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部屋を借りよう!
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ギルドで働きだしてから3日目だ。仕事にも少しずつ慣れたきた。
ギルドの仕事は、午前中はクエストの受注業務。午後は検品作業を主に対応する。朝一から依頼を受けて夕方には冒険者は帝都に帰ってくる。そして、夜は飲むのが冒険者のよくある流れみたいだ。
「今日もお疲れさまでしたカインさん。」
「お疲れさまです。ミントさん。それにしても金曜日はいつもより忙しいですね。」
はい。金曜日は遠征するパーティも多いので毎週忙しいです。とミントさんが体を伸ばしながら答える。
「ところで、カインさん週末はどうお過ごしになるんですか。」
ミントさんが尻尾をパタパタと振りながら質問してくる。
尻尾触りたくなるのは男の性だろうか。
「そうですね。日曜日はエンリルの矢とダンジョン攻略に行くのですが、土曜日はその準備と新しく住む部屋でも探しに行こうかなと思ってます。」
「お部屋探しですかっ。」
「はい。パーティを組んでるときは毎日ダンジョンにいて、帝都にいるときは宿に泊まっていればよかったのですが、ギルド職員になったので部屋を借りるほうが安上がりかなって。昨日、メンゼフさんにも相談してギルド御用達の商会に紹介してもらおうと思ってます。」
「なるほど。じゃあわたしも付いていきますねっ。ほら、カインさん良い人だからだまされても困りますし。」
さすがに、ギルド御用達の商会がだますとは思えないが。今まで部屋探しなんてしたことはないし、ありがたい申し出だ。
「良いんですか。ミントさん。お手伝いしてもらえたら嬉しいですが。」
「はい。もちろんですっ。じゃあ明日お昼にギルド前集合で。楽しみにしていますねっ。」
ギルドのメンバーは『人がいい』。なんて優しい人たちだろう。明日遅刻しないように今日は飲む量をセーブしないとな。
◇
翌日、宿のベッドで目を覚ます。今日で宿暮らしともお別れだ。それにしても絶好の快晴だ。今日はいい事がある気がする。
出かける準備をすませて待ち合わせ場所の冒険者ギルドへ向かうと、すでにミントさんが待っていた。
「すみません。待たせちゃいましたか。」
「いえ。わたしも今来たところです。」
「それにしてもミントさんの私服、すごくかわいいますね。」
ギルドでは制服を着る規則があるので、私服はみたことがなかった。ミントさんの私服はシルクの高そうな素材で純白のワンピースだ。
「えっすごく嬉しいです。」
ミントさんの顔が赤くなるのが見える。
「そろそろ約束の時間ですし、さっそく商会に向かいましょう。」
ミントさんと連れ添い商会に向かう。商会はミステル商会と言うらしい。
「カインさんはどんな部屋がいいんですか。」
「そうですね。あまりこれといった条件はないのですが、作業場があるような部屋がいいと思っています。」
「…作業場ですか。」
「はい。剣を打ったり、加工したりもしたいので、できればですが。」
「考え方が冒険者ですね。作業場があるよう住居は、一軒家しかないと思います。さすがに部屋借りではその条件は厳しいかもしれません。」
なるほど。確かに作業場がある賃貸なんて普通はないよなと思う。
「着きました。ここがミステル商会です。時間、ジャストですし中入りましょう。」
中に入るとミステル商会はすごく広い。ギルドと同じくらいだろうか。休日ということもあり混んでいる。
「受付にメンゼフさんの紹介って言えば良いと思います。」
「わかりました。受付してきます。ミントさんは席に掛けて待っていてください。」
受付には自分と同じくらいの年齢と思われる女性が受付してくれた。
「すみません。メンゼフさんからの紹介で部屋を探しに来たんですが。」
「あらっあなたがカインさん。お待ちしておりました。さっそく案内しますので、席でお待ち下さい。」
ミントさんと席に座って待つ。たしかミステル商会は<没落貴族>と言われていた気がするが、紹介の混み具合を見るに最近はすごくもうかっているのではないだろうか。
数分はたっただろうか。元気いっぱいの少女が書類を持って席に来た。
「カインさんですね。ご利用ありがとうございます。わたしミステル商会のエリシャ=ミステルです。今日はカインさんに合う物件紹介しますよっ。」
エリシャさんの勢いに面食らう。
「ありがとうございます。条件として作業場を挙げさせていただきましたが、それ以外はどんな条件でも大丈夫です。」
「ふっふっふ。大丈夫です。必ず満足行く物件を紹介しますよ。物件3つ準備していますので、さっそく向かいましょう。」
まだ若い女性なのにしっかりしているなと思い。これは今日は良い物件に出会えだろう。と期待に胸を膨らませ、商会を後にした。
◇
最初に案内されたのは、高級住宅の一角にある一軒家だ。
「最近、帝都が安全なこともあり人の数が増えているので、空いてる部屋って少ないんですよ。」
たしかに、良い物件だ。ただ、部屋自体は狭い。作業場はあるが使い勝手はよくなさそうだ。
「そうなんですね。この家は家賃どれくらいですか。」
「月に20万PYNです。」
世間一般的に給料の3分の1くらいが家賃の相場らしい。給与も50万PYNあるし、冒険で得た素材を売れば全然払えないことはない。
「なるほど。わかりました。次の物件お願いします。」
2軒目も内見すると1軒目よりも安く広いが、作業場がない。作業場を作ろうとすれば作れるだろうが、火気厳禁らしい。
「これだったら1軒目のほうが良さそうです。3軒目行きましょう。」
「その、実はですね。3軒目案内するにあたって説明しなければならないことがありまして。」
歩きながらエリシャが説明してくれるが、なんだろう。歯切れが悪い。
「まあ見てもらえば分かると思いますが、俗に言う事故物件といいますか…今まで借りた3代のオーナーさんが不慮の事故や体調不良になって、すぐに解約しておりまして。ずっと空き家になっているんです。」
建物の前に着く。たしかに立派な建物だが、すごくどんよりした雰囲気を感じる。庭もあり立派な建物だが誰の手も入っていないのだろう。雑草が一面に生えている。
「もともと貴族が作った建物なので作りはしっかりしていますが、すごい雰囲気ですね。寒気がします。案内しておいて恐縮ですが、カインさんこの建物は辞めておいたほうがいいです。」
とにかく入って中を見てみないことには何も分からない。
室内に入るとすごく奇麗な建物のはずだが、床一面埃かぶっていて、窓を開けて換気をしてもどんよりした感じは取れない。
「2階のここがマスタールームです。カインさん悪いことは言いません。この建物やばいですよ。」
ミントさんが不安そうな顔をしている。嫌な気配は2階のマスタールームからしているみたいだ。この部屋を開ければ原因が分かるだろう。
「不安ならここで待機していてください。中を見てきます。」
部屋を開けると、半透明で貴族みたいな格好をした男の幽霊が見える。
「カインさん。おばけです。怖いです。呪われちゃいます。出ましょう。」
「ミントさん、エリシャさんは扉の外で待機していてください。」
「…はい。」
観察すると瘴気が幽霊の周りを漂っている。これは普通に生活していたら心身ともに病んでしまうだろう。
幽霊が魔物と違うところは攻撃してこないところだ。攻撃はしてこないから普通の人には見えないし気が付けない。それはそれでたちが悪い。
ずっと住んでいると体調不良になるのもしょうがない。
『ニクイ。ニクイ』
貴族の怨念がここに居座ってしまっているようだ。これは厄介な幽霊だ。1件目に決めてもいいのだが、この物件がいい物件なのは間違いない。
「すまないが、ここはあなたの居るべき世界ではない。浄化させてもらおう。」
「ホワイトアウト」
光の呪文が幽霊を包む。
「ギュエエエエエエ」
幽霊には光の呪文が効果的だ。物理攻撃しても当たるわけない。
だが、これで終わりだ。
「アァァ……ありがとう。」
断末魔が聞こえち。幽霊が見えなくなった。
浄化できたのだろう。
「安らかに眠ってほしい。」
幽霊を浄化するとどんよりとした嫌な雰囲気を感じなくなった。
これで大丈夫だろう。
扉を開け、エリシャに契約すると伝えよう。
「エリシャさん。この屋敷借りさせてください。」
「えっ、ってこの屋敷でいいんですか。」
「はい。浄化もできましたし、もう悪さはしないでしょう。広さも申し分ないです。この建物おいくらですか。」
ちょっと待って下さい。と言いながらエリシャは書類に目をおとす。
「この建物は月10万PYNです。」
なるほど。お買い得だ。相場の5分の1くらいだろうか。
「ぜひこの物件でお願いします。さっそく契約させてください。」
商会に戻り、契約書にサインする。掃除をする必要はあるが、すごく良い物件に出会えた。
「はい。こちらで契約完了です。鍵をお渡ししますね。今日から住めますよ。」
「エリシャ。ありがとう。すごく気に入ったよ。」
「お礼を言うのはこちらのほうです。あの物件、ミステル商会が持ち主なのですが、借りてくれるお客様がいなかった物件だったので嬉しいです。浄化までしてもらったので契約金もいりません。水も電気も使えますので今日から住めますよっ。また何かあったらミステル商会、エリシャまでご連絡ください。」
◇
エリシャさんと握手をしてミステル商会を出る。もうじきに日も沈む。
「ミントさん今日はありがとうございました。おかげさまで家が見つかりました。」
「いえ~わたしは何もしていませんよ。ただの付き添い人ですっ。」
「いい物件に出会えたのもミントさん、メンゼフさんのおかげです。お礼と言ってはなんですが、ご飯でも行きませんか。ご馳走をさせてください。ちょうどおなかも減ってきましたし。」
「それはグッドアイディアですねっ。明けの明星に行きましょう! あそこは美味しいですからっ! 」
明けの明星に向かう。明けの明星はギルド御用達の食事処だ。帝国一美味しいと言っても過言ではない。早く行かないと席がうまってしまう。
商会から明けの明星に向かうために細い路地を使う。治安は良くないが時間はかなり短縮できる。
路地を進むと向かい側から走ってきた少女とぶつかりこけたみたいだ。
マントで全身を隠している少女がこちらに話しかける。
「ごめんなさい。急いでいて。おけがはありませんか。」
「いやぜんぜん大丈夫だ。こちらこそ急いでいるのに邪魔をしてすまなかった。」
カインは倒れた少女に手を差し伸べる。マントで目の下まで隠すなんて訳ありだろうか。
「いえ。大丈夫です。失礼しますね。」
早々に少女はこの場を去ろうとする。
「いたぞあそこだ。」
前から男3人が走ってくる。状況を見るに、この少女を追いかけているのだろう。
「おい兄ちゃん。痛い目にあいたくなかったらそこの女をわたしな。」
「おいおい。そんなことを言われて渡すわけないだろ。何があったんだ。」
理由なんて説明するわけねえだろっ。と言いながら先頭の男が殴りかかってくる。
帝国の治安は良いと言われているが、暴漢がいるなんて治安は良くないんじゃないかと思う。ミントさんもいる手前、逃げることは不可能だろう。この場は制圧するしかない。
男が殴って来た。後ろに体をそらし躱す。
男が体勢を崩したところで、みぞおちに膝をたたきこむ。
男はグエッと声を上げ倒れ込んだ。
「まだやるかい。この男みたいになりたかったら相手になる。」
2人の暴漢はお互いに目を合わせる。どうしようか悩んでいるようだ。
「これだけ騒ぎを起こせばじきに人が集まってくると思うが。撤退するなら今のうちだ。」
カインの戦う姿を見て、戦況は不利と考えたのだろう。二人は振り返り、逃げ出そうとする。
「逃げるなら。のびてる男も連れていけよ。」
憲兵に男たちをわたすことも考えたが、このまま男たちと戦うとミントさんや少女が傷つくリスクを考えると逃がすのがベターだろう。
二人が男をかかえ去っていった。良かった。もし武器を使われていたら誰かしらを殺すことでしかこの場を無傷で切り抜けられなかっただろう。
無駄な殺生は避けたい。
「お兄さん、ありがとうございました。助かりました。」
後ろにいる少女が話しかけてくる。マントを肩にかけ直し素顔が明らかになる。
透き通ったサラサラの銀色の髪。整った顔。宝石のような銀色の目。
まさしく貴族の娘だろうか。
「いや。お礼は大丈夫。キミも危ない道は通らないようにね。何されても文句は言えないよ。」
「…そっそうですね。気をつけます。お礼をしたいので、お兄さん名前を聞いてもいいですか。」
「カインだ。お礼は大丈夫だから。何もしてないからね。日も沈むし気をつけて帰りなよ。」
帝国の時計塔を見あげて、もうこんな時間と少女がつぶやいた。
お辞儀をして少女は走り去っていった。
◇
明けの明星に着いた。どうやら席は空いているみたいだ。ギリギリセーフと言ったところか。
店員さんに今日のおすすめを聞いて適当に注文する。
帝国ビールでミントさんと乾杯する。
「今日は付き合っていただき、ありがとうございました。」
「いえ~わたしも楽しかったです。それにカインさんとデートできてよかったです。」
「でッデートですか。何もしていませんが、楽しんでもらえたなら嬉しいです。」
お礼と言ってはなんですが、さっき露天で買った髪留めをプレゼントさせてくださいと言いカインはミントに金色の髪留めを渡す。
「え~すごく嬉しいです。さっそく付けてもらっていいですか。」
「ミントさんに似合いそうだと思ったのでこれにしたんです。さっそく着けますね。」
ミントの髪に髪留めを着けてあげある。
そういえば、妹にも髪留めをつけてくれってよくせがまれてたな。
「ありがとうございます。嬉しいです~」
手鏡を見ながら嬉しそうにミントが答える。
「喜んでくれて良かったです。料理もきたので冷めないうちに食べましょうか。」
お酒も入り、美味しいご飯をたらふく食べる。お酒が入ると話も盛り上がる。
「それにしてもカインさんって、いろいろな事件に巻き込まれる体質ですか。こんなことってあります?幽霊に暴漢なんて聞いたことがないですよっ。 」
ミントさんはだいぶ酔っているのだろう。顔を真赤にしながら話しかけてくる。
巻き込まれ体質…ぐうの音も出ない。
「たしかに、昔から事件に巻き込まれることも多かったな。体質なのかな。」
「体質なのか、カインさんが良い人なのか。まぁそこがカインさんの魅力ではありますけど。」
「まあ無事だったし、良いだろう。ミントさんもかわいいんだから用心してくださいね。」
そういうところがずるいんです。とミントさんがボソリとつぶやいた。
ギルドの仕事は、午前中はクエストの受注業務。午後は検品作業を主に対応する。朝一から依頼を受けて夕方には冒険者は帝都に帰ってくる。そして、夜は飲むのが冒険者のよくある流れみたいだ。
「今日もお疲れさまでしたカインさん。」
「お疲れさまです。ミントさん。それにしても金曜日はいつもより忙しいですね。」
はい。金曜日は遠征するパーティも多いので毎週忙しいです。とミントさんが体を伸ばしながら答える。
「ところで、カインさん週末はどうお過ごしになるんですか。」
ミントさんが尻尾をパタパタと振りながら質問してくる。
尻尾触りたくなるのは男の性だろうか。
「そうですね。日曜日はエンリルの矢とダンジョン攻略に行くのですが、土曜日はその準備と新しく住む部屋でも探しに行こうかなと思ってます。」
「お部屋探しですかっ。」
「はい。パーティを組んでるときは毎日ダンジョンにいて、帝都にいるときは宿に泊まっていればよかったのですが、ギルド職員になったので部屋を借りるほうが安上がりかなって。昨日、メンゼフさんにも相談してギルド御用達の商会に紹介してもらおうと思ってます。」
「なるほど。じゃあわたしも付いていきますねっ。ほら、カインさん良い人だからだまされても困りますし。」
さすがに、ギルド御用達の商会がだますとは思えないが。今まで部屋探しなんてしたことはないし、ありがたい申し出だ。
「良いんですか。ミントさん。お手伝いしてもらえたら嬉しいですが。」
「はい。もちろんですっ。じゃあ明日お昼にギルド前集合で。楽しみにしていますねっ。」
ギルドのメンバーは『人がいい』。なんて優しい人たちだろう。明日遅刻しないように今日は飲む量をセーブしないとな。
◇
翌日、宿のベッドで目を覚ます。今日で宿暮らしともお別れだ。それにしても絶好の快晴だ。今日はいい事がある気がする。
出かける準備をすませて待ち合わせ場所の冒険者ギルドへ向かうと、すでにミントさんが待っていた。
「すみません。待たせちゃいましたか。」
「いえ。わたしも今来たところです。」
「それにしてもミントさんの私服、すごくかわいいますね。」
ギルドでは制服を着る規則があるので、私服はみたことがなかった。ミントさんの私服はシルクの高そうな素材で純白のワンピースだ。
「えっすごく嬉しいです。」
ミントさんの顔が赤くなるのが見える。
「そろそろ約束の時間ですし、さっそく商会に向かいましょう。」
ミントさんと連れ添い商会に向かう。商会はミステル商会と言うらしい。
「カインさんはどんな部屋がいいんですか。」
「そうですね。あまりこれといった条件はないのですが、作業場があるような部屋がいいと思っています。」
「…作業場ですか。」
「はい。剣を打ったり、加工したりもしたいので、できればですが。」
「考え方が冒険者ですね。作業場があるよう住居は、一軒家しかないと思います。さすがに部屋借りではその条件は厳しいかもしれません。」
なるほど。確かに作業場がある賃貸なんて普通はないよなと思う。
「着きました。ここがミステル商会です。時間、ジャストですし中入りましょう。」
中に入るとミステル商会はすごく広い。ギルドと同じくらいだろうか。休日ということもあり混んでいる。
「受付にメンゼフさんの紹介って言えば良いと思います。」
「わかりました。受付してきます。ミントさんは席に掛けて待っていてください。」
受付には自分と同じくらいの年齢と思われる女性が受付してくれた。
「すみません。メンゼフさんからの紹介で部屋を探しに来たんですが。」
「あらっあなたがカインさん。お待ちしておりました。さっそく案内しますので、席でお待ち下さい。」
ミントさんと席に座って待つ。たしかミステル商会は<没落貴族>と言われていた気がするが、紹介の混み具合を見るに最近はすごくもうかっているのではないだろうか。
数分はたっただろうか。元気いっぱいの少女が書類を持って席に来た。
「カインさんですね。ご利用ありがとうございます。わたしミステル商会のエリシャ=ミステルです。今日はカインさんに合う物件紹介しますよっ。」
エリシャさんの勢いに面食らう。
「ありがとうございます。条件として作業場を挙げさせていただきましたが、それ以外はどんな条件でも大丈夫です。」
「ふっふっふ。大丈夫です。必ず満足行く物件を紹介しますよ。物件3つ準備していますので、さっそく向かいましょう。」
まだ若い女性なのにしっかりしているなと思い。これは今日は良い物件に出会えだろう。と期待に胸を膨らませ、商会を後にした。
◇
最初に案内されたのは、高級住宅の一角にある一軒家だ。
「最近、帝都が安全なこともあり人の数が増えているので、空いてる部屋って少ないんですよ。」
たしかに、良い物件だ。ただ、部屋自体は狭い。作業場はあるが使い勝手はよくなさそうだ。
「そうなんですね。この家は家賃どれくらいですか。」
「月に20万PYNです。」
世間一般的に給料の3分の1くらいが家賃の相場らしい。給与も50万PYNあるし、冒険で得た素材を売れば全然払えないことはない。
「なるほど。わかりました。次の物件お願いします。」
2軒目も内見すると1軒目よりも安く広いが、作業場がない。作業場を作ろうとすれば作れるだろうが、火気厳禁らしい。
「これだったら1軒目のほうが良さそうです。3軒目行きましょう。」
「その、実はですね。3軒目案内するにあたって説明しなければならないことがありまして。」
歩きながらエリシャが説明してくれるが、なんだろう。歯切れが悪い。
「まあ見てもらえば分かると思いますが、俗に言う事故物件といいますか…今まで借りた3代のオーナーさんが不慮の事故や体調不良になって、すぐに解約しておりまして。ずっと空き家になっているんです。」
建物の前に着く。たしかに立派な建物だが、すごくどんよりした雰囲気を感じる。庭もあり立派な建物だが誰の手も入っていないのだろう。雑草が一面に生えている。
「もともと貴族が作った建物なので作りはしっかりしていますが、すごい雰囲気ですね。寒気がします。案内しておいて恐縮ですが、カインさんこの建物は辞めておいたほうがいいです。」
とにかく入って中を見てみないことには何も分からない。
室内に入るとすごく奇麗な建物のはずだが、床一面埃かぶっていて、窓を開けて換気をしてもどんよりした感じは取れない。
「2階のここがマスタールームです。カインさん悪いことは言いません。この建物やばいですよ。」
ミントさんが不安そうな顔をしている。嫌な気配は2階のマスタールームからしているみたいだ。この部屋を開ければ原因が分かるだろう。
「不安ならここで待機していてください。中を見てきます。」
部屋を開けると、半透明で貴族みたいな格好をした男の幽霊が見える。
「カインさん。おばけです。怖いです。呪われちゃいます。出ましょう。」
「ミントさん、エリシャさんは扉の外で待機していてください。」
「…はい。」
観察すると瘴気が幽霊の周りを漂っている。これは普通に生活していたら心身ともに病んでしまうだろう。
幽霊が魔物と違うところは攻撃してこないところだ。攻撃はしてこないから普通の人には見えないし気が付けない。それはそれでたちが悪い。
ずっと住んでいると体調不良になるのもしょうがない。
『ニクイ。ニクイ』
貴族の怨念がここに居座ってしまっているようだ。これは厄介な幽霊だ。1件目に決めてもいいのだが、この物件がいい物件なのは間違いない。
「すまないが、ここはあなたの居るべき世界ではない。浄化させてもらおう。」
「ホワイトアウト」
光の呪文が幽霊を包む。
「ギュエエエエエエ」
幽霊には光の呪文が効果的だ。物理攻撃しても当たるわけない。
だが、これで終わりだ。
「アァァ……ありがとう。」
断末魔が聞こえち。幽霊が見えなくなった。
浄化できたのだろう。
「安らかに眠ってほしい。」
幽霊を浄化するとどんよりとした嫌な雰囲気を感じなくなった。
これで大丈夫だろう。
扉を開け、エリシャに契約すると伝えよう。
「エリシャさん。この屋敷借りさせてください。」
「えっ、ってこの屋敷でいいんですか。」
「はい。浄化もできましたし、もう悪さはしないでしょう。広さも申し分ないです。この建物おいくらですか。」
ちょっと待って下さい。と言いながらエリシャは書類に目をおとす。
「この建物は月10万PYNです。」
なるほど。お買い得だ。相場の5分の1くらいだろうか。
「ぜひこの物件でお願いします。さっそく契約させてください。」
商会に戻り、契約書にサインする。掃除をする必要はあるが、すごく良い物件に出会えた。
「はい。こちらで契約完了です。鍵をお渡ししますね。今日から住めますよ。」
「エリシャ。ありがとう。すごく気に入ったよ。」
「お礼を言うのはこちらのほうです。あの物件、ミステル商会が持ち主なのですが、借りてくれるお客様がいなかった物件だったので嬉しいです。浄化までしてもらったので契約金もいりません。水も電気も使えますので今日から住めますよっ。また何かあったらミステル商会、エリシャまでご連絡ください。」
◇
エリシャさんと握手をしてミステル商会を出る。もうじきに日も沈む。
「ミントさん今日はありがとうございました。おかげさまで家が見つかりました。」
「いえ~わたしは何もしていませんよ。ただの付き添い人ですっ。」
「いい物件に出会えたのもミントさん、メンゼフさんのおかげです。お礼と言ってはなんですが、ご飯でも行きませんか。ご馳走をさせてください。ちょうどおなかも減ってきましたし。」
「それはグッドアイディアですねっ。明けの明星に行きましょう! あそこは美味しいですからっ! 」
明けの明星に向かう。明けの明星はギルド御用達の食事処だ。帝国一美味しいと言っても過言ではない。早く行かないと席がうまってしまう。
商会から明けの明星に向かうために細い路地を使う。治安は良くないが時間はかなり短縮できる。
路地を進むと向かい側から走ってきた少女とぶつかりこけたみたいだ。
マントで全身を隠している少女がこちらに話しかける。
「ごめんなさい。急いでいて。おけがはありませんか。」
「いやぜんぜん大丈夫だ。こちらこそ急いでいるのに邪魔をしてすまなかった。」
カインは倒れた少女に手を差し伸べる。マントで目の下まで隠すなんて訳ありだろうか。
「いえ。大丈夫です。失礼しますね。」
早々に少女はこの場を去ろうとする。
「いたぞあそこだ。」
前から男3人が走ってくる。状況を見るに、この少女を追いかけているのだろう。
「おい兄ちゃん。痛い目にあいたくなかったらそこの女をわたしな。」
「おいおい。そんなことを言われて渡すわけないだろ。何があったんだ。」
理由なんて説明するわけねえだろっ。と言いながら先頭の男が殴りかかってくる。
帝国の治安は良いと言われているが、暴漢がいるなんて治安は良くないんじゃないかと思う。ミントさんもいる手前、逃げることは不可能だろう。この場は制圧するしかない。
男が殴って来た。後ろに体をそらし躱す。
男が体勢を崩したところで、みぞおちに膝をたたきこむ。
男はグエッと声を上げ倒れ込んだ。
「まだやるかい。この男みたいになりたかったら相手になる。」
2人の暴漢はお互いに目を合わせる。どうしようか悩んでいるようだ。
「これだけ騒ぎを起こせばじきに人が集まってくると思うが。撤退するなら今のうちだ。」
カインの戦う姿を見て、戦況は不利と考えたのだろう。二人は振り返り、逃げ出そうとする。
「逃げるなら。のびてる男も連れていけよ。」
憲兵に男たちをわたすことも考えたが、このまま男たちと戦うとミントさんや少女が傷つくリスクを考えると逃がすのがベターだろう。
二人が男をかかえ去っていった。良かった。もし武器を使われていたら誰かしらを殺すことでしかこの場を無傷で切り抜けられなかっただろう。
無駄な殺生は避けたい。
「お兄さん、ありがとうございました。助かりました。」
後ろにいる少女が話しかけてくる。マントを肩にかけ直し素顔が明らかになる。
透き通ったサラサラの銀色の髪。整った顔。宝石のような銀色の目。
まさしく貴族の娘だろうか。
「いや。お礼は大丈夫。キミも危ない道は通らないようにね。何されても文句は言えないよ。」
「…そっそうですね。気をつけます。お礼をしたいので、お兄さん名前を聞いてもいいですか。」
「カインだ。お礼は大丈夫だから。何もしてないからね。日も沈むし気をつけて帰りなよ。」
帝国の時計塔を見あげて、もうこんな時間と少女がつぶやいた。
お辞儀をして少女は走り去っていった。
◇
明けの明星に着いた。どうやら席は空いているみたいだ。ギリギリセーフと言ったところか。
店員さんに今日のおすすめを聞いて適当に注文する。
帝国ビールでミントさんと乾杯する。
「今日は付き合っていただき、ありがとうございました。」
「いえ~わたしも楽しかったです。それにカインさんとデートできてよかったです。」
「でッデートですか。何もしていませんが、楽しんでもらえたなら嬉しいです。」
お礼と言ってはなんですが、さっき露天で買った髪留めをプレゼントさせてくださいと言いカインはミントに金色の髪留めを渡す。
「え~すごく嬉しいです。さっそく付けてもらっていいですか。」
「ミントさんに似合いそうだと思ったのでこれにしたんです。さっそく着けますね。」
ミントの髪に髪留めを着けてあげある。
そういえば、妹にも髪留めをつけてくれってよくせがまれてたな。
「ありがとうございます。嬉しいです~」
手鏡を見ながら嬉しそうにミントが答える。
「喜んでくれて良かったです。料理もきたので冷めないうちに食べましょうか。」
お酒も入り、美味しいご飯をたらふく食べる。お酒が入ると話も盛り上がる。
「それにしてもカインさんって、いろいろな事件に巻き込まれる体質ですか。こんなことってあります?幽霊に暴漢なんて聞いたことがないですよっ。 」
ミントさんはだいぶ酔っているのだろう。顔を真赤にしながら話しかけてくる。
巻き込まれ体質…ぐうの音も出ない。
「たしかに、昔から事件に巻き込まれることも多かったな。体質なのかな。」
「体質なのか、カインさんが良い人なのか。まぁそこがカインさんの魅力ではありますけど。」
「まあ無事だったし、良いだろう。ミントさんもかわいいんだから用心してくださいね。」
そういうところがずるいんです。とミントさんがボソリとつぶやいた。
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「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
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勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
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