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私は最強!
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夕暮れの帰り道。制服の袖を風が優しくなでる中、咲良がふいに言った。
「ねえ、今日もカラオケに行かない?」
薫は驚いた顔を向ける。
「……また? 昨日も行ったよな?」
「うん。でも……なんだか今日はね、香織が戻ってくるような気がするの」
咲良はまっすぐな目で微笑んでいた。その予感のような言葉に、薫の胸の奥がふとざわつく。
「……わかった。行こう」
自然と、頷いていた。
◆
カラオケボックスに入ると、昨日と同じ部屋に案内された。まるで時間だけが二人を待っていたかのようだった。
咲良がドリンクを頼みながら、ぽつりとつぶやく。
「香織って、よくadoの『私は最強』歌ってたよね。歌うとすごく元気になるって言ってたよね!」
「ああ……知ってる。あいつの“勝負曲”だって言ってたな!」
リモコンを手に取った薫は、迷いなく検索バーに文字を打ち込んだ。
──『私は最強』 Ado。
イントロが流れ始める。力強く、それでいてどこか孤独を抱えたようなメロディ。
(……もし、香織が戻ってくるなら……絶対にこの曲だ!)
香織の体の薫がマイクを手に取ったその瞬間――
「――待って」
声がした。
澄んだ、だけどどこか茶目っ気のある、よく知っている声。
「……えっ?香織?」
隣にいた咲良が、はっとして香織を見た。
そして――
「さあ、怖くはない、、、、、私は最強~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
香織の声が、マイクからあふれた。
歌い出したのは間違いなく“香織”だった。身振り、声のトーン、表情、全てが彼女そのものだった。
(……香織が戻ってきた!)
咲良が目を見開き、涙ぐみながら手を叩いた。
曲が終わると、香織はマイクをそっと置いて、少しだけ気まずそうに笑った。
「……ごめんなさい、二人とも」
「え……?」
「本当はね、ずっと隠れていたの。でも、ちょっといたずら心が出ちゃって……“いないフリ”しちゃったの」
薫と咲良は目を丸くした。
「最初は一日だけのつもりだったの。でも薫があたしのふりを頑張ってくれてるのが面白くて……つい三日も……」
「おい、お前なぁ……!」
薫が深くため息をつく。
「本当にごめんね。でも、こうして二日も連続でカラオケに来たてあの曲を入れられたら、さすがにもうジッとしてはいられなくなっちゃった。嬉しかったし、ちょっと……泣きそうだった」
咲良が苦笑して、ぽつりと呟いた。
「……やっぱりあなたは“最強”ね、香織!」
「へへっ、でしょ?」
香織がいたずらっぽく笑ったその顔を見て、薫も思わず笑ってしまった。
ようやく香織が帰って来て二人は心のどこかが深くほっとした。
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「ねえ、今日もカラオケに行かない?」
薫は驚いた顔を向ける。
「……また? 昨日も行ったよな?」
「うん。でも……なんだか今日はね、香織が戻ってくるような気がするの」
咲良はまっすぐな目で微笑んでいた。その予感のような言葉に、薫の胸の奥がふとざわつく。
「……わかった。行こう」
自然と、頷いていた。
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カラオケボックスに入ると、昨日と同じ部屋に案内された。まるで時間だけが二人を待っていたかのようだった。
咲良がドリンクを頼みながら、ぽつりとつぶやく。
「香織って、よくadoの『私は最強』歌ってたよね。歌うとすごく元気になるって言ってたよね!」
「ああ……知ってる。あいつの“勝負曲”だって言ってたな!」
リモコンを手に取った薫は、迷いなく検索バーに文字を打ち込んだ。
──『私は最強』 Ado。
イントロが流れ始める。力強く、それでいてどこか孤独を抱えたようなメロディ。
(……もし、香織が戻ってくるなら……絶対にこの曲だ!)
香織の体の薫がマイクを手に取ったその瞬間――
「――待って」
声がした。
澄んだ、だけどどこか茶目っ気のある、よく知っている声。
「……えっ?香織?」
隣にいた咲良が、はっとして香織を見た。
そして――
「さあ、怖くはない、、、、、私は最強~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
香織の声が、マイクからあふれた。
歌い出したのは間違いなく“香織”だった。身振り、声のトーン、表情、全てが彼女そのものだった。
(……香織が戻ってきた!)
咲良が目を見開き、涙ぐみながら手を叩いた。
曲が終わると、香織はマイクをそっと置いて、少しだけ気まずそうに笑った。
「……ごめんなさい、二人とも」
「え……?」
「本当はね、ずっと隠れていたの。でも、ちょっといたずら心が出ちゃって……“いないフリ”しちゃったの」
薫と咲良は目を丸くした。
「最初は一日だけのつもりだったの。でも薫があたしのふりを頑張ってくれてるのが面白くて……つい三日も……」
「おい、お前なぁ……!」
薫が深くため息をつく。
「本当にごめんね。でも、こうして二日も連続でカラオケに来たてあの曲を入れられたら、さすがにもうジッとしてはいられなくなっちゃった。嬉しかったし、ちょっと……泣きそうだった」
咲良が苦笑して、ぽつりと呟いた。
「……やっぱりあなたは“最強”ね、香織!」
「へへっ、でしょ?」
香織がいたずらっぽく笑ったその顔を見て、薫も思わず笑ってしまった。
ようやく香織が帰って来て二人は心のどこかが深くほっとした。
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