兄になった姉

廣瀬純七

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「兄になった姉」

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僕の姉、真奈美は小さい頃から誰もが憧れるような、しっかり者の姉だった。家事はもちろん、勉強もスポーツも得意で、近所の人たちからも「立派な娘さんだね」と言われていた。そんな姉が、ある日を境に変わってしまった。

それは、友達の浩介が趣味でやっているという「催眠術」を僕たち兄妹に試したことから始まった。浩介は「簡単な暗示程度ならできる」と言っていたし、興味本位で僕も姉も受けてみることにしたのだ。最初は「手が上がらなくなる」とか「好きな食べ物が嫌いになる」など軽いものばかりだった。しかし浩介は少し興奮してきたのか、「今度は面白いことを試してみる」と言い出した。そして姉に向かって言ったのだ。

「真奈美さん、あなたは男だ。弟の健太より男らしい兄なんだ。」

それがきっかけで、真奈美の意識は変わってしまった。目を開けると、彼女は僕をじっと見つめて「弟よ、今日から俺を兄ちゃんと呼べ」と言ったのだ。

最初は冗談かと思ったが、どうやら本気らしい。姉はその日から自分のことを「俺」と呼び始め、家の中での振る舞いもどんどん男らしくなっていった。髪型もボーイッシュにし始め、服装も一変。姉は今まで好んでいた可愛い服を着るのをやめ、ズボンやシャツを着こなすようになった。

さらに驚いたのは、その変化が学校でも続いていたことだ。クラスメートに対しても「俺」と言い、女友達との距離感も以前より少しだけ離れたものに変わっていた。これまで姉を慕っていた後輩たちは最初は戸惑っていたが、「なんかかっこよくなった」と評判が上がり、次第に新しい真奈美を受け入れていった。

僕は最初こそ不安だったが、今では少しずつ慣れてきた。姉が男のように振る舞う姿には驚かされることもあるけど、それはそれで頼もしい兄貴ができたみたいで悪くない気もする。時には一緒に筋トレをしたり、スポーツで競い合ったり、以前よりもさらに仲が深まった気がするのだ。

催眠術を解けば元の真奈美に戻るはずだが、今の「兄」のような姉が僕にとって大切な存在になりつつある。もしかしたら、このままでもいいのかもしれない。
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