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咲良の才能
しおりを挟む全国大会前の練習試合を目前に控えたサッカー部。校庭には試合の準備が整い、部員たちの緊張感と熱気が漂っていた。
その中で、マネージャーとして働いている咲良に、キャプテンが目を輝かせながら近づいてきた。
「咲良ちゃん、ちょっと話があるんだけどさ。」
咲良はキャプテンの真剣な表情に驚きつつも、問いかける。
「何でしょうか?」
キャプテンは少し躊躇しながらも、熱意を込めて言った。
「この前の練習試合で君、すごかったよね。正直、俺たちより上手かったよ。今日の試合、また参加してみてくれないか?」
突然の提案に咲良は戸惑った。
「えっ、私、マネージャーですけど……。それに、今日はちゃんとチームの練習をサポートするのが仕事なので……。」
「いや、頼む!お前のプレーが必要なんだ!チームに刺激を与えて欲しいんだ!」キャプテンは真剣だった。
健太もその様子を見て苦笑いしながら口を挟む。
「咲良、ここまで言われたら出たらどうだ?いままでの練習の成果もあるし、きっといい試合ができるって。」
咲良はしばらく考え込んだが、やがて頷いた。
「……分かりました。じゃあ、少しだけお手伝いします!」
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### 試合開始
咲良は男子用のユニフォームに袖を通し、フィールドに立った。試合開始の笛が鳴り、練習試合がスタートする。
序盤はまだ感覚を取り戻すように慎重にプレーしていた咲良。しかし、相手チームのプレッシャーが強まる中、咲良の動きが次第に変わっていった。
かつて健太の体で積み重ねた練習の日々が、咲良の体にもしっかりと染み付いていた。相手選手を華麗にかわすドリブル、的確なパス。そして――。
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### 驚愕のゴール
後半戦、健太からのパスを受けた咲良は一瞬で相手ディフェンダーを抜き去り、ゴール前に躍り出た。
「咲良、シュートだ!」キャプテンの声が響く。
咲良は迷わず右足を振り抜いた。勢いよく飛び出したボールはゴールキーパーの手をすり抜け、ゴールネットに突き刺さる。
「ゴール!!!」
観客席からは歓声が上がり、部員たちも驚きの表情を浮かべながら拍手を送った。
「咲良ちゃん、すげぇ!男子顔負けじゃん!」
「本当に練習してたのかよ……!」
フィールドの外では健太が腕を組みながら微笑んでいた。
「やっぱりな。俺が教えた甲斐があったってもんだ。」
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### 試合後
試合終了の笛が鳴り、見事な勝利を収めたサッカー部。試合後、キャプテンが咲良に駆け寄った。
「咲良ちゃん、本当にありがとう!君がいなかったらこの試合、勝てなかったよ。」
咲良は少し照れくさそうに笑った。
「いえ、みんなが上手くパスを繋いでくれたからです。でも……やっぱり私はマネージャーが似合ってますから。」
キャプテンは残念そうな顔をしたが、健太が咲良の肩をポンと叩いて言った。
「咲良はマネージャーの方がしっくり来るかもな。でも、今日のプレーは本当に最高だった。」
咲良はその言葉に照れながらもうなずき、次は全国大会でのサポートでみんなで一歩一歩勝ち進んでいく決意を胸に秘めた。
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