俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純七

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突然の地震

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地下室で奇妙な装置を前に立ち尽くしていた二人に、突然の振動が襲いかかった。  

「えっ、地震!?こんなタイミングで!」  
健太の体の咲良が驚きの声を上げ、咲良の体の健太が咄嗟に周囲を見回した。  

「ヤバい!ここ地下だぞ、早くしゃがめ!」  
健太は咲良の手を引いて、すぐ近くの柱の陰に隠れるようにしゃがみ込んだ。  

地面が激しく揺れ、機械から放たれた不気味な音が地下室に響き渡る。金属が擦れるような音と、何かが起動するような機械音が混ざり合い、振動はさらに激しさを増していった。

---

### 静寂の後の違和感  

突然、揺れがピタリと止まった。  
「……終わった?」咲良が恐る恐る顔を上げると、健太も慎重に周囲を見回した。  

「ああ、大丈夫みたいだ……。でも何だ今の揺れ、ただの地震じゃなかったよな。」健太は機械を指さしながら立ち上がろうとしたが、そこで違和感に気づいた。  

「……え?」健太の声がいつもの咲良の声ではなかった。  
反射的に自分の手を見下ろすと、そこには自分がずっと慣れ親しんだ手――男子の手があった。  

「これ……俺の体じゃないか!」  

一方、咲良も驚いた表情で自分の体を見ていた。  
「待って……私、これって……!」  

二人はお互いを見つめ、同時に声を上げた。  
「元に戻ってる!?」

---

### 安堵と困惑  

二人はその場に座り込み、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。  
「信じられない……こんなことってあるんだね。」咲良がほっとした表情を浮かべる。  

「でも、あの機械が動いたのか?それともただの偶然か……?」健太は振り返って装置を見たが、機械は何事もなかったかのように静まり返っていた。  

「分からないけど……元に戻れたことに感謝しようよ。」咲良は健太の肩に手を置いて言った。  
「そうだな。いやー、本当に良かった!」健太も笑顔でうなずいた。  

---

### 地下室を後に  

二人は地下室から出ることにした。階段を上がる途中、健太がふと呟く。  
「でも、これで終わりじゃないよな。あの機械が何なのか、まだ全然わかってないし。」  

咲良は少し考え込んでから言った。  
「でも、もう十分だよ。私たち、ちゃんと自分に戻れたんだから。それに、これからは自分の体で全力でやりたいことをやれるでしょ?」  

健太はその言葉に深くうなずいた。  
「そうだな。サッカーも、学校も、全部自分で頑張らないとな。」  

---

### 元の生活へ  

元に戻った二人は、互いの体で過ごした日々を忘れることはなかった。それは彼らにとって、ただの奇妙な出来事ではなく、新しい自分を見つけるための貴重な経験だった。  

「健太君、これからもよろしくね。」  
「もちろんさ。……咲良、ありがとうな。」  

二人は並んで歩きながら、地下室の秘密を心の中にそっとしまい、再び日常へと戻っていった。
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