ビキニに恋した男

廣瀬純七

文字の大きさ
2 / 22

似合わないビキニ

しおりを挟む

木村博史は、自宅の全身鏡の前に立っていた。蛍光灯の白い光が浴室から漏れ、シンプルな部屋の中で彼の表情だけが妙に暗い。  

彼はスリムな体型だ。身長170cmで、日々のダイエットの努力もあって体脂肪率は低い。それでも――鏡に映る自分の姿を見て溜息をついた。  

試作品のビキニが体にしっかりフィットしているはずだった。鮮やかなターコイズブルーのデザイン。胸元には控えめなフリルがあしらわれ、腰には女性らしいラインを強調するリボンがついている。  

しかし、それを身につけた自分の姿を見れば見るほど、違和感が増すばかりだった。  

「全然似合わない……」  

声に出してみても、その事実は変わらない。博史の平坦な胸板、広めの肩幅、筋張った腕と足――どう頑張ってもこのビキニを美しく着こなす「理想の体」とは程遠かった。  

---

### **努力の影**  

博史はスリムな体を維持するため、日々厳しい食事制限をしていた。  
朝はプロテインと野菜ジュース、昼はささみとサラダ、夜は炭水化物を控えて少量のスープだけ。それに週3回のランニングと軽い筋トレを続けている。  

「これ以上、何をすればいいんだろう……」  

試作品のビキニを着る女性たちが、いかに華やかで美しいかを知っているだけに、そのギャップが胸を締めつけた。  

「やっぱり……骨格が違うんだよな。」  

鏡に映る自分をじっと見つめ、彼は自嘲気味に笑った。  

---

### **自分との向き合い**  

博史は試作品のビキニをそっと脱ぎ、ハンガーにかけた。  
「これじゃ、ただの自己満足だ。」  

しかし、その瞬間、胸の奥底から湧き上がる感情に気づく。  
(ただの自己満足でもいい。俺は、本当にこのビキニが似合う体になりたいんだ。)  

彼の頭には、また新たな思考が生まれていた。  
(何か方法があるはずだ……。女性らしい体を手に入れる方法が。)  

博史はその夜、インターネットでさまざまな情報を検索し始めた。医療技術からトレーニング法、さらには体型を女性らしく見せる特殊な衣装まで――自分にできるすべてを試す覚悟だった。  

**「このままじゃ終われない。」**  

彼の目には、いつになく真剣な光が宿っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

リアルメイドドール

廣瀬純七
SF
リアルなメイドドールが届いた西山健太の不思議な共同生活の話

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...