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似合わないビキニ
しおりを挟む木村博史は、自宅の全身鏡の前に立っていた。蛍光灯の白い光が浴室から漏れ、シンプルな部屋の中で彼の表情だけが妙に暗い。
彼はスリムな体型だ。身長170cmで、日々のダイエットの努力もあって体脂肪率は低い。それでも――鏡に映る自分の姿を見て溜息をついた。
試作品のビキニが体にしっかりフィットしているはずだった。鮮やかなターコイズブルーのデザイン。胸元には控えめなフリルがあしらわれ、腰には女性らしいラインを強調するリボンがついている。
しかし、それを身につけた自分の姿を見れば見るほど、違和感が増すばかりだった。
「全然似合わない……」
声に出してみても、その事実は変わらない。博史の平坦な胸板、広めの肩幅、筋張った腕と足――どう頑張ってもこのビキニを美しく着こなす「理想の体」とは程遠かった。
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### **努力の影**
博史はスリムな体を維持するため、日々厳しい食事制限をしていた。
朝はプロテインと野菜ジュース、昼はささみとサラダ、夜は炭水化物を控えて少量のスープだけ。それに週3回のランニングと軽い筋トレを続けている。
「これ以上、何をすればいいんだろう……」
試作品のビキニを着る女性たちが、いかに華やかで美しいかを知っているだけに、そのギャップが胸を締めつけた。
「やっぱり……骨格が違うんだよな。」
鏡に映る自分をじっと見つめ、彼は自嘲気味に笑った。
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### **自分との向き合い**
博史は試作品のビキニをそっと脱ぎ、ハンガーにかけた。
「これじゃ、ただの自己満足だ。」
しかし、その瞬間、胸の奥底から湧き上がる感情に気づく。
(ただの自己満足でもいい。俺は、本当にこのビキニが似合う体になりたいんだ。)
彼の頭には、また新たな思考が生まれていた。
(何か方法があるはずだ……。女性らしい体を手に入れる方法が。)
博史はその夜、インターネットでさまざまな情報を検索し始めた。医療技術からトレーニング法、さらには体型を女性らしく見せる特殊な衣装まで――自分にできるすべてを試す覚悟だった。
**「このままじゃ終われない。」**
彼の目には、いつになく真剣な光が宿っていた。
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