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水上都市でのプロポーズ
しおりを挟む陽介(ひより)と山崎陽介が「アカシア学園」の仮想空間での生活を共有するようになってから、数ヶ月が経った。バーチャルデートや日常のやり取りを通じて、二人の関係は少しずつ深まっていった。
ある日、山崎陽介からメッセージが届いた。
**山崎陽介:**
「今日は、また水上都市に行かない?特別な話があるんだ。」
特別な話――その言葉に、陽介(ひより)は少しだけ胸が高鳴った。何を話されるのだろうか。いつものように軽い冗談なのか、それとも…。
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### 水上都市の再訪
夕暮れの時間帯にログインした二人は、再び水上都市へ向かった。前に訪れたときよりもさらに美しく輝く街並みに、ひより(陽介)は感嘆の声を上げた。
「ここ、本当にいい場所だよね。何度来ても飽きない。」
「だよね。今日は特別な夜にしたくてさ。」
山崎陽介の声には、いつになく真剣な響きがあった。彼はひよりの手を取り、静かな湖畔へと誘った。
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### 湖畔のプロポーズ
湖畔に設けられた小さな桟橋には、無数のランタンが浮かび、暖かな光を放っていた。二人が立ち止まると、山崎陽介はひよりに向き直り、深呼吸をした。
「ひよりさん…いや、ひより。」
彼が名前を呼んだ瞬間、ひより(陽介)は心臓が高鳴るのを感じた。
「今まで一緒に過ごしてきて、僕の中でずっと感じていたんだ。君といると、現実の自分以上に本当の自分でいられる気がする。」
「…陽介くん?」
「君と、これからもずっと一緒にいたい。どんな形であれ、このバーチャルな世界でも、君が隣にいることが僕にとって何より大切なんだ。」
山崎陽介はポケットから、小さな光るリングを取り出した。バーチャル空間ならではの透明で美しいデザインの指輪が、淡い光を放っている。
「僕と結婚してくれないか?」
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### ひよりの答え
ひより(陽介)は一瞬、言葉を失った。目の前でプロポーズをしているのは自分自身のアバター――つまり、自分自身に他ならない。だが、仮想空間での日々を共有する中で、目の前の山崎陽介が単なる「もう一人の自分」ではなく、大切な存在だと思えてきたのも事実だった。
「陽介くん…ありがとう。私も君と一緒にいたいと思ってる。」
ひよりは涙を浮かべながら、差し出された指輪を受け取った。そして、自分の指にそれをはめると、仮想空間の夕焼けがさらに美しく輝いた。
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### 二人の未来
その後、二人は桟橋に座りながら静かに語り合った。現実と仮想を超えた関係がどうなるのかはわからない。だが、ひより(陽介)は今、確かに幸せを感じていた。
「これからどうなるんだろうね。」
「わからないけど、どこまでも一緒に行こう。ここがどんな世界であってもさ。」
湖に浮かぶランタンが二人を優しく包み込む中、二人の物語は新たな幕を開けたのだった。
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