BODY SWAP

廣瀬純七

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洗濯物

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 日曜日の朝。
 快晴。空は抜けるように青く、どこか街もゆったりとした時間が流れていた。

 「おはようございます……って、あれ?」

 インターフォンも鳴らさずに、合鍵でそっと入った純(体は拓也)は、部屋の空気の違いにすぐ気づいた。
 いつもより、さっぱりしている。なんとなく、風が通るような気がする。

 リビングの奥──ベランダの方へ目を向けると、そこにはずらりと干された洗濯物。
 タオル、シャツ、インナー、ハンカチ、そして──それとなく視線をずらしたくなるような、レースの……。

 「……お、おい」

 思わず声を上げたとき、キッチンの方からエプロン姿の“自分”が現れた。
 ゆるくまとめた髪、部屋着のスウェット、その顔には、どこか家事に満足したような穏やかさがある。

 「あ、おはよう。来る前に連絡くれればよかったのに。洗濯、終わっちゃったよ」

 「……洗濯?」

 「うん。昨日の夜、洗濯カゴ見たらけっこう溜まってたから、朝から回しちゃった。
 ちゃんと分けて洗ったし、下着はネットに入れたから安心して」

 あまりにもさらっと言われたその一言に、純は思わず言葉を失った。

 「……えっ……下着……?」

 「うん。大丈夫、干すときもちゃんとタオルの陰にしてある。人に見られたら恥ずかしいよね!」

 「……いや、いやいや、そういうことじゃなくて!」

 慌ててベランダの方を見やるが、確かに目立たない位置にかけられている。
 そして、そのひとつひとつが、しっかり伸ばされて、丁寧に干されていた。

 「それにしても……やっぱり可愛いのつけてるんだね。レースのとか、リボンのとか。意外とフェミニン」

 「やめて!! 私の口で私の下着の話をしないで!!」

 顔を真っ赤にしながら抗議する拓也の体の純に対し、純の体の拓也は全く悪びれずキッチンに戻っていく。
 そしてコーヒーを淹れながら、まるで家主のように振る舞った。

 「だって、これも“生活の一部”でしょ? 自分の部屋、自分の洗濯物、自分の下着。
 入れ替わったままでいようがいまいが、ここで暮らしてる限り、ちゃんと整えておかないと」

 その言葉には、どこか静かな覚悟のようなものがにじんでいた。

 「……なんか、慣れてきたね」

 「うん。驚くほど。でも、純が男の身体で“自分のブラ干されてるの見てる”姿、だいぶ面白いけどね!」

 「やっぱり帰る!」

 そう言って立ち上がった拓也の体の純を、くすくすと笑いながら追いかける純の体の拓也。
 少しずつ、お互いの生活に溶け込みながら、今日もふたりの“ちょっと複雑な日常”は続いていく。

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