未来への転送

廣瀬純七

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戸惑うふたり

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二人はお互いの体で生活をするしかないと理解し、しばらくは未来の世界で入れ替わったまま過ごすことにした。リョウも沙織もお互いの体の感覚に慣れようと努力を始めたが、すぐに細かい違和感や戸惑いが押し寄せてきた。

「このヒールってどうやって歩くんだ…」リョウが沙織の体でつぶやきながら、ふらつく足取りで未来の街を歩いていると、沙織が彼の体でクスクスと笑った。「大丈夫、最初はみんなそんなものよ」と余裕を見せてから「それに、あなたはそのままの服でいいけれど、私はリョウのスーツがゆるすぎて動きにくいの」と愚痴をこぼした。

未来の街並みは10年前に比べて大きく変わっていた。ビルは空に向かってさらに高くそびえ、ホログラム広告が鮮やかに浮かび、街全体が発展した技術で覆われている。人々の暮らしもデジタル化され、紙も現金もほとんど使われていないようだった。そんな未来の生活に適応するのも、二人にとっては大きなチャレンジだった。

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しばらくして、リョウと沙織は、入れ替わったことで新たな視点からお互いを理解する機会に恵まれていることに気がついた。リョウは、これまで沙織が自分の内面をどれほどケアしていたかを実感した。たとえば、彼女が毎朝のメイクに時間をかけ、細かな所作を整え、出勤するまでにかなりの準備をしていることを、リョウは今まで知らなかった。また、街中で見られる視線や、相手がどのように接してくるかといった、女性ならではの感覚に対する意識も変わった。

一方で沙織も、リョウの体で生活する中で、彼が持つ日常の重圧や、言葉にしない不安や葛藤がわかるようになってきた。彼はいつも表には出さないが、職場での責任感や、将来の不安に対する悩みを胸の内に秘めていたことを、沙織は自分の体では感じ取れなかったのだ。

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そんな日々を過ごしていると、未来の科学者と連絡が取れるチャンスが訪れた。リョウと沙織は急いで科学者に会いに行き、事情を説明した。その科学者は彼らの話に興味を持ち、転送装置のバグを調査するため、特殊な機器を使用して詳細なデータを収集した。数日後、ついに科学者から「元の体に戻れる可能性がある」と伝えられた。

再び転送装置の前に立つ二人は、未来での生活を振り返りながら互いに向き合った。

「この経験がなかったら、私はきっとあなたがどんなに頑張っているのかも、どれほどの重荷を背負っているのかもわからなかったと思う」と沙織がリョウの体でしみじみと語ると、リョウも沙織の体で深くうなずいた。

「俺も、沙織がどれだけ自分を大切にし、周りの人に気を配っているのかが、やっと理解できた。これからはもっと支え合える気がする」と彼も答えた。

科学者が転送装置の準備を整え、再び転送が始まると、二人はゆっくりと目を閉じ、お互いの手をしっかりと握りしめた。そして次に目を開けた時、二人は元の体に戻っていた。

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未来での出来事を経験した二人は、以前よりもお互いの存在を大切に感じ、より深く結ばれていることを実感していた。未来の光景に別れを告げ、手を繋ぎながら歩き出す彼らの心の中には、もう一つの「未来」への思いが芽生えていた。
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