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体育の授業
しおりを挟む午後の体育はバスケットボール。
グラウンドが使えない日だったため、男女に分かれて体育館でミニゲームが行われることになった。
「はーい、男子は右のコート、女子は左でペア作って~!」
体育教師・大野先生の掛け声に従って、生徒たちがぞろぞろと分かれていく。
雄太(in 美優)は内心、泣きそうだった。
(女子ジャージ、なんか軽い!ていうかこの体、ジャンプすると……やば……いろいろ……揺れる……!!!)
体の重心や可動域の違いに混乱しながら、周囲の女子たちに混じってストレッチをするが、足の開き方すら戸惑いが隠せない。
「……中島さん、なんか今日、動きがカクカクしてない?」
「そ、そーかな!? カラダが……固まってるだけ!」
(体の中身が“男”だなんて言えるわけないだろおおお!!!)
一方、男子側では。
「よっしゃー! 木村、今日ガードやれよ!」
「え、えっ、ちょ、ちょっと待っ──」
美優(in 雄太)は、男子の熱気とスピード感に一瞬でフリーズした。
(ムリムリムリムリ!!! なんでみんなバネか何か入ってるの!? ジャンプ高すぎ!!)
ドリブルが速い。ぶつかると痛い。何より汗くさい。
「ちょっとぉ! 男子って、当たり前のように肩ぶつけてくるのなに!? 女子なら即ファウルよ!?」
「お、おい木村、声高くね?」
「う、うるさい!! これが俺の本気モード!!」
ボールが回ってきても、反射的に両手で顔をかばってしまう。
「ああっ! ボール! ごめんっ!!」
「お前、今日ほんと変だぞ!? 熱でもあんのか!?」
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## 【休憩中──さらなるカルチャーショック】
水分補給の時間。
美優(in 雄太)はペットボトルを開ける手つきさえゴツくてびびり、
雄太(in 美優)は女子の輪に馴染めず、タオルで汗を拭くのにも気を使っていた。
「ちょっと中島さん、タオルの使い方……ワイルドじゃない?」
「えっ!? ど、どんなふうに?」
「いや、顔ゴシゴシしすぎ! 女子はもうちょいこう、ポンポンってするんだよ~」
(めんどくせぇぇぇぇ……!)
一方、美優(in 雄太)も男子の会話に必死で食らいつく。
「なぁ木村、お前胸派? 脚派?」
「え……っ!? あ、えぇ……っと……指……とか……?」
「……あいつ、マニアック路線いったな」
(終わった……何この文化……何この世界……)
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## 【試合再開──クライマックスの悲劇】
再び始まったゲーム。
最後の数分、女子のコートでは奇跡が起きた。
「中島さん、今日けっこう攻めてるね!」
「いや、あの、攻めてるっていうか、よく分かんないけど動けてるだけで──」
パス、シュート、ジャンプ。
気がつけば、雄太(in 美優)は女子の中でなぜかエースっぽくなっていた。
「やば、中島さん、今日イケメンじゃない?」
「えっ!? あっ、い、いや、そ、そんなことないし!」
(どっちにもバレそうで怖い!!!)
一方、男子側では──
「木村~! 最後決めろ!」
「うぉぉぉぉぉぉっ!!!」
──顔面でボールを受けて終了。
美優(in 雄太)は、そのまま床に突っ伏して絶叫した。
「こんな授業、二度と出たくないーーーーーー!!」
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