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女子トーク
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昼休み。愛(雄太)は、屋上でこっそりパンをかじっていた。
静かで風通しのいいこの場所は、入れ替わって以来“秘密の避難所”となっている。だが、今日の彼は油断していた。
「……あれ? 愛じゃん。ここにいたの?」
「うおあっ!? ……あ、美優……」
突然現れたのは、中島愛の親友・美優。手には二人分のアイスティー。
「ほら、お昼食べるって言ってたじゃん。何逃げてんの?」
「い、いや……ちょっとひとりで考え事というか……」
「また猫? もー、ほんと重症だね。はい、飲みなよ」
差し出されたアイスティーを受け取りつつ、雄太は内心叫んだ。
(やばい……完全にフラグ立った……女子トーク来る!)
その予感は、的中する。
---
「最近さぁ、なんか男子のこと、ちゃんと話してなくない?」
美優はティーをひと口飲んでから、こちらを見つめた。
「えっ、男子?」
「うん。愛ってさ、あんなにいろんな男子に告られてきたのに、全然その話しないじゃん。で、木村くんとは最近よく話してるし……ぶっちゃけ、気になってるでしょ?」
「えっ!? いや、え? あ、あの、ええええ~~~!?」
顔が真っ赤になった愛(雄太)は、慌ててパンを喉に詰まらせてむせた。
(な、なんだこの話題!? お、俺は男だぞ!? 中身は男子高校生なんだぞぉぉぉ!?)
「図星っぽいねー、ふふふ♪」
美優はさらに身を乗り出してきた。
「てかさ、ぶっちゃけると、木村くんって“アリ”なわけ?」
「アリ!? えっ、な、何が!? どのレベルで!? 動物として!? 人間として!? 異性として!?」
「異性としてに決まってるじゃん! もう、焦りすぎでしょ~?」
(無理だ!! 完全に詰んでる!!)
と、ここで雄太は苦し紛れに一計を案じた。
「……あのさ、美優って……木村くんのことどう思う?」
「えっ? 私?」
「そ。ほら、私ばっかり質問されるのずるいし……逆に気になってたっていうか……」
(よし、話題を逸らせ! 美優に振って、あとは聞き役に徹する!)
だが、美優はニヤリと笑って言った。
「うーん、私は“ナシ”かな?」
「えっ、即答!?」
「なんかさ、あの人マジメなんだけどちょっと無頓着っていうか。髪も寝ぐせそのままだし。あと女子の扱い分かってないって感じ」
(うっ……耳が痛い……)
「でも、最近ちょっと雰囲気変わってきたよね。笑うようになったし。愛との関係が影響してるのかも?」
「え? あ、ああ……う、うん……」
「そーゆーの見ると、ちょっと羨ましくなるよね。いいなぁ、恋って」
そう呟いて、美優は少し寂しそうに笑った。
――その笑顔を見て、雄太の心が一瞬だけ、チクリと痛んだ。
(俺……女の子の友達にこんな顔されたこと、なかったな……)
「……あのさ、美優って……本気で好きになった人とか、いる?」
「え? 何、急に?」
「いや……気になって。なんか、お前……あ、違った、美優って、そういうのにちょっと詳しそうだから……」
「“お前”? いま“お前”って言った?」
「い、言ってない!! 気のせいっ!!」
「……あやしい~。もしかして、愛と木村くんと中身入れ替わってるとかじゃないよね?」
「ブッ……!? いやいやいやいやいや!! ナイナイナイナイ!!」
「冗談だってば~。そんなマンガみたいなことあるわけ……」
(あるんだよぉぉぉぉぉおおお!!!)
---
結局、話題はうまくすり抜けたように見えたが、美優は帰り際、ポツリとつぶやいた。
「でもさ、今の愛って、ちょっと男っぽくて……妙に優しいよね」
そして彼女は、少しだけ不思議そうな笑顔を浮かべて去っていった。
愛(雄太)は、手元のアイスティーを見ながらため息をついた。
(女子トーク、マジで命削られる……)
---
静かで風通しのいいこの場所は、入れ替わって以来“秘密の避難所”となっている。だが、今日の彼は油断していた。
「……あれ? 愛じゃん。ここにいたの?」
「うおあっ!? ……あ、美優……」
突然現れたのは、中島愛の親友・美優。手には二人分のアイスティー。
「ほら、お昼食べるって言ってたじゃん。何逃げてんの?」
「い、いや……ちょっとひとりで考え事というか……」
「また猫? もー、ほんと重症だね。はい、飲みなよ」
差し出されたアイスティーを受け取りつつ、雄太は内心叫んだ。
(やばい……完全にフラグ立った……女子トーク来る!)
その予感は、的中する。
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「最近さぁ、なんか男子のこと、ちゃんと話してなくない?」
美優はティーをひと口飲んでから、こちらを見つめた。
「えっ、男子?」
「うん。愛ってさ、あんなにいろんな男子に告られてきたのに、全然その話しないじゃん。で、木村くんとは最近よく話してるし……ぶっちゃけ、気になってるでしょ?」
「えっ!? いや、え? あ、あの、ええええ~~~!?」
顔が真っ赤になった愛(雄太)は、慌ててパンを喉に詰まらせてむせた。
(な、なんだこの話題!? お、俺は男だぞ!? 中身は男子高校生なんだぞぉぉぉ!?)
「図星っぽいねー、ふふふ♪」
美優はさらに身を乗り出してきた。
「てかさ、ぶっちゃけると、木村くんって“アリ”なわけ?」
「アリ!? えっ、な、何が!? どのレベルで!? 動物として!? 人間として!? 異性として!?」
「異性としてに決まってるじゃん! もう、焦りすぎでしょ~?」
(無理だ!! 完全に詰んでる!!)
と、ここで雄太は苦し紛れに一計を案じた。
「……あのさ、美優って……木村くんのことどう思う?」
「えっ? 私?」
「そ。ほら、私ばっかり質問されるのずるいし……逆に気になってたっていうか……」
(よし、話題を逸らせ! 美優に振って、あとは聞き役に徹する!)
だが、美優はニヤリと笑って言った。
「うーん、私は“ナシ”かな?」
「えっ、即答!?」
「なんかさ、あの人マジメなんだけどちょっと無頓着っていうか。髪も寝ぐせそのままだし。あと女子の扱い分かってないって感じ」
(うっ……耳が痛い……)
「でも、最近ちょっと雰囲気変わってきたよね。笑うようになったし。愛との関係が影響してるのかも?」
「え? あ、ああ……う、うん……」
「そーゆーの見ると、ちょっと羨ましくなるよね。いいなぁ、恋って」
そう呟いて、美優は少し寂しそうに笑った。
――その笑顔を見て、雄太の心が一瞬だけ、チクリと痛んだ。
(俺……女の子の友達にこんな顔されたこと、なかったな……)
「……あのさ、美優って……本気で好きになった人とか、いる?」
「え? 何、急に?」
「いや……気になって。なんか、お前……あ、違った、美優って、そういうのにちょっと詳しそうだから……」
「“お前”? いま“お前”って言った?」
「い、言ってない!! 気のせいっ!!」
「……あやしい~。もしかして、愛と木村くんと中身入れ替わってるとかじゃないよね?」
「ブッ……!? いやいやいやいやいや!! ナイナイナイナイ!!」
「冗談だってば~。そんなマンガみたいなことあるわけ……」
(あるんだよぉぉぉぉぉおおお!!!)
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結局、話題はうまくすり抜けたように見えたが、美優は帰り際、ポツリとつぶやいた。
「でもさ、今の愛って、ちょっと男っぽくて……妙に優しいよね」
そして彼女は、少しだけ不思議そうな笑顔を浮かべて去っていった。
愛(雄太)は、手元のアイスティーを見ながらため息をついた。
(女子トーク、マジで命削られる……)
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