リアルフェイスマスク

健一からのプロポーズ

玲奈としての生活にすっかり馴染んだある日、美咲が玲奈にこう言った。  

「今度の週末、兄と一緒にご飯でもどう？」  

美咲の兄、健一は玲奈(隆司)の友人だった。しかし女性になった自分がどんな印象を与えるのか不安もあったが、自分が隆司だったことは隠して一人の女性の玲奈として美咲が大切に思っている兄に会うことにした。  

「もちろん。楽しみにしてるわ。」  

***

週末、美咲の自宅で健一と対面した玲奈は少し緊張していた。彼は笑顔を浮かべながらも観察するような視線を玲奈に向けていた。だが玲奈が健一の友人の隆司が変身した姿だとは全く気付いていなかった。

「美咲がいつも話してた親友の玲奈さんだね。初めまして。」  
健一は手を差し出し、玲奈は少し緊張しながらそれを握った。  
「初めまして。玲奈です。お噂は美咲から聞いています。」  

食事中、健一は玲奈に対して好奇心を隠さず、いくつか質問を投げかけた。仕事のこと、趣味のこと、そして美咲との友情について。玲奈はその場の雰囲気に気を使いながらも、自然体で答えた。  

健一はやがて微笑み、言った。  
「美咲が信頼する理由がよく分かったよ。玲奈さん、本当に素敵な人だね。」  

その言葉に美咲も満足そうに頷き、玲奈も少しホッとした。  

***

その後、健一とは何度か美咲を交えて会う機会が増えた。玲奈としての自分が健一に認められつつあることを感じ、彼女の心にも少しずつ親近感が芽生えていた。だが、そんなある日、健一から一人で食事に誘われたとき、玲奈は戸惑った。  

「私に？」  
「そう。玲奈さんともっと話してみたいんだ。気軽に付き合ってくれないかな。」  

玲奈は迷ったが、美咲の兄であり、自分を信頼してくれている相手を無下にはできない。結局、その誘いを受け入れた。

***

約束の夜、健一は落ち着いた雰囲気のレストランで玲奈を迎えた。普段とは異なり、二人きりで話す健一はより柔らかい表情を見せ、玲奈をリラックスさせようと心を砕いているのが分かった。  

「玲奈さん、少し驚くかもしれないけど、君に言いたいことがある。」  

食事の終盤、健一は真剣な表情で切り出した。玲奈はその言葉に胸の鼓動が速くなるのを感じた。  

「美咲の親友として知り合ったけど、君と過ごす時間が増えるたびに、僕は君に惹かれていることに気づいた。玲奈さん、僕と結婚してくれないか？」  

一瞬、時が止まったように感じた。健一の言葉の意味を完全に理解するまで、玲奈の脳内は真っ白だった。  

「け、結婚……？」  

健一は頷き、さらに言葉を続けた。  
「君がどんな背景を持っていても、僕にとってそれは関係ない。君の優しさや芯の強さ、そして美しさに僕は心を奪われたんだ。」  

玲奈の胸に複雑な感情が渦巻いた。かつては隆司として彼の友人だったこと、美咲の親友としての関係、そして今の玲奈としての自分。その全てが入り混じり、どう答えればいいのか分からなかった。  

「健一さん……その、気持ちは本当に嬉しいわ。でも……」  
玲奈は言葉を探しながら続けた。  
「私には話さなければならないことがあるの。」  

健一は真剣な目で玲奈を見つめた。  
「どんなことでも構わない。僕は君を知りたいんだ、玲奈。」  

玲奈はその視線に圧倒されながらも、自分の秘密を明かす覚悟を決めた。この瞬間を避け続けるわけにはいかなかった。  

***

その夜、玲奈は自分の過去を語り始めた。健一がその事実をどう受け止めるかは分からなかったが、彼の誠実さに賭けるしかなかった。  

彼の返答、そしてその後の二人の関係がどうなるのか――玲奈の胸には、期待と不安が入り混じっていた。

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