俺が咲良で咲良が俺で

衝撃のハットトリック

翌日、校庭のグラウンドには練習試合を観戦しようとする生徒たちが集まり、活気に包まれていた。咲良の体に入った健太は試合開始を前にユニフォームに袖を通し、少し緊張した表情でピッチに立った。対照的に、健太の体に入った咲良はベンチから応援する役に徹していた。  

「頑張ってね、健太」  
「うん、俺に任せてろ！」

試合の笛が鳴り、キックオフ。咲良（健太）がパスを受けるとそのままゴールを目指してドリブルを開始した。  

### 五人抜きの衝撃

相手チームのディフェンダーが次々と咲良（健太）に向かってくる。  

「止めろ！」  
「こんな小柄な女の子に負けるな！」  

だが、咲良の中にいる健太は驚異的なボールさばきを見せ、次々とディフェンダーをかわしていく。細やかなステップ、絶妙なフェイント、そして目にも留まらぬスピードで、たった数秒で五人の選手を抜き去った。  

観客席からは歓声が上がった。  
「えっ！？咲良ちゃん、すごすぎる！」  
「何あのドリブル！？」  

健太（咲良）はベンチから身を乗り出し、信じられないものを見るような顔をしていた。「健太……すごい！」  

ゴール前に到達した咲良（健太）は冷静にキーパーの動きを見極めると、狙いすましたシュートを放った。ボールはゴールネットを揺らし、先制点が決まる。  

「ゴール！」  

観客からの拍手と歓声が響き渡る中、咲良（健太）は軽くガッツポーズをした。  

### 止まらない勢い

その後も咲良（健太）は止まることを知らなかった。彼は再びドリブルで相手を翻弄し、華麗なミドルシュートで二点目を決めた。相手チームの選手たちは頭を抱え、どうすればこの小柄な選手を止められるのかと途方に暮れていた。  

「何なんだ、この子……！」  
「ただの女子じゃないぞ！」  

そして、試合終了間際の後半戦。咲良（健太）は最後の攻撃で再びボールを受け取り、ゴール前に迫った。味方がパスを求める声も届いているが、彼は迷わず自らシュートを選択した。見事なカーブを描いたボールはキーパーの手をかすめ、ゴールネットを突き抜けた。  

「ハットトリックだ！」  

グラウンド全体が歓声と拍手で沸き立つ。咲良（健太）は満面の笑みで仲間たちに囲まれた。  

### 試合後の称賛

試合終了後、サッカー部のキャプテンが興奮気味に駆け寄ってきた。  
「咲良ちゃん……君、本当にすごいな！どうして今までサッカー部に入らなかったんだ？」  

「たまたま調子が良かっただけだから！」  
咲良（健太）は謙虚に答えながらも、その顔には達成感が滲んでいた。  

一方、ベンチにいた健太（咲良）は手を叩きながら笑顔で近づいてきた。  
「さすが健太！いや、私の体をここまで動かせるなんて……驚いたわ！」  

咲良（健太）は照れ笑いを浮かべながら言った。「お前とやった朝練や練習が報われたよ。でも、俺たちの努力があってこそだな。」  

二人は笑顔を交わし、手をハイタッチで合わせた。  

### 特別な日

この試合を機に、咲良と健太はサッカー部の仲間たちからも一目置かれる存在となり、さらに強い絆で結ばれていくのだった。