俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純七

文字の大きさ
29 / 29

帰り道の二人

しおりを挟む
翌日の帰り道、健太と咲良は校門を出て、いつもの道を並んで歩いていた。春の風が心地よく、咲良のスカートの裾が軽く揺れる。健太は部活帰りの荷物を片手にぶら下げながら、ふと楽しそうに口を開いた。  

「なあ、咲良。」  
「何?」咲良が振り返る。  

健太は空を見上げながら、少し夢見るような表情を浮かべて言った。  
「もし、また俺が咲良になったらさ…今度は女子のサッカーチームに入って、日本一を目指してみたいな!」  

その言葉に咲良は驚いたように健太を見つめた。だがすぐに、おかしそうに笑い出した。  
「健太らしい発想ね。でも、女子のサッカーチームだって簡単に日本一になれるわけじゃないのよ?女子サッカーだとまた違う戦い方が必要なんだから。」  

健太は頷きながら、いたずらっぽい笑みを浮かべた。  
「分かってる。でも、咲良の体でサッカーをやってみた時に感じたんだ。女子ならではのスピードとか柔軟性を生かせば、男子とは違った形で戦えるって。だから、もしまた入れ替わるなら、絶対チャレンジしてみたい。」  

咲良はその言葉を聞いて、少し考えるように空を見上げた後、にっこりと笑った。  
「じゃあ、私もまた健太になったら、健太の体で男子サッカーで日本一を目指してみたいわ!健太が築いたスキルをちゃんと受け継いでね!」  

「おっ、それは頼もしい!」健太は笑いながら、咲良の肩を軽く叩いた。  
「でも俺の体、大事に使ってくれよな。怪我とかしないように!」  

「もちろんよ!むしろ健太より慎重に使うと思うわ。」咲良は胸を張って言いながら、目を輝かせた。  

二人はしばらくの間、もしまた体が入れ替わったらどんなことをしてみたいか、冗談を交えながら話し続けた。健太は「女子の制服の着こなしてメイクを極める!」と言い、咲良は「男子トイレに堂々と入って小便器で立ってしてみたいわ!」とふざけて言って、二人で声を上げて笑った。  

やがて、夕陽が二人の影を長く伸ばし始める頃、健太はふと真剣な表情になった。  
「でもさ、咲良。今のままでも俺たち、十分だよな。」  

その言葉に咲良も頷いて、柔らかな微笑みを浮かべた。  
「そうね。私たちは私たちだもんね。」  

二人は最後に「じゃあ、また明日ね!」と手を振り合いながら、それぞれの帰り道に分かれていった。温かな夕暮れの光が、二人の背中を優しく包んでいた。

後日に調べて分かった事だが、咲良と健太が通う桜ケ丘高校は日本軍の研究施設の跡地に建てられた学校だった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

リアルメイドドール

廣瀬純七
SF
リアルなメイドドールが届いた西山健太の不思議な共同生活の話

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

兄になった姉

廣瀬純七
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

処理中です...