枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき

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枯れ専がばれました 3

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 ジョルジアナは注文をかけた仕立屋や商店から、相次いで注文キャンセルの連絡が届いたのを知り、金切り声で叫んだ。

「どうしてよ! なんでドレスが買えないの⁉ 今年のパーティーに去年の古いドレスで参加しろっていうの⁉」

 腹を立てたジョルジアナは、執事が止めるのも聞かずに家を飛び出した。
 料理人はタウンハウスにはついて来ておらず、執事の作るまずい食事でも我慢して、イアナが嫁いで以来着替えや入浴の世話をする人間がいないのにも耐え、不自由な生活を強いられてきたジョルジアナのストレスは爆発寸前だった。
 だが、姉が金持ちの年寄りに嫁いだおかげで、ドレスや宝石が買えるという点において、ぐっと我慢してきたのだ。それができなかったら、何のために姉を年寄りに嫁がせたかわかったものではない。

 自分が作った慰謝料の返済のためだった、という事実なんて都合よく忘れ去っていたジョルジアナは、イライラしながらこの前ドレスの注文をかけた仕立屋の扉を開けた。

「店主のマダムを呼んでちょうだい!」

 ジョルジアナが怒鳴ると、店内にいた令嬢や夫人がギョッとした顔で振り返る。
 しかし怒り心頭のジョルジアナは、表情を取り繕うことも忘れて、続けて「早くしなさい!」と叫んだ。
 店員の女性が慌ててジョルジアナを応接室に通す。店内で騒がれてはたまったものではなかったからだ。

 応接室に通されたジョルジアナが待っていると、五分ほどして前回タウンハウスに来たマダムが現れた。
 五十歳半ばの丸眼鏡をかけた大人しそうな女性だ。そして貴族ではない。だからジョルジアナは当然、居丈高に言った。

「ちょっと、どうしてあたくしの注文がキャンセルされるのよ! 注文した通り作って早く邸に届けてちょうだい‼」

 マダムはジョルジアナの対面に腰を落とすと、そっと息を吐き出した。

「お嬢様のご注文ですが、わたくし共が確認したところステファーニ公爵はお嬢様のドレスなどの代金を支払うつもりはないとおっしゃいました。それからお嬢様の御父上であるアントネッラ伯爵からも、お嬢様の注文は受け付けないようにとご連絡をいただいております」
「なんですって⁉」

 父からステファーニ公爵家の名前を出して買い物をするな、せっかく買った宝石を返品しろとふざけた手紙が来ていたのは知っていたが、まさか仕立屋に連絡を入れているとは思わなかった。
 そして、イアナが嫁いだステファーニ公爵家が支払いを拒否したこともやはりジョルジアナは想定外だった。
 だって、父アントネッラ伯爵は言ったのだ。イアナの小遣いを送金させる、と。つまりステファーニ公爵がイアナに支払う小遣いはジョルジアナのものである。ジョルジアナが使って何が悪い。
 ジョルジアナはぎりっと奥歯を噛みしめてマダムを睨む。

「あたくしが作れと言っているのよ!」
「では、注文分の金額をすべて前金でお支払いください。間違いなく注文分の金額が支払われたのを確認しましたら、ご注文分のドレスなどの製作に移りましょう」
「ふざけないで!」
「申し訳ございませんが、こちらとしましても慈善事業ではございませんので、お支払いいただけないのならばご注文をお受けできません」
「この店は客にそんな無礼を働いて許されるの⁉ あたくしにそんな態度を取って、ただですむと思っているのかしら⁉」
「わたくしどもの対応が気に入らないのであれば、どうぞご随意に。先ほども申した通り、代金を前払いでいただけない場合、お嬢様のご注文はお受けするわけには参りません」

 ジョルジアナは顔を真っ赤に染めて立ち上がった。

「覚えてなさい‼ 絶対に後悔させてやるんだから‼」


     ☆


 ジョルジアナが喚き散らして大きな足音を立てながら応接室から出て行くと、部屋に残されたマダムは、頬に手を当ててそっと息を吐いた。
 実は、ステファーニ公爵夫人――イアナから、注文をキャンセルしたらジョルジアナが乗り込んでくるかもしれないことは事前に連絡をもらっていた。
 その上で迷惑をかけるかもしれないことへの謝罪と、ジョルジアナが注文したもの以上の注文がステファーニ公爵家の名前でマダムの元に届いていたのである。

 イアナのドレスにはじまり、アリーチャのドレス、子供服に至るまで、全部で三十着。しかも納期は、社交シーズン前で忙しいだろうから、年内に届けてくれればいいという大盤振る舞いである。
 イアナはジョルジアナのせいでマダムが不利益を被るのではないかと心配していたようだが、王家御用達の仕立屋であるマダムにとって、没落寸前の貧乏伯爵令嬢がいかに騒いだところで痛くもかゆくもなかった。むしろあの頭のねじのぶっ飛んだジョルジアナのおかげでステファーニ公爵夫人と懇意にできて万々歳なくらいである。

(それにしても、あのお嬢様とステファーニ公爵夫人が姉妹だなんて信じられないわね)

 イアナとは会ったことはないけれど、手紙の端々にこちらへの気遣いが見て取れた。非常に人間ができた女性だとマダムは感じたものだ。あんな非常識な妹がいるなんて到底信じられない。

(妹が来たら教えてほしいと言われていたから、お手紙を出しておきましょうか)

 マダムはイアナに宛てた手紙をしたためながら、仕立屋仲間にもジョルジアナについて注意喚起が必要かしらと考えていた。

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