恋愛リベンジャーズ

廣瀬純七

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二日目の現実

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 駅へ向かう道は、朝の光で満ちていた。

 純は少し早足で歩きながら、バッグの中でスマホと定期の位置を確かめる。さっきまでの気分は悪くなかった。メイクもうまくいったし、服のシルエットも鏡で見たときより自信が持てた。

 ――今日は、ちゃんとした一日になる。

 そう思っていた、その時だった。

 下腹部の奥に、きゅっとした痛みが走る。

 「……あ」

 立ち止まるほどではない。でも、はっきりとした違和感。
 昨日より、重い。

 二日目。
 スマホで調べた言葉が、嫌でも頭に浮かぶ。

 歩き出すと、じわじわと痛みが広がる。腰の奥が鈍く、内側から引っ張られるような感覚。息を整えようとしても、足取りが自然と遅くなる。

 「……これが、二日目か」

 純の身体で、拓也の意識が現実を理解していく。
 知識としては知っていた。
 でも、実感はまるで違う。

 駅前が見えてきたところで、もう一度、強い波が来た。

 「……無理、だな」

 小さく呟いて、歩道の端に寄る。
 額に、うっすら汗が滲んでいるのが分かる。

 ――これで満員電車は、きつい。

 仕事のことが頭をよぎる。
 今日の予定。
 引き継ぎ。
 迷惑をかけるかもしれないという不安。

 でも同時に、昨夜考えたことも浮かんだ。

 無理しない。
 ちゃんと、自分の状態を認める。

 これは、逃げじゃない。

 スマホを取り出し、会社の連絡先を開く。
 少し迷ってから、欠勤の連絡を入れた。

 「……お休みします」

 送信した瞬間、肩の力が抜ける。

 続けて、拓也とのトーク画面を開く。
 今すぐ送る必要はないかもしれない。
 でも、伝えておきたかった。

 《ごめんね、二日目でちょっと辛くて、今日は仕事お休みすることにした》

 ハートは付けず、でも正直に。

 送ってから、ゆっくり息を吐く。

 駅に向かうはずだった足は、自然と家の方向へ向き直っていた。
 さっきまで明るく見えていた朝の景色が、少しだけ違って見える。

 弱くなったわけじゃない。
 ちゃんと、自分の状態を選んだだけだ。

 純はそう自分に言い聞かせながら、ゆっくりと来た道を引き返した。
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