バーチャル女子高生

廣瀬純七

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バーチャルな初デート

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日曜日の朝。陽介(ひより)は、仮想空間「アカシア学園」にログインすると、山崎陽介から届いていたメッセージに気づいた。

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**山崎陽介:**  
「今日、一緒にどこか出かけない?バーチャルの世界には面白い場所がたくさんあるらしいよ。」

陽介(ひより)はそのメッセージに、少しだけ胸が高鳴るのを感じた。目の前にいるのは仮想空間での「もう一人の自分」だが、それでもこうしてデートの誘いを受けるのは新鮮で、どこか恥ずかしかった。

**ひより:**  
「いいよ。どこに行くの?」

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約束の時間になると、校門前に山崎陽介が現れた。彼はさりげない笑みを浮かべて手を振り、ひよりを迎えた。

「今日は水上都市のエリアに行こうと思ってるんだ。ちょっと歩くけど、大丈夫?」

「水上都市?聞いたことないけど、楽しそう。」

「じゃあ行こうか。」

---

### 水上都市エリア

二人がポータルを通じて訪れたのは、広大な湖に浮かぶバーチャル都市だった。木製のボードウォークが広がり、水面にはキラキラと光が反射している。白い建物が立ち並び、その間を小さな船が行き交っていた。

「すごい…本当に綺麗。」

ひよりは目を輝かせながら周囲を見回した。仮想空間とはいえ、その景色は息をのむほどの美しさだった。

「ここ、有名なデートスポットらしいよ。」  
山崎陽介は照れくさそうに言った。

「へえ…陽介くん、こんな場所を知ってるなんて意外だね。」

「いや、初めてなんだけどさ。一緒に来るならここがいいかなって。」

その言葉にひよりは少し赤面した。自分の分身であるはずの相手に、こうして特別扱いされるのは不思議な気分だった。

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### レンタルボートでのひととき

山崎陽介の提案で、二人は小さなボートを借りて湖を巡ることにした。揺れるボートの上で、ひよりは水面に映る自分の姿をぼんやりと見つめていた。

「ひよりさんって、本当にここに馴染んでるよね。」  
山崎陽介がポツリと言った。

「そうかな?自分ではそんな風に思ってないけど…。」

「いや、すごく自然体に見えるんだ。現実のことなんか気にせず、ここで自由に生きてる感じがする。」

その言葉に、ひよりは一瞬だけ言葉を失った。現実の陽介としての自分は、常に仕事や責任に縛られている。だが、この仮想世界では「ひより」として、まったく新しい自分を生きている感覚があった。

「ありがとう、陽介くん。でも、陽介くんもそうじゃない?ここでは、いつも楽しそうだよ。」

「そうかもな。現実じゃこんな風に誰かと話すの、ちょっと苦手だからさ。」

「それは意外!」

二人は笑い合い、しばらくの間、穏やかな時間が流れた。

---

### 夜景と告白めいた言葉

夕方になると、水上都市は幻想的なイルミネーションに包まれた。灯りが水面に映り、二人の影が揺れる。

「今日はありがとう。すごく楽しかった。」  
ひよりが礼を言うと、山崎陽介は真剣な顔で彼女を見つめた。

「僕も楽しかった。…これからも、こうして一緒にいられたらいいな。」

その言葉に、ひよりは胸がドキリとした。目の前の山崎陽介は自分自身であるはずなのに、どこか別の存在に思える。

「私も…同じ気持ちだよ。」  
自然と口をついて出たその言葉に、自分でも驚いた。

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二人はそのまま並んで歩きながら、湖畔の街を後にした。現実とは違う自由さの中で、陽介(ひより)は新しい関係を築き始めているのだと、心のどこかで感じていた。
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