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ダンジョンに同行しよう
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襲ってきた男を2人ユキナと引きずりながらギルドへ運んだ。
冒険者ギルドに到着し、ギルドマスター室へ呼びに行こうとすると、メンゼフさんが2階から降りてきた。
「おうっ夜に呼び出してすまなかったな。ってだれだそいつら。」
「実は…かくかくしかじかありまして。」
一連の流れを説明する。急に襲われたこと。ユキナを巻き込んでしまったこと。
「それはまた血なまぐさい話だな。よしっ後はこちらで引き受ける。今日は地下牢にでもいれておく。明日マンゼフにでも拷問してもらう。さっそくだがギルマス長室に酒は置いてるから部屋にでも行っててくれ。」
「あのっわたしはここで失礼します。」
ユキナがここにいていいのだろうという顔をしながら発言した。
「巻き込んでしまって申し訳ない。今度埋め合わせをさせてくれるかな。」
「そんな。全然問題ないです。でもそう言ってくれるなら…カインさん今度デートしてくださいっ」
「わかった。日曜日はダンジョンに行くから、来週にでも行こうか。まずは赤龍のことだけ考えよう。」
わかりました。と深々とお辞儀をしてユキナが扉から出ていった。
一人になったことだし先にギルマス室でメンゼフさんを待っておこう。
◇
「カイン、おまえは罪な男だな。」
メンゼフさんが冷えたグラスを2つ持ち部屋に戻ってきた。
「なんのことですか。」
「チッ自覚のねえのがたちが悪い。良いやつなんだけどな。まあとにかく乾杯しようや」
それから数本は帝国ビールを開けただろうか。お酒を親しい人と酌み交わすのはすぐに酔ってしまうものだ。
「どうだカイン。ギルドの仕事をやってみて。」
「はい。忙しさにまいってしまいますが、それでもやりがいがあって充実しています。」
「それはよかった。冒険者が恋しくて辞めるんじゃないかってミントがソワソワしてたぞ。」
「そんな。拾ってもらった立場ですよ。それに休みの日にはダンジョンにも手伝いでいく予定ですし。」
「そうか。カインの冒険者としての知識がすごく評判が良くてな。今日も窓口で対応したやつらからお礼を言っておいてほしいって言われたぞ。」
お力になれていればいいんですが。とつぶやき、グラスの残りを飲み干す。
「案の定、イグニスの槍は90Fの攻略失敗したみたいだし、これからまた冒険者の勢力図が大きく変わって、ギルドも大忙しだな。」
…イグニスの槍は90F攻略失敗したのか。あんな事があっても元パーティの失敗は喜べない。
失敗したのか残念だな。
「うちは良い拾いもんしたぜ。カイン、今日駆け出しの銀色の牙にアシスト制を紹介してやったみたいじゃねえか。」
メンゼフのグハハと笑う声が大きいが他に人はいないし問題ないだろう。
銀色の牙は兄妹の2人パーティだ。一番最初に対応したパーティだしいい子たちそうだったのでしっかりと覚えている。
「はい。Eランクのゴブリン討伐の依頼を受けようとしていたのですが、まだ経験が浅そうだったので、提案させていただきました。」
「うん。それでいい。アシスト制はギルドが独自に実施している制度で、ルーキーの生存率を上げるためにやり始めたことだ。ギルドとしてやって良かったと胸を張って言える。ただ、最近俺が帝国議会に呼ばれる事が多くてな、実質的に形骸化してそこまで受けられてないんだ。」
野暮用でな。と付け加えるが帝国議会から野暮用の依頼なんて考えにくい、何か大きな問題に巻き込まれているだろう。
「それはギルドとして問題ですね。ということは、アシスト制を僕が担当するってことですか。」
メンゼフは首を縦に振る。
「話が早くて助かる。実はそれをお願いしたくて呼んだんだ。カイン。おまえがルークに絡まれて話も聞いた。さっきの暴漢2人もそうだ。極力ギルド以外の場所にいるほうが良いんじゃねえかと思ってな。」
「分かりました。それではアシスト制で冒険者の付き添い担当しますよ。」
「いやぁありがたい限りだぜ。体が何個あっても足りねえのよ。」
僕から見てもギルドマスターというのは本当に忙しい仕事だと思う。冒険者をしていたときはギルドは仕事を斡旋してるだけだと思っていたが、話を聞けば聞くほど、自分がギルドマスターをできるとは到底思えない。
「さっそくだが、明日午前中から銀色の牙のアシストの件、頼むわ。」
それはさっそくですね。わかりました。と返事を返す。
お酒を飲むと話がとても盛り上がる。それはいい話も悪い話も。
「カイン。最近ポーン家には顔だしてんのか。」
「…そうですね。一切出していません。」
カインは愛人の子としてポーン家に生まれた。こどもが本妻との間にできなかった間は寵愛を受けていたが、本妻に長男ができてからは、扱いが変わり愛人の子といじめを受けていた。母が死んだ15歳のときに逃げるように家を飛び出したのだ。今更帰る理由もない。唯一の心残りは兄として慕ってくれた妹にお別れのあいさつをできなかったことか。
「今更、帰る理由もありませんよ。それに会いたい人は今はいませんから。」
「つまんねえことを聞いたな。ポーン家のおっさん、未だに帝国議会内でブイブイいわせてるぜ。」
武闘派で有名なポーン家だ。小さい頃から死ぬと思うくらい剣技を磨くという名目で殴られてきた。今でも父は変わっていないのだろう。
「もう昔のことですから。メンゼフさんは結婚しないんですか。もういい年齢でしょ。」
「ばかやろう。俺のことは良いんだよ。それに、こんなに忙しくしてちゃあそんな時間もねえしな。おまえこそどうなんだよカイン。」
「ぼくは全然モテませんし、それに今はそれどころじゃないですよ。」
「おまえいつか、他の冒険者から刺されるぞ。まっ結婚してるわけでもねえし、いろいろな人と出会って好きな人を見つけるのも良いかもしれねえな。」
もう何本お酒を開けただろうか。机一面に空の瓶が置かれている。
「今日はもう遅いし、また襲われても困るしな、当直室でよければ泊まっていけ。シャワーは地下一階にあるから自由に使え。」
「お言葉に甘えます。さすがに飲みすぎました。」
「何言ってるんだ。まだまだ飲むぞ若造―――」
◇
誰かにカーテンが開けられたのだろうか太陽の光が部屋に差し込む。それにしても頭が痛い。
「メンゼフさんもカインさんも何やってるんですか。この部屋めちゃくちゃお酒臭いですよ。」
カーテンを開けたのはミントさんみたいだ。どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。メンゼフさんも向かいのソファーで大きないびきをかいている。これだけ明るいのに寝られるのは尊敬する。
「カインさん、もう30分でギルドが始まりますからシャワーを浴びてきてください。2日目から二日酔いで遅刻なんてめっですよ。」
たしかにそれはまずい。シャワーを浴びてリセットしないと。それにしてもメンゼフさんはまだ起きない。ミントさんが起こす声を後ろに聞きながらシャワーを浴びに地下に向かった。
◇
「カイン昨日は朝まで付き合わせて済まなかったな。今日は話したとおり、アシスト制度の付き添いだ。銀色の牙に付いてダンジョンに行ってくれ。ミントは受付を頼む。マンゼフは牢に入れてるやつから聞き出してくれ。多分口割らねえとは思うがうまくやってくれ。俺は野暮用で帝国議会に今日も顔出さなければならねぇ。何かあったらマンゼフが昼には戻ってくるからそっちで対応してくれ。」
「分かりました。それでは本日もよろしくお願いします。」
ギルドが開店して数分が立っただろうか。銀色の牙の兄妹が入ってきた。
「今日はアシスト制で付き添うカインだ。よろしく頼む。」
兄のヤマトと妹のカエデが喜ぶ。
「えっあのS級冒険者のカインさんが付き添ってくれるんですか。嬉しいです。昨日も帰り道でカインさんに付いてきてほしいなって話してたんです。なっカエデ。」
「ふぇっうん。嬉しいです。よろしくおねがいします。」
ぺこっとカエデがお辞儀をする。礼儀正しい兄妹だ。
「さっそくで悪いが、席にでも移動して、クエストの確認しようか。ヤマト、クエストの説明してくれ。」
「はい。昨日カインさんから説明を受けたとおり、対策をねってきました。<ゴブリンの5体討伐>なので、とりあえずポーションだけ3本買ってきました。」
「なるほど…」
初級の冒険者はこんな感じだったなと懐かしい目をする。最初は体当たりでダンジョンに行って何度も死にかけて逃走ばかりしてたな。
「いいかい。ヤマト。ゴブリン1体相手だったら実力的にも一人で倒せるだろう。でももし挟み撃ちや2体以上のゴブリンの群れがいたらどうする。」
「それは…」
「そう。ゴブリンくらいだったらと思うだろう。ゴブリンは初級の冒険者が一番死ぬ可能性が高い敵でもあるんだ。だからこそ、さまざまなパターンを想定しておかないと一生悔やんだとしても悔やみきれないことになる。」
たしかにとヤマトが言い、どうしようとうんうん悩んでいる。
「そうだな。ちなみにカエデは何魔法が使えるんだい。」
「わっわたしは火と土が初級魔法だけですが使えます。」
「なるほど。であれば話は簡単だ。数体であればヤマトが剣で突っ込み、カエデが魔法で同時撃破を狙う。囲まれたり、ゴブリンが仲間を呼んだときは土魔法で足止めして囲まれないように狭い通路で戦う。厳しいようだったら魔法でけん制しながら逃げようか。」
「…そこまで考えてるんですね。カインさん。」
「そうだね。基本的にはミス=死だから。これでも考えてない方だと思うよ。」
「…そんなことはないですよ。カインさんすごいすぎます。」
2人はしきりに感動している。まだまだ冒険者としてこれからだ。一つでも成長する機会になってほしい。
「よし。予習はここまで。ポーションも買っているみたいだし、さっそくダンジョンに向かおうか。」
「「はいっ! 」」
◇
ダンジョンの5階に着いた。そろそろ出てくる魔獣もスライムからゴブリンに変わる頃合いだ。
小道から広間をのぞくと、ゴブリン2体が反対側を向いて座っているのが見える。
「あそこにゴブリンが2体いるのが見えるかい。左手前にいるゴブリンをヤマトで剣で突っ込んで斬る。右奥にいるのはカエデのファイヤボールで攻撃しよう。」
「その後は臨機応変に動こう。ヤマトは左手前ゴブリンの撃破。時間がかかりそうだったら、カエデは火から土に呪文を変えて、向かってくる敵からの攻撃を遅らせるようにしよう。さあ、呼吸合わせてやってみよう。なに二人の実力だったら大丈夫だよ。」
「はい。よしっカエデ、いくぞっ」
ヤマトが剣を抜き広間に躍り出る。
手前のゴブリンに斬りかかった。
「ガシッ」と良い一撃が入ったが仕留めきれていない。
「ヤマトそのまま。押し切れ。」
「グエエエ」と鳴き声を上げゴブリンがヤマトに棍棒で反撃する。ヤマトが剣で受けカウンターでとどめを刺す。
よしっ。良い攻撃だ。
ファイヤーボールが当たったもう1体が慌ててカエデにせまって来る。
えいっ「サンドウォール」ゴブリンが体制を崩す。狙い通りだ。
足止めがうまくいったところで、ヤマトがゴブリンを後ろから斬りかかる。ゴブリンが動かなくなった。
「やりましたよ。カインさん。」
ヤマトが剣の血を布で吹きながら嬉んでいる。
「ああすごく良かったよ。冷静に立ち回れていたと思う。ヤマトは一撃でゴブリンを倒せなかったのは課題だな。後ろを取ってるなら一撃で倒せないと戦況が悪くなる。カエデはよくあの状況で慌てずファイヤーボールからサンドウォールに切り替えたな。」
「はいっカインさんのアドバイスのおかげです。」
「いや二人の実力だよ。最後にゴブリンの耳を剥ぎ取って終わりかな。後3体油断せず行こう。」
◇
若い子の一番の強みは成長スピードだろう。スポンジのようにアドバイスするとなんでも吸収する。今日一日で二人の実力はすごく伸びたと思う。レベルアップしたわけではないが、なによりパーティとしての熟練度が上がっただろう。
「「カインさん今日は本当にありがとうございました。」」
二人が声を合わせてお礼を言う。
「ああ、大丈夫。2人ともすごく良かったと思う。連携も上達したと思うよ。」
「よかったです~。ぼくたちこれからもっと成長してカインさんと一緒のレベルになれるよう努力しますよ。」
「うん。そうだね。楽しみにしてるよ。ただし、命は一つしかないから無理だけはしないようにね。」
「はい。ありがとうございます。ほらカエデいくぞっ。」
2人がお辞儀をし、ミントさんに素材の提出しに行ったみたいだ。
さて、僕もシャワーを浴びて、受付に戻りますか。
「ミントさん。戻りました。受付に入りますよ。」
「カインさんおかえりなさい。ダンジョン帰りで申し訳ないのですが、お願いします。この時間からまた増えてきますので。」
分かりましたと言い窓口に入るとギルドの入り口でヤマトとカエデが手を振っているのが目に入り手を振り返す。
素直でいい子達だと思う。このまま初心を忘れずに成長してほしい。
「カインさん。好かれてますね。」
「そんなことはないですよ。若い子なので順調に成長してほしいです。いい刺激になりました。」
人の成長を見ることが嬉しいなんて僕も変わったなと笑みがこぼれる。残りの時間も受付業務を頑張ろう。
こうして2日目も過ぎていった。
冒険者ギルドに到着し、ギルドマスター室へ呼びに行こうとすると、メンゼフさんが2階から降りてきた。
「おうっ夜に呼び出してすまなかったな。ってだれだそいつら。」
「実は…かくかくしかじかありまして。」
一連の流れを説明する。急に襲われたこと。ユキナを巻き込んでしまったこと。
「それはまた血なまぐさい話だな。よしっ後はこちらで引き受ける。今日は地下牢にでもいれておく。明日マンゼフにでも拷問してもらう。さっそくだがギルマス長室に酒は置いてるから部屋にでも行っててくれ。」
「あのっわたしはここで失礼します。」
ユキナがここにいていいのだろうという顔をしながら発言した。
「巻き込んでしまって申し訳ない。今度埋め合わせをさせてくれるかな。」
「そんな。全然問題ないです。でもそう言ってくれるなら…カインさん今度デートしてくださいっ」
「わかった。日曜日はダンジョンに行くから、来週にでも行こうか。まずは赤龍のことだけ考えよう。」
わかりました。と深々とお辞儀をしてユキナが扉から出ていった。
一人になったことだし先にギルマス室でメンゼフさんを待っておこう。
◇
「カイン、おまえは罪な男だな。」
メンゼフさんが冷えたグラスを2つ持ち部屋に戻ってきた。
「なんのことですか。」
「チッ自覚のねえのがたちが悪い。良いやつなんだけどな。まあとにかく乾杯しようや」
それから数本は帝国ビールを開けただろうか。お酒を親しい人と酌み交わすのはすぐに酔ってしまうものだ。
「どうだカイン。ギルドの仕事をやってみて。」
「はい。忙しさにまいってしまいますが、それでもやりがいがあって充実しています。」
「それはよかった。冒険者が恋しくて辞めるんじゃないかってミントがソワソワしてたぞ。」
「そんな。拾ってもらった立場ですよ。それに休みの日にはダンジョンにも手伝いでいく予定ですし。」
「そうか。カインの冒険者としての知識がすごく評判が良くてな。今日も窓口で対応したやつらからお礼を言っておいてほしいって言われたぞ。」
お力になれていればいいんですが。とつぶやき、グラスの残りを飲み干す。
「案の定、イグニスの槍は90Fの攻略失敗したみたいだし、これからまた冒険者の勢力図が大きく変わって、ギルドも大忙しだな。」
…イグニスの槍は90F攻略失敗したのか。あんな事があっても元パーティの失敗は喜べない。
失敗したのか残念だな。
「うちは良い拾いもんしたぜ。カイン、今日駆け出しの銀色の牙にアシスト制を紹介してやったみたいじゃねえか。」
メンゼフのグハハと笑う声が大きいが他に人はいないし問題ないだろう。
銀色の牙は兄妹の2人パーティだ。一番最初に対応したパーティだしいい子たちそうだったのでしっかりと覚えている。
「はい。Eランクのゴブリン討伐の依頼を受けようとしていたのですが、まだ経験が浅そうだったので、提案させていただきました。」
「うん。それでいい。アシスト制はギルドが独自に実施している制度で、ルーキーの生存率を上げるためにやり始めたことだ。ギルドとしてやって良かったと胸を張って言える。ただ、最近俺が帝国議会に呼ばれる事が多くてな、実質的に形骸化してそこまで受けられてないんだ。」
野暮用でな。と付け加えるが帝国議会から野暮用の依頼なんて考えにくい、何か大きな問題に巻き込まれているだろう。
「それはギルドとして問題ですね。ということは、アシスト制を僕が担当するってことですか。」
メンゼフは首を縦に振る。
「話が早くて助かる。実はそれをお願いしたくて呼んだんだ。カイン。おまえがルークに絡まれて話も聞いた。さっきの暴漢2人もそうだ。極力ギルド以外の場所にいるほうが良いんじゃねえかと思ってな。」
「分かりました。それではアシスト制で冒険者の付き添い担当しますよ。」
「いやぁありがたい限りだぜ。体が何個あっても足りねえのよ。」
僕から見てもギルドマスターというのは本当に忙しい仕事だと思う。冒険者をしていたときはギルドは仕事を斡旋してるだけだと思っていたが、話を聞けば聞くほど、自分がギルドマスターをできるとは到底思えない。
「さっそくだが、明日午前中から銀色の牙のアシストの件、頼むわ。」
それはさっそくですね。わかりました。と返事を返す。
お酒を飲むと話がとても盛り上がる。それはいい話も悪い話も。
「カイン。最近ポーン家には顔だしてんのか。」
「…そうですね。一切出していません。」
カインは愛人の子としてポーン家に生まれた。こどもが本妻との間にできなかった間は寵愛を受けていたが、本妻に長男ができてからは、扱いが変わり愛人の子といじめを受けていた。母が死んだ15歳のときに逃げるように家を飛び出したのだ。今更帰る理由もない。唯一の心残りは兄として慕ってくれた妹にお別れのあいさつをできなかったことか。
「今更、帰る理由もありませんよ。それに会いたい人は今はいませんから。」
「つまんねえことを聞いたな。ポーン家のおっさん、未だに帝国議会内でブイブイいわせてるぜ。」
武闘派で有名なポーン家だ。小さい頃から死ぬと思うくらい剣技を磨くという名目で殴られてきた。今でも父は変わっていないのだろう。
「もう昔のことですから。メンゼフさんは結婚しないんですか。もういい年齢でしょ。」
「ばかやろう。俺のことは良いんだよ。それに、こんなに忙しくしてちゃあそんな時間もねえしな。おまえこそどうなんだよカイン。」
「ぼくは全然モテませんし、それに今はそれどころじゃないですよ。」
「おまえいつか、他の冒険者から刺されるぞ。まっ結婚してるわけでもねえし、いろいろな人と出会って好きな人を見つけるのも良いかもしれねえな。」
もう何本お酒を開けただろうか。机一面に空の瓶が置かれている。
「今日はもう遅いし、また襲われても困るしな、当直室でよければ泊まっていけ。シャワーは地下一階にあるから自由に使え。」
「お言葉に甘えます。さすがに飲みすぎました。」
「何言ってるんだ。まだまだ飲むぞ若造―――」
◇
誰かにカーテンが開けられたのだろうか太陽の光が部屋に差し込む。それにしても頭が痛い。
「メンゼフさんもカインさんも何やってるんですか。この部屋めちゃくちゃお酒臭いですよ。」
カーテンを開けたのはミントさんみたいだ。どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。メンゼフさんも向かいのソファーで大きないびきをかいている。これだけ明るいのに寝られるのは尊敬する。
「カインさん、もう30分でギルドが始まりますからシャワーを浴びてきてください。2日目から二日酔いで遅刻なんてめっですよ。」
たしかにそれはまずい。シャワーを浴びてリセットしないと。それにしてもメンゼフさんはまだ起きない。ミントさんが起こす声を後ろに聞きながらシャワーを浴びに地下に向かった。
◇
「カイン昨日は朝まで付き合わせて済まなかったな。今日は話したとおり、アシスト制度の付き添いだ。銀色の牙に付いてダンジョンに行ってくれ。ミントは受付を頼む。マンゼフは牢に入れてるやつから聞き出してくれ。多分口割らねえとは思うがうまくやってくれ。俺は野暮用で帝国議会に今日も顔出さなければならねぇ。何かあったらマンゼフが昼には戻ってくるからそっちで対応してくれ。」
「分かりました。それでは本日もよろしくお願いします。」
ギルドが開店して数分が立っただろうか。銀色の牙の兄妹が入ってきた。
「今日はアシスト制で付き添うカインだ。よろしく頼む。」
兄のヤマトと妹のカエデが喜ぶ。
「えっあのS級冒険者のカインさんが付き添ってくれるんですか。嬉しいです。昨日も帰り道でカインさんに付いてきてほしいなって話してたんです。なっカエデ。」
「ふぇっうん。嬉しいです。よろしくおねがいします。」
ぺこっとカエデがお辞儀をする。礼儀正しい兄妹だ。
「さっそくで悪いが、席にでも移動して、クエストの確認しようか。ヤマト、クエストの説明してくれ。」
「はい。昨日カインさんから説明を受けたとおり、対策をねってきました。<ゴブリンの5体討伐>なので、とりあえずポーションだけ3本買ってきました。」
「なるほど…」
初級の冒険者はこんな感じだったなと懐かしい目をする。最初は体当たりでダンジョンに行って何度も死にかけて逃走ばかりしてたな。
「いいかい。ヤマト。ゴブリン1体相手だったら実力的にも一人で倒せるだろう。でももし挟み撃ちや2体以上のゴブリンの群れがいたらどうする。」
「それは…」
「そう。ゴブリンくらいだったらと思うだろう。ゴブリンは初級の冒険者が一番死ぬ可能性が高い敵でもあるんだ。だからこそ、さまざまなパターンを想定しておかないと一生悔やんだとしても悔やみきれないことになる。」
たしかにとヤマトが言い、どうしようとうんうん悩んでいる。
「そうだな。ちなみにカエデは何魔法が使えるんだい。」
「わっわたしは火と土が初級魔法だけですが使えます。」
「なるほど。であれば話は簡単だ。数体であればヤマトが剣で突っ込み、カエデが魔法で同時撃破を狙う。囲まれたり、ゴブリンが仲間を呼んだときは土魔法で足止めして囲まれないように狭い通路で戦う。厳しいようだったら魔法でけん制しながら逃げようか。」
「…そこまで考えてるんですね。カインさん。」
「そうだね。基本的にはミス=死だから。これでも考えてない方だと思うよ。」
「…そんなことはないですよ。カインさんすごいすぎます。」
2人はしきりに感動している。まだまだ冒険者としてこれからだ。一つでも成長する機会になってほしい。
「よし。予習はここまで。ポーションも買っているみたいだし、さっそくダンジョンに向かおうか。」
「「はいっ! 」」
◇
ダンジョンの5階に着いた。そろそろ出てくる魔獣もスライムからゴブリンに変わる頃合いだ。
小道から広間をのぞくと、ゴブリン2体が反対側を向いて座っているのが見える。
「あそこにゴブリンが2体いるのが見えるかい。左手前にいるゴブリンをヤマトで剣で突っ込んで斬る。右奥にいるのはカエデのファイヤボールで攻撃しよう。」
「その後は臨機応変に動こう。ヤマトは左手前ゴブリンの撃破。時間がかかりそうだったら、カエデは火から土に呪文を変えて、向かってくる敵からの攻撃を遅らせるようにしよう。さあ、呼吸合わせてやってみよう。なに二人の実力だったら大丈夫だよ。」
「はい。よしっカエデ、いくぞっ」
ヤマトが剣を抜き広間に躍り出る。
手前のゴブリンに斬りかかった。
「ガシッ」と良い一撃が入ったが仕留めきれていない。
「ヤマトそのまま。押し切れ。」
「グエエエ」と鳴き声を上げゴブリンがヤマトに棍棒で反撃する。ヤマトが剣で受けカウンターでとどめを刺す。
よしっ。良い攻撃だ。
ファイヤーボールが当たったもう1体が慌ててカエデにせまって来る。
えいっ「サンドウォール」ゴブリンが体制を崩す。狙い通りだ。
足止めがうまくいったところで、ヤマトがゴブリンを後ろから斬りかかる。ゴブリンが動かなくなった。
「やりましたよ。カインさん。」
ヤマトが剣の血を布で吹きながら嬉んでいる。
「ああすごく良かったよ。冷静に立ち回れていたと思う。ヤマトは一撃でゴブリンを倒せなかったのは課題だな。後ろを取ってるなら一撃で倒せないと戦況が悪くなる。カエデはよくあの状況で慌てずファイヤーボールからサンドウォールに切り替えたな。」
「はいっカインさんのアドバイスのおかげです。」
「いや二人の実力だよ。最後にゴブリンの耳を剥ぎ取って終わりかな。後3体油断せず行こう。」
◇
若い子の一番の強みは成長スピードだろう。スポンジのようにアドバイスするとなんでも吸収する。今日一日で二人の実力はすごく伸びたと思う。レベルアップしたわけではないが、なによりパーティとしての熟練度が上がっただろう。
「「カインさん今日は本当にありがとうございました。」」
二人が声を合わせてお礼を言う。
「ああ、大丈夫。2人ともすごく良かったと思う。連携も上達したと思うよ。」
「よかったです~。ぼくたちこれからもっと成長してカインさんと一緒のレベルになれるよう努力しますよ。」
「うん。そうだね。楽しみにしてるよ。ただし、命は一つしかないから無理だけはしないようにね。」
「はい。ありがとうございます。ほらカエデいくぞっ。」
2人がお辞儀をし、ミントさんに素材の提出しに行ったみたいだ。
さて、僕もシャワーを浴びて、受付に戻りますか。
「ミントさん。戻りました。受付に入りますよ。」
「カインさんおかえりなさい。ダンジョン帰りで申し訳ないのですが、お願いします。この時間からまた増えてきますので。」
分かりましたと言い窓口に入るとギルドの入り口でヤマトとカエデが手を振っているのが目に入り手を振り返す。
素直でいい子達だと思う。このまま初心を忘れずに成長してほしい。
「カインさん。好かれてますね。」
「そんなことはないですよ。若い子なので順調に成長してほしいです。いい刺激になりました。」
人の成長を見ることが嬉しいなんて僕も変わったなと笑みがこぼれる。残りの時間も受付業務を頑張ろう。
こうして2日目も過ぎていった。
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スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
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