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旦那様は魔王様≪最終話≫
記憶 5
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「どうして沙良にあの薬を渡したんだ!」
沙良が意識を失った――
その報せを受けて、ミリアムとアスヴィル、そして沙良に薬を渡した張本人であるクラウスがシヴァの部屋にやってきた。
もとに戻したシヴァのベッドの上で、沙良は静かに眠っている。しかし、眠っているように見えて、呼吸が著しく小さい。注意してみないと呼吸が止まっているようにも見えて、シヴァは気が気でなかった。
クラウスが部屋に入ってくるなり、掴みかからんばかりの勢いで怒鳴ったシヴァに、片眼鏡を押し上げて静かに答える。
「兄上が沙良を思うように、沙良も兄上のことを考えています。……沙良が薬を飲む選択をしたのなら、それは兄上のためでしょう」
「だから悪い!」
シヴァは沙良の額に手を伸ばして、顔にかかっている髪をそっと払いのける。
「……俺は、沙良を危険な目に合わせてまで、記憶にこだわるつもりはなかった」
忘れられたことは悲しい。怖がられるのはつらい。
沙良が記憶の失うまで、毎日のようにこの腕の中に抱きしめていた彼女が、この腕の中に戻ってこないことに絶望した。
それでも、沙良が危険な目に合うよりはよほどいい。
最近の沙良は、少しずつだがシヴァに心を開こうとしてくれていたように見える。
だから、つらくとも悲しくとも、気長に彼女が自然に笑いかけてくれるまで待とうと思っていたのに。
沙良は静かに眠る。
このまま何もしなければ、もう二度と目覚めることはないだろう。
「沙良ちゃん……」
ミリアムが沙良の顔を覗き込んで、泣きそうに顔をゆがめた。
アスヴィルがミリアムの細い肩を抱き寄せて、シヴァを見上げる。
「どうしますか?」
おそらく、この部屋に来る前にクラウスからある程度の事情を聞いていたのだろう。沙良をこのままにしておきますか――、そう言われているようで、シヴァは眉を顰める。
(沙良……)
――わたし、思い出したい。思い出して、シヴァ様にちゃんと好きって言いたいもん!
沙良が意識を失う前に、叫んでいた言葉を思い出す。
驚いて、シヴァの反応が遅れたから、彼女に薬を飲む隙を与えた。
何もしなければ沙良の意識は戻らず、やがて本当に命を落とすだろう。
しかし、心の中に入って、沙良の心を見つけられなければ――、最悪、彼女の心は壊れることになる。
どちらに転んでも最悪で――、それならば、可能性にかけるしかないだろう。
シヴァは沙良の頬を撫でる。
沙良を失うなんて考えられない。
「アスヴィル――、俺に何かあったらあとは頼むと、父上に伝えてくれ」
元凶はあの人なのだから、それくらいはしてもいいだろう――、そう笑って、シヴァは沙良の額に自分の額を重ねる。
ゆっくりと、目を閉じた。
沙良が意識を失った――
その報せを受けて、ミリアムとアスヴィル、そして沙良に薬を渡した張本人であるクラウスがシヴァの部屋にやってきた。
もとに戻したシヴァのベッドの上で、沙良は静かに眠っている。しかし、眠っているように見えて、呼吸が著しく小さい。注意してみないと呼吸が止まっているようにも見えて、シヴァは気が気でなかった。
クラウスが部屋に入ってくるなり、掴みかからんばかりの勢いで怒鳴ったシヴァに、片眼鏡を押し上げて静かに答える。
「兄上が沙良を思うように、沙良も兄上のことを考えています。……沙良が薬を飲む選択をしたのなら、それは兄上のためでしょう」
「だから悪い!」
シヴァは沙良の額に手を伸ばして、顔にかかっている髪をそっと払いのける。
「……俺は、沙良を危険な目に合わせてまで、記憶にこだわるつもりはなかった」
忘れられたことは悲しい。怖がられるのはつらい。
沙良が記憶の失うまで、毎日のようにこの腕の中に抱きしめていた彼女が、この腕の中に戻ってこないことに絶望した。
それでも、沙良が危険な目に合うよりはよほどいい。
最近の沙良は、少しずつだがシヴァに心を開こうとしてくれていたように見える。
だから、つらくとも悲しくとも、気長に彼女が自然に笑いかけてくれるまで待とうと思っていたのに。
沙良は静かに眠る。
このまま何もしなければ、もう二度と目覚めることはないだろう。
「沙良ちゃん……」
ミリアムが沙良の顔を覗き込んで、泣きそうに顔をゆがめた。
アスヴィルがミリアムの細い肩を抱き寄せて、シヴァを見上げる。
「どうしますか?」
おそらく、この部屋に来る前にクラウスからある程度の事情を聞いていたのだろう。沙良をこのままにしておきますか――、そう言われているようで、シヴァは眉を顰める。
(沙良……)
――わたし、思い出したい。思い出して、シヴァ様にちゃんと好きって言いたいもん!
沙良が意識を失う前に、叫んでいた言葉を思い出す。
驚いて、シヴァの反応が遅れたから、彼女に薬を飲む隙を与えた。
何もしなければ沙良の意識は戻らず、やがて本当に命を落とすだろう。
しかし、心の中に入って、沙良の心を見つけられなければ――、最悪、彼女の心は壊れることになる。
どちらに転んでも最悪で――、それならば、可能性にかけるしかないだろう。
シヴァは沙良の頬を撫でる。
沙良を失うなんて考えられない。
「アスヴィル――、俺に何かあったらあとは頼むと、父上に伝えてくれ」
元凶はあの人なのだから、それくらいはしてもいいだろう――、そう笑って、シヴァは沙良の額に自分の額を重ねる。
ゆっくりと、目を閉じた。
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