた様子で看護師は声を掛けた。
「あれ、五十嵐先生? お休みじゃ?」
「ちょっと用があって。院長の診察って区切りつきそうですか?」
看護師は受付で院長の今の診察待ちを確認してあと、二人だと南に教えた。
数十分待って南は裏から院長の診察室にはいる。
「新条君の事だよね。ごめんね彼に知らせないで欲しいと言われたんだ」
「俺がいない間に、拓海に何があったんですか?」
「五十嵐君。君は新条君をウチで雇ってほしいと言って彼に尽力してあげていたね。その後新条君が面接に来てくれて、その時彼に言われたんだよ」
南はその場にいなかったが、院長のその言葉の続きを答えられる気がした。
拓海が言う事なんて決まってる。
「絶対にご迷惑をおかけしません。だからね、切羽詰まった顔で退職を伝えられた時私は何も言えなかったよ」
院長が「ごめんね。五十嵐君、明日も休みなさい」と言った後、看護師が受付を済ました患者がいることを伝えに来たので南は外に出た。
その後拓海の自宅にも寄ってみたが、すでに鍵は取り替えられており中を確認することが出来なかった。
南はそのまま帰宅して、シャワーを浴びて、何もお腹に入れる気にならずベッドに横になった。
朝まで眠れず、何度も入れた連絡に拓海からの返事はなかった。
まさか、と南は頭に思い浮かんだ男に電話を掛けた。
仕事でいないだけだよな?
部屋のなかに入ると、その違和感は確証に変わった。
拓海が家に住んでから増えたものが減り、一人で生活していた時の物の多さに戻っていた。
南は焦りと不安に襲われ、部屋のなかをひっくり返すように拓海の私物を探したが出てこなかった。
暫くして落ち着いてから、改めて部屋を見渡した。
いつも共にしていた食卓の上に手紙が二枚置かれていた。
目に入ってすぐ手に取った目を通した。
そこには、これまでの南への感謝と南と病院にも迷惑をかけた事への謝罪、今後は自分を探さないでくれと涙の痕を残して書き留められていた。
「くそッ」
南は手紙を投げ捨て靴の踵を踏んで外に出た。
そして、真っ先に向かったのは以前拓海がアルバイトをしていたママのお店だった。
拓海の自宅に向かわなかったのは、手紙の中には南が持ってる拓海の自宅の鍵を処分してほしいと書いてあったからだ。
あの人なら、拓海の居場所を知ってるかもしれない。
しかし目の前に広がる状況に、南は絶望した。
ママのお店にはすでに別の名前が書かれた看板が置かれていたからだ。
南が店の前でうろちょろしていると、買い物袋を両手にぶら下げる見た事もない男に声を掛けられた。
「誰だ? まだ開店前だよ」
「ここの店主は?」
「あ? 俺だよといっても今日からだけどな」
その言葉を聞いて南は血の気が引いた。
「どいてくれ。開店までまだ時間があるからどっかで暇を潰しててくれ」
男はポケットから鍵を取り出し、玄関を開ける。
扉が閉まるのを思わず防ぐ。
「あの! ここの前の店主が今どこにいるか分かりますか」
「あのな、そんなこと知るわけないだろう。はあ、俺の店に用がないならどっか行ってくれ」
そりゃそうだよな。邪魔するのも悪い。
南は「すみません」と謝った。
南が次に向かったのは病院だ。
病院に関しても謝罪をしていたからすでにやめてしまったのだろう。俺に連絡が無かったということは院長なら何か知ってるかもしれない。
病院に着くと拓海がいないのが当たり前の空気がそこにはあった。
今日まで休みのはずの南がいることに驚いた様子で看護師は声を掛けた。
「あれ、五十嵐先生? お休みじゃ?」
「ちょっと用があって。院長の診察って区切りつきそうですか?」
看護師は受付で院長の今の診察待ちを確認してあと、二人だと南に教えた。
数十分待って南は裏から院長の診察室にはいる。
「新条君の事だよね。ごめんね彼に知らせないで欲しいと言われたんだ」
「俺がいない間に、拓海に何があったんですか?」
「五十嵐君。君は新条君をウチで雇ってほしいと言って彼に尽力してあげていたね。その後新条君が面接に来てくれて、その時彼に言われたんだよ」
南はその場にいなかったが、院長のその言葉の続きを答えられる気がした。
拓海が言う事なんて決まってる。
「絶対にご迷惑をおかけしません。だからね、切羽詰まった顔で退職を伝えられた時私は何も言えなかったよ」
院長が「ごめんね。五十嵐君、明日も休みなさい」と言った後、看護師が受付を済ました患者がいることを伝えに来たので南は外に出た。
その後拓海の自宅にも寄ってみたが、すでに鍵は取り替えられており中を確認することが出来なかった。
南はそのまま帰宅して、シャワーを浴びて、何もお腹に入れる気にならずベッドに横になった。
朝まで眠れず、何度も入れた連絡に拓海からの返事はなかった。
まさか、と南は頭に思い浮かんだ男に電話を掛けた。
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