俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純七

文字の大きさ
4 / 29

昼休みの衝撃

しおりを挟む

昼休み、校舎裏のベンチで健太(咲良の体)と咲良(健太の体)はこそこそと話していた。他の生徒に怪しまれないよう、できるだけ静かにしているつもりだったが、話題が思わぬ方向に転がっていった。  

「ねえ、健太くん。」咲良(健太の体)が小声で切り出す。  

「ん?何?」  

「昨日、お風呂に入った?」  

健太(咲良の体)は一瞬、何を聞かれているのかわからずぽかんとしたが、すぐにうなずいた。「うん、入ったよ。だって汗かいてたし。」  

その瞬間、咲良(健太の体)の表情が険しくなった。  

「ちょ、ちょっと待って!何で勝手に入ったのよ!?」  

健太は驚いて目を見開いた。「え?だって、普通入るだろ?お風呂くらい……」  

「普通じゃないの!」咲良は声を抑えながらも怒りを露わにした。「あなたは私の体なのよ!勝手に裸をみるなんて、どういうつもり!?」  

「いやいやいや、俺だって自分の体と同じ感覚で動いてるんだぞ?そんなこと気にしてたら何もできないだろ!」  

「それとこれとは話が別よ!」咲良は顔を赤くして詰め寄る。「だいたい、ちゃんと許可を取るとか、遠慮するとか、そういう配慮が必要でしょ!」  

「許可って……お風呂だぞ?そんなの、いちいち相談しないといけないのかよ?」  

「当たり前じゃない!」  

---

### 言い争いからの気まずさ

二人の言い合いはしばらく続いたが、どちらも決定的な妥協点を見つけられないまま、次第に沈黙が訪れた。咲良は腕を組んで不機嫌そうにそっぽを向き、健太は頭をかきながら「めんどくさいな……」とぼやいた。  

「もういいわ。」咲良がため息をついた。「でも、これだけは覚えておいて。私の体なんだから、何をするにもちゃんと私に相談して。」  

「わかったよ……気をつける。」健太は少し申し訳なさそうに答えた。  

「それにしても……」咲良がぽつりとつぶやいた。「私があんたの体でお風呂入るなんて、考えたくもない。」  

「おい、それ俺のことディスってる?」  

「別に。」咲良はにやりと笑ったが、その表情には少しだけ柔らかさが戻っていた。  

---

### お互いの不安

その日の午後、二人は授業中にもお互いの「体」で過ごす不便さや違和感について考えずにはいられなかった。  

「俺だって、咲良の生活に慣れるの大変なんだよ……。」健太はぼんやりとノートを眺めながら思った。「これからどうなるんだろう。」  

一方で、咲良もまた心の中で同じことを考えていた。「こんな状況、どうやって乗り越えればいいの?でも……少しだけ面白いかも。」  

お互いにイライラしつつも、どこかで相手の生活に興味を抱き始めている自分に気づき、二人は少しだけ気まずくも前向きな気持ちを抱くのだった。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

ボディチェンジウォッチ

廣瀬純七
SF
体を交換できる腕時計で体を交換する男女の話

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...