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ショッピングモール
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結衣の車は、郊外のショッピングモールの広い駐車場へとゆっくり入っていった。
「やっぱ週末は混むね」
ハンドルを握りながら結衣が言う。
純は助手席でシートベルトを外し、フロントガラス越しにずらりと並ぶ車を眺めていた。
「でも天気いいし、来て正解だったね」
今日は二人とも、朝にしっかりメイクをしてきた。
結衣は少し大人っぽく、純はいつもより柔らかく。
鏡の前で並んだ自分たちを思い出し、自然と口元が緩む。
車を停め、ドアを開けたその瞬間だった。
少し離れた列に停まっていた車のドアが、ほぼ同時に開く。
「……あれ?」
結衣が、目を細めた。
「ねえ純、あれ……陽菜じゃない?」
その名前を聞いた瞬間、純の心臓が一拍、遅れて鳴った。
視線を向けると、確かにそこに中村陽菜がいた。
カジュアルな服装で、楽しそうにスマホをポケットにしまいながら車を降りてくる。
――なんで、ここに?
そう思った次の瞬間。
運転席側のドアが開き、見覚えのある背の高い男性が姿を現した。
「あっ……」
結衣が小さく声を上げる。
「拓也と一緒だよ」
純の喉が、きゅっと鳴った。
拓也だった。
私服姿で、仕事の時より少しラフな雰囲気。
まさか、こんな場所で、こんな形で会うとは思っていなかった。
拓也はまだこちらに気づいていない。
陽菜は、拓也に小走りで駆け寄った。
そして、ためらいもなく、拓也の腕に自分の腕を絡めた。
「……」
空気が、ぴしりと固まった気がした。
結衣の隣で、はっきりと舌打ちが聞こえた。
「……ちょっと」
低い声で結衣が言う。
「私、ちょっとあの子ぶん殴って来るね!」
本気か冗談か分からない目で、結衣は一歩踏み出そうとする。
純は反射的に、結衣の腕を掴んだ。
「やめて」
思ったより、はっきりした声が出た。
結衣が驚いて振り返る。
「純?」
純は、胸の奥でざわつく感情を押さえ込みながら、ゆっくりと言った。
「そんなことしなくても、大丈夫よ」
自分でも不思議なくらい、声は落ち着いていた。
「……拓也を、信用しているから」
その言葉を口にした瞬間、胸の奥がすっと静かになった。
結衣は一瞬、言葉を失ったように純を見る。
「……ほんとに?」
「うん」
純は小さく頷いた。
正直、まったく動揺していないわけじゃない。
陽菜が腕を組んだ瞬間、心臓は確かに強く跳ねた。
でも。
拓也のことを思い浮かべると、不思議と「大丈夫だ」と思えた。
彼は、そんな軽い気持ちで人を裏切る人じゃない。
それに――
自分がここで感情的になっても、何も良くならない。
結衣は腕を組み、ふうっと大きく息を吐いた。
「……純がそう言うなら」
まだ納得しきれていない様子だったが、それ以上は何も言わなかった。
その時、拓也がこちらに気づいた。
一瞬、目を見開き――
すぐに、困ったような、驚いたような表情になる。
「……純?」
拓也は陽菜の腕を、さりげなくほどきながら、こちらへ歩いてくる。
その仕草を見て、純の胸の奥で何かがほどけた。
――ああ。
大丈夫だ。
結衣は小さく鼻を鳴らす。
「ほらね」
純は、まだ少しだけ残るざわめきを胸に抱えながらも、静かに拓也の方を見つめた。
信じるって、
不安がないことじゃない。
不安があっても、
それでも相手を選ぶことなんだ。
そう思いながら、純はゆっくりと一歩、前に出た。
「やっぱ週末は混むね」
ハンドルを握りながら結衣が言う。
純は助手席でシートベルトを外し、フロントガラス越しにずらりと並ぶ車を眺めていた。
「でも天気いいし、来て正解だったね」
今日は二人とも、朝にしっかりメイクをしてきた。
結衣は少し大人っぽく、純はいつもより柔らかく。
鏡の前で並んだ自分たちを思い出し、自然と口元が緩む。
車を停め、ドアを開けたその瞬間だった。
少し離れた列に停まっていた車のドアが、ほぼ同時に開く。
「……あれ?」
結衣が、目を細めた。
「ねえ純、あれ……陽菜じゃない?」
その名前を聞いた瞬間、純の心臓が一拍、遅れて鳴った。
視線を向けると、確かにそこに中村陽菜がいた。
カジュアルな服装で、楽しそうにスマホをポケットにしまいながら車を降りてくる。
――なんで、ここに?
そう思った次の瞬間。
運転席側のドアが開き、見覚えのある背の高い男性が姿を現した。
「あっ……」
結衣が小さく声を上げる。
「拓也と一緒だよ」
純の喉が、きゅっと鳴った。
拓也だった。
私服姿で、仕事の時より少しラフな雰囲気。
まさか、こんな場所で、こんな形で会うとは思っていなかった。
拓也はまだこちらに気づいていない。
陽菜は、拓也に小走りで駆け寄った。
そして、ためらいもなく、拓也の腕に自分の腕を絡めた。
「……」
空気が、ぴしりと固まった気がした。
結衣の隣で、はっきりと舌打ちが聞こえた。
「……ちょっと」
低い声で結衣が言う。
「私、ちょっとあの子ぶん殴って来るね!」
本気か冗談か分からない目で、結衣は一歩踏み出そうとする。
純は反射的に、結衣の腕を掴んだ。
「やめて」
思ったより、はっきりした声が出た。
結衣が驚いて振り返る。
「純?」
純は、胸の奥でざわつく感情を押さえ込みながら、ゆっくりと言った。
「そんなことしなくても、大丈夫よ」
自分でも不思議なくらい、声は落ち着いていた。
「……拓也を、信用しているから」
その言葉を口にした瞬間、胸の奥がすっと静かになった。
結衣は一瞬、言葉を失ったように純を見る。
「……ほんとに?」
「うん」
純は小さく頷いた。
正直、まったく動揺していないわけじゃない。
陽菜が腕を組んだ瞬間、心臓は確かに強く跳ねた。
でも。
拓也のことを思い浮かべると、不思議と「大丈夫だ」と思えた。
彼は、そんな軽い気持ちで人を裏切る人じゃない。
それに――
自分がここで感情的になっても、何も良くならない。
結衣は腕を組み、ふうっと大きく息を吐いた。
「……純がそう言うなら」
まだ納得しきれていない様子だったが、それ以上は何も言わなかった。
その時、拓也がこちらに気づいた。
一瞬、目を見開き――
すぐに、困ったような、驚いたような表情になる。
「……純?」
拓也は陽菜の腕を、さりげなくほどきながら、こちらへ歩いてくる。
その仕草を見て、純の胸の奥で何かがほどけた。
――ああ。
大丈夫だ。
結衣は小さく鼻を鳴らす。
「ほらね」
純は、まだ少しだけ残るざわめきを胸に抱えながらも、静かに拓也の方を見つめた。
信じるって、
不安がないことじゃない。
不安があっても、
それでも相手を選ぶことなんだ。
そう思いながら、純はゆっくりと一歩、前に出た。
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