秘密のキス

廣瀬純七

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異性のトイレ体験

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性別が入れ替わってから数日。入れ替わりに慣れてきたと思っていた悠(葵の体)と葵(悠の体)だが、ある日、日常生活の「最大の壁」が突然二人の前に立ちはだかった。

それは「トイレ問題」だった。

***

### 悠、女子トイレへの挑戦

昼休み、悠は教室の隅でモジモジしていた。  
「どうしたの?悠、というか…私。」  
葵(悠の体)が不思議そうに声をかける。

「いや、その…トイレ行きたいんだけど…女子トイレってどう入ればいいんだ?」  
悠(葵の体)は顔を真っ赤にしてそわそわしている。

「何言ってるの。普通に入ればいいでしょ?」  
葵は呆れたように答えたが、悠にとってそれは簡単な話ではなかった。

女子トイレの前に立った悠は、緊張で足が動かなかった。周りには制服姿の女子たちが談笑しながら出入りしている。その光景だけで、彼の心臓はバクバクしていた。

「悠、大丈夫だから。普通に入って、普通に出れば誰も気にしないって。」  
廊下で悠の背中を押す葵の声が響く。

意を決してトイレに入った悠は、まず目に飛び込んできたピンク色の空間に驚いた。壁に貼られた可愛いポスターや花柄のティッシュ、そして手洗い場の綺麗さに感心してしまう。  

「女子のトイレって、こんなに…オシャレなのか…」  
思わず感嘆していると、隣で手を洗っている女子が不思議そうに彼(葵の体)を見てきた。

「あ、いや、別に…」  
悠は焦って洗面台に向かったが、石鹸の香りがまたもや彼を戸惑わせた。  

用を足し終わって出てくると、葵(悠の体)が待っていた。  
「どうだった?」  
「いや、なんか…別世界だな…」  
悠は呆然と答える。

***

### 葵、男子トイレへの挑戦

一方、その頃。葵(悠の体)もまた、自分の体に訪れた「生理的な要請」に戸惑っていた。

「男子トイレかぁ…入ったことないけど、まぁ行けるでしょ。」  
自分の体にある変化には既に慣れているつもりだった葵だが、いざ男子トイレのドアの前に立つと、不安が込み上げてきた。

「なんか…臭そうだな。」  
苦笑しながらドアを開けると、そこには見慣れない光景が広がっていた。小便器がずらりと並び、男子たちが普通に用を足している。  

「これ、どうやって使うの…?」  
葵は混乱しつつも、自分の中の「男子としての振る舞い」を意識し、なるべく堂々とした態度を装った。だが、その演技はすぐに崩れる。

隣に立った男子が話しかけてきたのだ。  
「お、宮村。今日もバスケ部調子いいか?」  
「あ、えっと、うん!まあまあかな!」  
普段なら冷静に返せるはずなのに、自分が男子の姿をしているというだけで挙動不審になってしまう。

そしていざ手を洗おうとすると、石鹸がないことに驚いた。  
「男子トイレって、なんでこんなに適当なの?」  
小声で呟きながらトイレを出ると、悠(葵の体)が廊下で待っていた。

「どうだった?」  
「もう二度と行きたくない…なんで石鹸ないの!?」  
葵の言葉に悠は苦笑しながら、「男子はそんなもんだよ」と肩をすくめた。

***

### トイレを終えて

帰り道、二人は顔を見合わせてため息をついた。  
「やっぱりお互いの体になるの、まだまだ慣れないな。」悠がぼやく。

「ほんとね。これ、どっちが先に完全に慣れるか勝負かもね。」  
葵はそう言って微笑んだ。

そして、二人は夕焼けの中を歩きながら、次はどうやってこの奇妙な日常を乗り越えていくかを話し合い続けたのだった。
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