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扶養義務はありません 6
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パーティーがはじまれば、フェルナンドの元に大勢の貴族が押しかけた。
一人一人と挨拶をかわしているうちにあっという間に時間が経過して、一息つきたくなったイアナはフェルナンドと共にバルディーニ伯爵家の庭に休憩に向かった。
大広間から聞こえてくるワルツの音を聞きながら、ベンチに並んで腰かける。
人目を避けるように陰になっている場所を選んだから、周囲に人の気配はなかった。
空を見上げれば、フェルナンドの髪と同じ色をした月が輝いている。
時折吹く風が、お酒を飲んで火照った体を冷やしてくれた。
こてん、とフェルナンドの肩口に頭を預ける。
「疲れたか?」
「少し。こんなに大勢の方と挨拶をしたのははじめてです」
「ああ、カルリ侯爵家パーティーのときは今日ほど招待客がいなかったからな」
みんな、四十二歳の年の差結婚をしたステファーニ公爵に興味津々なのだ。特に若い人ほど興味を示し、夫婦生活が気になるのか挨拶ついでにあれこれ聞いてくる。
さらには、今度パーティーや茶会を開くからぜひ参加してほしいと誘われて、やんわりとやりすごすのに苦労した。うっかり了承しようものなら毎日どこかしらに出かける羽目になるからだ。
フェルナンドが骨ばった皺だらけの手でイアナの髪を撫でてくれる。彼は現在魔術具の指輪をはめていて六十二歳の姿だ。
(パーティーはちょっと疲れるけど、こうしていぶし銀な旦那様をじっくり拝めるのは嬉しいわね)
邸に戻ると来客がない限り指輪を外してしまうので、外出している時でないといぶし銀なフェルナンドは拝めない。
ついついうっとりと見上げていると、フェルナンドの眉間に皺が寄った。
「最近思うんだが、この姿のときと指輪を外した姿のときと、君の表情が違う気がする」
「え? き、気のせいですよ、ほほほほほ……」
「いいや気のせいなものか。君はやっぱりこっちの姿の方が好きなんだな」
それはもう、と頷くのは危険だ。フェルナンドが自分の姿に焼きもちを焼いてしまう。
(どっちも旦那様に代わりないのに、なんでいぶし銀な姿に見とれたら嫌なのかしらね?)
男心は難しい。どっちもフェルナンドなんだから問題ないと思うのだが。
「旦那様は自分の今のお姿は好きではないんですか?」
「嫌いではないが、せっかく若返って外見年齢が釣り合うのに、年寄り姿にばかり興味を持たれると面白くないじゃないか」
「そういうものですか?」
「そういうものだよ。少なくともこの姿で君にキスをしようとは思わないしな」
「え⁉」
道理でいぶし銀な姿でキスをしてくれたことがないと思った。イアナはいつでもウェルカムなのに。というか待っていたのに。なんてことだ!
がーんとショックを受けていると、フェルナンドが面白くなさそうな顔になる。
「ほらそういう顔をする。今後もこの姿では君にキスをしないからな」
「そんな! ほ、ほら、今は周囲に誰もいませんよ。ちょっとくらい新婚らしくいちゃいちゃしてもいいと思いますけど」
何とか機嫌を直してもらって、初いぶし銀キスをゲットしようと目論んだイアナだが、そんな考えはお見通しとばかりに、フェルナンドがするりと指輪を外してしまった。
「ああっ」
二十歳の青年の姿に戻ったフェルナンドが素早くイアナの唇にキスをして、再び指輪をはめる。
(なんで指輪を外しちゃうの!)
きっとわざとだと口をとがらせると、フェルナンドがくつくつと笑った。
「旦那様、意地悪ですよ」
「そうだな。私は君に関わると狭量になるようだ」
かくなる上は、とイアナが自分からフェルナンドに唇を寄せると、また彼はさっと指輪を引き抜いてしまう。
「もうっ!」
「はははっ」
少年のように笑うフェルナンドを軽く睨みながら、イアナはいつか絶対にいぶし銀のキスをいただくのだと心に決めた。
一人一人と挨拶をかわしているうちにあっという間に時間が経過して、一息つきたくなったイアナはフェルナンドと共にバルディーニ伯爵家の庭に休憩に向かった。
大広間から聞こえてくるワルツの音を聞きながら、ベンチに並んで腰かける。
人目を避けるように陰になっている場所を選んだから、周囲に人の気配はなかった。
空を見上げれば、フェルナンドの髪と同じ色をした月が輝いている。
時折吹く風が、お酒を飲んで火照った体を冷やしてくれた。
こてん、とフェルナンドの肩口に頭を預ける。
「疲れたか?」
「少し。こんなに大勢の方と挨拶をしたのははじめてです」
「ああ、カルリ侯爵家パーティーのときは今日ほど招待客がいなかったからな」
みんな、四十二歳の年の差結婚をしたステファーニ公爵に興味津々なのだ。特に若い人ほど興味を示し、夫婦生活が気になるのか挨拶ついでにあれこれ聞いてくる。
さらには、今度パーティーや茶会を開くからぜひ参加してほしいと誘われて、やんわりとやりすごすのに苦労した。うっかり了承しようものなら毎日どこかしらに出かける羽目になるからだ。
フェルナンドが骨ばった皺だらけの手でイアナの髪を撫でてくれる。彼は現在魔術具の指輪をはめていて六十二歳の姿だ。
(パーティーはちょっと疲れるけど、こうしていぶし銀な旦那様をじっくり拝めるのは嬉しいわね)
邸に戻ると来客がない限り指輪を外してしまうので、外出している時でないといぶし銀なフェルナンドは拝めない。
ついついうっとりと見上げていると、フェルナンドの眉間に皺が寄った。
「最近思うんだが、この姿のときと指輪を外した姿のときと、君の表情が違う気がする」
「え? き、気のせいですよ、ほほほほほ……」
「いいや気のせいなものか。君はやっぱりこっちの姿の方が好きなんだな」
それはもう、と頷くのは危険だ。フェルナンドが自分の姿に焼きもちを焼いてしまう。
(どっちも旦那様に代わりないのに、なんでいぶし銀な姿に見とれたら嫌なのかしらね?)
男心は難しい。どっちもフェルナンドなんだから問題ないと思うのだが。
「旦那様は自分の今のお姿は好きではないんですか?」
「嫌いではないが、せっかく若返って外見年齢が釣り合うのに、年寄り姿にばかり興味を持たれると面白くないじゃないか」
「そういうものですか?」
「そういうものだよ。少なくともこの姿で君にキスをしようとは思わないしな」
「え⁉」
道理でいぶし銀な姿でキスをしてくれたことがないと思った。イアナはいつでもウェルカムなのに。というか待っていたのに。なんてことだ!
がーんとショックを受けていると、フェルナンドが面白くなさそうな顔になる。
「ほらそういう顔をする。今後もこの姿では君にキスをしないからな」
「そんな! ほ、ほら、今は周囲に誰もいませんよ。ちょっとくらい新婚らしくいちゃいちゃしてもいいと思いますけど」
何とか機嫌を直してもらって、初いぶし銀キスをゲットしようと目論んだイアナだが、そんな考えはお見通しとばかりに、フェルナンドがするりと指輪を外してしまった。
「ああっ」
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(なんで指輪を外しちゃうの!)
きっとわざとだと口をとがらせると、フェルナンドがくつくつと笑った。
「旦那様、意地悪ですよ」
「そうだな。私は君に関わると狭量になるようだ」
かくなる上は、とイアナが自分からフェルナンドに唇を寄せると、また彼はさっと指輪を引き抜いてしまう。
「もうっ!」
「はははっ」
少年のように笑うフェルナンドを軽く睨みながら、イアナはいつか絶対にいぶし銀のキスをいただくのだと心に決めた。
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