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帰宅と結婚準備 8
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フェルナンドに手紙をしたためていたイアナは、メイドのマーラが慌ただしく部屋にやって来て目を丸くした。
「え? 旦那様が?」
「はい! 今先ほど連絡がありまして、あと三十分ほどで到着なさるそうです」
「ええ⁉」
なんと、フェルナンドが王都にやって来たらしい。
イアナは書きかけていた手紙を放置し、クロエとマーラに手伝ってもらって急いで着替えをすませると、髪を結ってもらった。楽な格好をしていてもフェルナンドは気にしないだろうが、久しぶりに会う夫にはできるだけ綺麗な姿を見てもらいたいからだ。
化粧を終えて慌ただしく玄関へ向かうと、ちょうど馬車が玄関前に到着したところだった。
「イアナ!」
執事が玄関扉を開けるよりも早く、バタンと扉を開けてフェルナンドが入って来た。挨拶をする間もなく抱きしめられて、イアナは目を白黒とさせた。
「だ、旦那様?」
「ああ、イアナ。よかった、ここにいた……」
「え、ええ……?」
ここにいたも何も、ステファーニ公爵夫人である自分がタウンハウスにいるのは当たり前である。フェルナンドにきつく抱きしめられたまま首を傾げていると、くん、とイアナの首筋の香りを嗅いだフェルナンドがわずかに体を離し、不可解そうな顔になった。
「香水をつけているね。どこかに出かける予定だった? ……まさか、ギオーニ男爵家とか言わないだろう?」
「出かける予定はありませんよ。旦那様がいらっしゃると聞いたのでつけたのですけど……あの、なぜギオーニ男爵家に行くと思われたのですか?」
ギオーニ男爵との話し合いはひとまず終了している。あとはフェルナンドの意見を聞いて、最終的に調整しようということになっているのだ。
イアナが訊ねると、フェルナンドは狼狽えて視線を左右に彷徨わせた。何か後ろ暗いことでもあるのだろうか。じっと見つめていると、降参と言うようにフェルナンドが眉尻を下げる。
「……君の妹から、花嫁を交換すると聞いたんだ。君はギオーニ男爵に嫁ぐと言われた。もちろんそんな道理が通るはずないし、男爵も常識のある方だ、ジョルジアナの代わりに君を……とはならないとわかっていたんだが、その……君は、うんと年上の男性が好きだから」
フェルナンドが、最後の方はぼそぼそと小声でつぶやく。
(えーっと、もしかして、わたしがギオーニ男爵にうっかりコロッといくんじゃないかって、心配していたってこと?)
ぽかんとすると、フェルナンドがバツの悪い顔になる。
「もちろん大丈夫だとは思ったよ。君が不貞を働くとも思っていない」
「でも心配だったんですね?」
「……だって、こういうのは理屈じゃないだろう?」
イアナを信じているのと、イアナに近づく男に嫉妬するのは、また別問題なのだとフェルナンドは言う。
イアナもそれはわかるような気がした。例えば魅力的な女性がフェルナンドに色目を使っているのを見たら、イアナだって嫉妬するだろう。フェルナンドを信じていても、やっぱりもやもやしてしまうものだ。
イアナは笑って、つま先立ちになると、フェルナンドの頬にちゅっと唇で触れた。
「駆けつけてくれて嬉しいです。ギオーニ男爵とコンソラータ様との話し合いの内容をお伝えしたいので、まずは部屋に行きませんか? 旦那様も着替えないと」
「ああ、そうだな。だがその前に」
フェルナンドは上体をかがめると、イアナの唇に触れるだけのキスをする。
「会いたかったよ、イアナ」
フェルナンドはあまり玄関でこういうことをする人ではなかったのだが、一週間以上ぶりに会ったので気分が高揚しているのだろうか。
そしてそれはイアナも同じなので、今日くらいは許されるかしらと、フェルナンドの首に腕を回してキスを返した。
「え? 旦那様が?」
「はい! 今先ほど連絡がありまして、あと三十分ほどで到着なさるそうです」
「ええ⁉」
なんと、フェルナンドが王都にやって来たらしい。
イアナは書きかけていた手紙を放置し、クロエとマーラに手伝ってもらって急いで着替えをすませると、髪を結ってもらった。楽な格好をしていてもフェルナンドは気にしないだろうが、久しぶりに会う夫にはできるだけ綺麗な姿を見てもらいたいからだ。
化粧を終えて慌ただしく玄関へ向かうと、ちょうど馬車が玄関前に到着したところだった。
「イアナ!」
執事が玄関扉を開けるよりも早く、バタンと扉を開けてフェルナンドが入って来た。挨拶をする間もなく抱きしめられて、イアナは目を白黒とさせた。
「だ、旦那様?」
「ああ、イアナ。よかった、ここにいた……」
「え、ええ……?」
ここにいたも何も、ステファーニ公爵夫人である自分がタウンハウスにいるのは当たり前である。フェルナンドにきつく抱きしめられたまま首を傾げていると、くん、とイアナの首筋の香りを嗅いだフェルナンドがわずかに体を離し、不可解そうな顔になった。
「香水をつけているね。どこかに出かける予定だった? ……まさか、ギオーニ男爵家とか言わないだろう?」
「出かける予定はありませんよ。旦那様がいらっしゃると聞いたのでつけたのですけど……あの、なぜギオーニ男爵家に行くと思われたのですか?」
ギオーニ男爵との話し合いはひとまず終了している。あとはフェルナンドの意見を聞いて、最終的に調整しようということになっているのだ。
イアナが訊ねると、フェルナンドは狼狽えて視線を左右に彷徨わせた。何か後ろ暗いことでもあるのだろうか。じっと見つめていると、降参と言うようにフェルナンドが眉尻を下げる。
「……君の妹から、花嫁を交換すると聞いたんだ。君はギオーニ男爵に嫁ぐと言われた。もちろんそんな道理が通るはずないし、男爵も常識のある方だ、ジョルジアナの代わりに君を……とはならないとわかっていたんだが、その……君は、うんと年上の男性が好きだから」
フェルナンドが、最後の方はぼそぼそと小声でつぶやく。
(えーっと、もしかして、わたしがギオーニ男爵にうっかりコロッといくんじゃないかって、心配していたってこと?)
ぽかんとすると、フェルナンドがバツの悪い顔になる。
「もちろん大丈夫だとは思ったよ。君が不貞を働くとも思っていない」
「でも心配だったんですね?」
「……だって、こういうのは理屈じゃないだろう?」
イアナを信じているのと、イアナに近づく男に嫉妬するのは、また別問題なのだとフェルナンドは言う。
イアナもそれはわかるような気がした。例えば魅力的な女性がフェルナンドに色目を使っているのを見たら、イアナだって嫉妬するだろう。フェルナンドを信じていても、やっぱりもやもやしてしまうものだ。
イアナは笑って、つま先立ちになると、フェルナンドの頬にちゅっと唇で触れた。
「駆けつけてくれて嬉しいです。ギオーニ男爵とコンソラータ様との話し合いの内容をお伝えしたいので、まずは部屋に行きませんか? 旦那様も着替えないと」
「ああ、そうだな。だがその前に」
フェルナンドは上体をかがめると、イアナの唇に触れるだけのキスをする。
「会いたかったよ、イアナ」
フェルナンドはあまり玄関でこういうことをする人ではなかったのだが、一週間以上ぶりに会ったので気分が高揚しているのだろうか。
そしてそれはイアナも同じなので、今日くらいは許されるかしらと、フェルナンドの首に腕を回してキスを返した。
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