兄になった姉

廣瀬純七

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「変わりゆく姉」

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姉の真奈美が催眠術で自分を男だと思い込むようになってから、少しずつ、奇妙な変化が現れるようになった。最初は、ただの思い込みだと思っていた。男っぽい口調や態度になり、服装もボーイッシュなものに変わっていった。僕たちはそれを見て楽しんでいたし、姉も自分の変化を面白がっているように見えた。

けれど、ある日、僕は不思議なことに気がついた。姉が腕まくりをして作業をしているのを見た時、以前よりも筋肉が少し目立っている気がしたのだ。姉は今まであまり運動をしていなかったのに、まるで毎日トレーニングをしているような体つきになりつつあるように見えた。

「ねえ、真奈美姉ちゃん、最近筋肉ついてきたんじゃない?」と僕が言うと、姉は笑って腕を見せてくれた。

「そうか?なんか前より力が強くなった気がするんだよな。」と、満足そうに微笑んだ。

それから数週間後、姉の変化はさらに進んだ。声が少し低くなり、体つきも以前よりも角張ったように見える。顔立ちもほんの少しずつ変わり始めていて、幼い頃から見慣れた姉の顔が、まるで見知らぬ誰かのように思える瞬間が増えた。

そんなある日、僕は姉と一緒に夕食をとっていた。いつものように談笑していたのだが、ふとした瞬間、姉の手が僕の手と比べて明らかに大きくなっていることに気づいた。手のひらが分厚くなり、指も太く力強くなっている。僕がそのことを指摘すると、姉も驚いて手を見つめた。

「本当だな……なんか、いつの間にこんな風になったんだろう?」と、少し不安そうな表情を見せたものの、姉はすぐにいつものように「まあ、男だからな」と笑い飛ばした。

姉は次第に男性っぽい骨格へと変化していき、体力も以前とは比較にならないほど増していった。元々小柄だった彼女が僕よりも背が高くなり、家の中でまるで本物の兄のように振る舞うようになった。以前なら二人で買い物に出かけると、周りからは「仲の良い兄妹」と言われていたのが、最近では「頼りになりそうなお兄さんだね」と言われることが増えていた。

日常の中で少しずつ失われていく「姉」の面影に、僕は戸惑いを隠せなかった。しかし、姉はどこか嬉しそうで、新しい自分を楽しんでいるように見えた。

このまま姉が完全に男性化してしまうのか、それともいつか元に戻るのかはわからない。けれど、どんな姿になっても、姉は姉。これからも大切な家族として、変わりゆく姉のそばにいたいと思う。
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