俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純七

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帰り道で

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練習試合が終わり、夕焼けに染まる校庭を二人は並んで歩いていた。試合後の興奮がまだ冷めやらず、咲良はにこにこしながら話しかける。  

「ねえ、健太君。私、女の子の体でも意外とサッカーができるんだってびっくりしたわ。これも健太君の熱心な指導のおかげね!」  

健太は横で歩きながら苦笑いを浮かべる。  
「いやいや、俺が教えたくらいであんなに上手くなるなんて、咲良が持ってる素質だよ。今日のゴール、マジで感動した!」  

咲良は照れくさそうに笑い、軽く手を振る。  
「そうかしら。でも、最初は正直、男子と一緒にやるなんて絶対無理だと思ってたのよ。だって、筋力も全然違うし……。」  

健太は少し立ち止まり、真剣な表情で言った。  
「確かに、筋力は男に比べたら少ないよ。でも、咲良の体でやってたときに気づいたんだ。女の子の体って身が軽いから、瞬間的な動きがすごく速いんだよ。今日の試合だって、相手のタックルを軽々とかわしてたじゃん。あれ、男でもなかなかできないぞ。」  

咲良はその言葉に目を丸くし、少し驚いた表情を見せる。  
「そうなんだ……。確かに、自分でも動きやすいとは思ったけど、そんなに違いがあるのね。」  

健太はふと空を見上げ、懐かしむような声で続けた。  
「俺が咲良の体だったとき、あの軽さのおかげで普段は避けられないような相手の攻撃をかわせたんだ。それに、重心が低いからボールコントロールもしやすかった。今日の咲良のプレーを見て、ああ、やっぱり体の特性を活かせば男女なんて関係なくやれるんだなって確信したよ。」  

咲良は嬉しそうに健太を見上げる。  
「じゃあ、健太君のおかげで私はその特性をちゃんと活かせたってことね。ありがとう!」  

健太は少し照れた様子で頭をかきながら笑った。  
「いや、俺は大したことしてないって。ただ、一緒に練習してたから、お互いに色々分かっただけさ。」  

---

二人は並んで歩きながら、楽しかった練習の日々や試合の話で盛り上がり、家路についた。咲良はふと心の中で思う。  

「サッカーって、男も女も関係なく楽しめるんだな。健太君が気づかせてくれたこと、これからも大切にしよう。」  

一方の健太も、隣を歩く咲良の笑顔を見て感じていた。  
「咲良、いいプレイヤーになったな。俺がやってきたこと、無駄じゃなかった。」  

この日、二人はサッカーを通してお互いの体と心を深く知り合った日々を振り返りながら、新たな絆を感じていた。
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