俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純七

文字の大きさ
23 / 29

咲良の才能

しおりを挟む

全国大会前の練習試合を目前に控えたサッカー部。校庭には試合の準備が整い、部員たちの緊張感と熱気が漂っていた。  

その中で、マネージャーとして働いている咲良に、キャプテンが目を輝かせながら近づいてきた。  
「咲良ちゃん、ちょっと話があるんだけどさ。」  

咲良はキャプテンの真剣な表情に驚きつつも、問いかける。  
「何でしょうか?」  

キャプテンは少し躊躇しながらも、熱意を込めて言った。  
「この前の練習試合で君、すごかったよね。正直、俺たちより上手かったよ。今日の試合、また参加してみてくれないか?」  

突然の提案に咲良は戸惑った。  
「えっ、私、マネージャーですけど……。それに、今日はちゃんとチームの練習をサポートするのが仕事なので……。」  

「いや、頼む!お前のプレーが必要なんだ!チームに刺激を与えて欲しいんだ!」キャプテンは真剣だった。  

健太もその様子を見て苦笑いしながら口を挟む。  
「咲良、ここまで言われたら出たらどうだ?いままでの練習の成果もあるし、きっといい試合ができるって。」  

咲良はしばらく考え込んだが、やがて頷いた。  
「……分かりました。じゃあ、少しだけお手伝いします!」  

---

### 試合開始  

咲良は男子用のユニフォームに袖を通し、フィールドに立った。試合開始の笛が鳴り、練習試合がスタートする。  

序盤はまだ感覚を取り戻すように慎重にプレーしていた咲良。しかし、相手チームのプレッシャーが強まる中、咲良の動きが次第に変わっていった。  

かつて健太の体で積み重ねた練習の日々が、咲良の体にもしっかりと染み付いていた。相手選手を華麗にかわすドリブル、的確なパス。そして――。  

---

### 驚愕のゴール  

後半戦、健太からのパスを受けた咲良は一瞬で相手ディフェンダーを抜き去り、ゴール前に躍り出た。  

「咲良、シュートだ!」キャプテンの声が響く。  

咲良は迷わず右足を振り抜いた。勢いよく飛び出したボールはゴールキーパーの手をすり抜け、ゴールネットに突き刺さる。  

「ゴール!!!」  

観客席からは歓声が上がり、部員たちも驚きの表情を浮かべながら拍手を送った。  

「咲良ちゃん、すげぇ!男子顔負けじゃん!」  
「本当に練習してたのかよ……!」  

フィールドの外では健太が腕を組みながら微笑んでいた。  
「やっぱりな。俺が教えた甲斐があったってもんだ。」  

---

### 試合後  

試合終了の笛が鳴り、見事な勝利を収めたサッカー部。試合後、キャプテンが咲良に駆け寄った。  

「咲良ちゃん、本当にありがとう!君がいなかったらこの試合、勝てなかったよ。」  

咲良は少し照れくさそうに笑った。  
「いえ、みんなが上手くパスを繋いでくれたからです。でも……やっぱり私はマネージャーが似合ってますから。」  

キャプテンは残念そうな顔をしたが、健太が咲良の肩をポンと叩いて言った。  
「咲良はマネージャーの方がしっくり来るかもな。でも、今日のプレーは本当に最高だった。」  

咲良はその言葉に照れながらもうなずき、次は全国大会でのサポートでみんなで一歩一歩勝ち進んでいく決意を胸に秘めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

ボディチェンジウォッチ

廣瀬純七
SF
体を交換できる腕時計で体を交換する男女の話

秘密のキス

廣瀬純七
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...