BODY SWAP

廣瀬純七

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朝の違和感

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 その朝、目が覚めた瞬間から、いつもと違う“違和感”があった。
 純の体に入って10日目。女性の身体のリズムなどわかるはずもなく、拓也はなんとなくお腹に重たい鈍痛を感じながら、ベッドの中で丸くなっていた。

 「……ん、なにこれ……」

 下腹部を押さえた瞬間、ズン、とした痛みが腹の奥から押し寄せる。
 胃じゃない、筋肉でもない。内部から絞られるような不快感。そして、身体がじっとりと冷える。

 (もしかして……これが、例の“あの日”ってやつ……?)

 ようやく目が覚めた脳が、痛みの正体を悟った。

 慌てて洗面所に駆け込み、鏡に映る“自分の姿”──いや、“純の姿”を見つめながら、拓也は深いため息をついた。

 (まさか本当に来るとは……。いや、来るに決まってるか。この体なんだから……)

 再び腹部にズキズキとした痛みが走る。無理をして立っていられるほどのレベルではない。
 顔は青ざめ、額にはうっすら汗が滲んでいた。

 (こんな状態で仕事なんて、絶対ムリだ……)

 慌ててスマホを手に取り、勤怠アプリに「体調不良による休暇」を申請した。
 そして、会社にも一報。

---

**数時間後**

 午後になっても痛みは収まらず、拓也は純の体でブランケットにくるまりながら、ベッドの上でじっとしていた。
 ときおり痛み止めが効いて少しだけ楽になるものの、座りっぱなしや立ちっぱなしではすぐに痛みがぶり返す。

 (……純は、こんなのを毎月やり過ごしてたのか)

 何も言わずに、いつもと同じように働いていた、あの柔らかな笑顔の裏で──
 こんな身体の状態を抱えていたなんて、想像もしていなかった。

 (本当に、頭が下がる……)

 彼女の強さと優しさを、改めて胸に感じた。

---

**夕方、チャット通知が鳴る。**

🟢【純(in 拓也)】
「大丈夫? 今日、無理しないで休んで正解だよ。生理、重いほうだからつらいよね」

🟢【拓也(in 純)】
「……ごめん、完全になめてた。動けないし、横になってるだけで精一杯」

🟢【純】
「だよね(笑)初めての経験で混乱してると思うけど、薬ちゃんと飲んで、温かくして寝てて」

🟢【拓也】
「ありがとう……。ほんと、これ毎月とか、尊敬しかない……」

 画面越しに伝わる優しさが、じんと心に染みた。

---

 この日の夜、拓也は湯たんぽをお腹に当てながら、
 何気なく過ごしていた「女性の一日」が、こんなにも大変で、繊細なものだったと静かに噛み締めた。

 そして、思った。

 (今度、元に戻ったら──もっとちゃんと、寄り添おう。言葉だけじゃなく、態度でも)

---
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