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昼休みの衝撃
しおりを挟む昼休み、校舎裏のベンチで健太(咲良の体)と咲良(健太の体)はこそこそと話していた。他の生徒に怪しまれないよう、できるだけ静かにしているつもりだったが、話題が思わぬ方向に転がっていった。
「ねえ、健太くん。」咲良(健太の体)が小声で切り出す。
「ん?何?」
「昨日、お風呂に入った?」
健太(咲良の体)は一瞬、何を聞かれているのかわからずぽかんとしたが、すぐにうなずいた。「うん、入ったよ。だって汗かいてたし。」
その瞬間、咲良(健太の体)の表情が険しくなった。
「ちょ、ちょっと待って!何で勝手に入ったのよ!?」
健太は驚いて目を見開いた。「え?だって、普通入るだろ?お風呂くらい……」
「普通じゃないの!」咲良は声を抑えながらも怒りを露わにした。「あなたは私の体なのよ!勝手に裸をみるなんて、どういうつもり!?」
「いやいやいや、俺だって自分の体と同じ感覚で動いてるんだぞ?そんなこと気にしてたら何もできないだろ!」
「それとこれとは話が別よ!」咲良は顔を赤くして詰め寄る。「だいたい、ちゃんと許可を取るとか、遠慮するとか、そういう配慮が必要でしょ!」
「許可って……お風呂だぞ?そんなの、いちいち相談しないといけないのかよ?」
「当たり前じゃない!」
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### 言い争いからの気まずさ
二人の言い合いはしばらく続いたが、どちらも決定的な妥協点を見つけられないまま、次第に沈黙が訪れた。咲良は腕を組んで不機嫌そうにそっぽを向き、健太は頭をかきながら「めんどくさいな……」とぼやいた。
「もういいわ。」咲良がため息をついた。「でも、これだけは覚えておいて。私の体なんだから、何をするにもちゃんと私に相談して。」
「わかったよ……気をつける。」健太は少し申し訳なさそうに答えた。
「それにしても……」咲良がぽつりとつぶやいた。「私があんたの体でお風呂入るなんて、考えたくもない。」
「おい、それ俺のことディスってる?」
「別に。」咲良はにやりと笑ったが、その表情には少しだけ柔らかさが戻っていた。
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### お互いの不安
その日の午後、二人は授業中にもお互いの「体」で過ごす不便さや違和感について考えずにはいられなかった。
「俺だって、咲良の生活に慣れるの大変なんだよ……。」健太はぼんやりとノートを眺めながら思った。「これからどうなるんだろう。」
一方で、咲良もまた心の中で同じことを考えていた。「こんな状況、どうやって乗り越えればいいの?でも……少しだけ面白いかも。」
お互いにイライラしつつも、どこかで相手の生活に興味を抱き始めている自分に気づき、二人は少しだけ気まずくも前向きな気持ちを抱くのだった。
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