58 / 173
第一部 街角パン屋の訳あり娘
精霊の棲む森 2
しおりを挟む
王都の東隣にあるティル伯爵領の、領主の邸に到着したのは、空が熟れすぎたオレンジ色に染まったころのことだった。
王都から近いので気候に差はないが、しいて言えば少しだけ空気が綺麗な気がした。王都と比べて緑が多いのでそう思うのだろうか。
馬車を降りると、邸の玄関前には、青白い顔をした頬のこけた中年男性と、眉がやたらと細い少し気の強そうな中年女性。そして十数名の男女の使用人がずらりと並んでいる。
青白い顔をした男がティル伯爵で、眉の細い女性が伯爵夫人であろう。
「まあまあ殿下、わざわざご足労頂き恐縮ですわ」
家長である夫を押しのけるようにして前に出て、両手を胸の前で組んでやたらと高い声でウォレスに挨拶する夫人を見れば、この夫婦の力関係がわかるというものだ。
(ま、伯爵は気が弱そうだものね)
だから、精霊の祟りを恐れてやつれてしまったのだろう。豪胆な人間ならば、ここまでやつれたりはしない。
さあさあどうぞ、と夫人の先導で邸の中に入る。
「本当に、申し訳ございません。まさかオクタヴィアン殿下がいらしてくださるなんて……」
恐縮しきった様子の伯爵が、ウォレスの隣を歩きながら言う。
「兄が新婚旅行中だからな。妙な事件だ、調査は早い方がいいだろう?」
可哀想なくらいやつれているティル伯爵を気遣っているのか、ウォレスの口調はとても優しい。
ウォレスが伯爵夫妻と話をしている間に、サーラはベレニスとともに、使用人に案内されて二階の客室へ向かった。ウォレスの部屋に荷物を運び、整えるのである。
マルセルとシャルはウォレスの護衛としてウォレスに同行だ。
ウォレスが使う部屋は続き部屋で、中央の主寝室の扉に立って左の部屋が侍女の控室になるという。
マルセルとシャルは廊下を挟んで反対側の部屋だ。
バスルームは主寝室の右隣。こちらも内扉でつながっている。
侍女が使う左の部屋にも、続きのバスルームがあったが、こちらは使用人が使うことが想定されているので主寝室の続きのバスルームよりも小さい。しかし、もちろんサーラの家のバスルームよりははるかに広かった。
バスルームにはすでにソープやバスオイルなどが揃っている。
「サーラ、殿下の着替えをクローゼットへお願いしますね」
案内役の使用人が下がると、ベレニスがサーラにそう命じて、自分は手荷物の中から何かの試薬を取り出した。
(ああ、毒物検査ね)
ないとは思うが、何かあってからでは遅い。
ベレニスはバスルームのソープやオイル、それから備え付けの茶葉など、確認できるものはすべて試薬を使って検査をするようだ。
ウォレスからの事前情報では、ティル伯爵家は第一王子寄りらしい。
とはいえ、ティル伯爵夫人がセザールの母である第三妃と友人という関係であるだけで、伯爵個人はどちらかといえば中立だそうだ。夫人が第三妃と仲がいいので、周囲から第一王子寄りだと思われているのだと言う。
第一王子と第二王子の王位争いがどのようなものなのかは、サーラは詳しくは知らない。
ウォレスの雰囲気を見るに、互いの足を引っ張りあうと言うよりは、自分自身を高め評価を集めるという方向性のようなので、それほどぎすぎすしたものではないような気もしているが、こればっかりは想像では語れまい。
当人たちの思惑だけでなく、派閥間の問題もあるだろうからだ。
ウォレスが使う部屋の毒物検査を終えると、ベレニスは今度は侍女が使う部屋の毒物検査もはじめた。
その頃にはサーラはウォレスの荷物を片付け終えていたので、自分とベレニスの荷物の荷解きへ移る。
「サーラ、こちらへ」
毒物検査が終わると、ベレニスが少し声を落としてサーラを呼んだ。そして、何かの液体が入った小瓶を手渡す。
「念のため解毒薬を渡しておきます。瓶の色が違うので覚えてください」
青と赤、それから白い小瓶の解毒薬の説明を受け、さらには解毒薬が存在しない毒が盛られた時のために嘔吐薬も渡される。
ウォレスの様子がおかしければすぐベレニスを呼ぶように、万が一近くにいない場合は渡した薬で応急処置をするように言われた。
「ここはそれほど警戒が必要な場所ですか?」
「伯爵夫妻については殿下の命を狙うようなことはないと思っています。ただ、今回の護衛は、シャルさんを入れて二人です。精霊の祟りなんて大声で言えるものではありませんから、伯爵家に招待されて都合がついたので遊びに行ったと言う体を取っておりますので、護衛は最低限にしておりますから」
それもあるだろうが、護衛を少なくせざるを得なかったのはサーラが同行したことが大きい。騎士の中には仕事などで下町を訪れる者もいる。気を使ってくれたのだ。
「殿下にも武術の心得はありますし、毒に対する知識もあります。お渡しするのは、あくまで万が一の時の保険ですから、それほど緊張なさらないでください」
「はい……」
万が一の保険と言われても、毒を盛られる可能性があると言われれば緊張してしまう。
かつて公爵令嬢として生き、そしてその立場を奪われたサーラは、貴族社会の恐ろしさをわかっていたつもりだった。
けれども、社交デビューする以前に幼くして貴族社会を離れたサーラは、本当の意味では理解できていなかったのかもしれない。
(ウォレス様は……こんな世界で生きていたのね)
きらびやかな貴族社会の、どろどろと陰湿な裏の顔。
邪魔な人間を陥れ、時には命すら奪い、その骸の上でワルツを踊るような、そんな世界。
謀略が蜘蛛の巣のように張り巡らされた世界では、小さな油断が命取りになる。
サーラの実の両親は、そんな蜘蛛の巣にからめとられた敗者なのだ。
だから捕食された。
サーラは渡された薬をきゅっと握り締めて、大きく息を吸い込む。
サーラは今、貴族社会にいる。
下町のあの家に戻るまで、決して油断はしてはならないのだと、サーラは己に言い聞かせた。
王都から近いので気候に差はないが、しいて言えば少しだけ空気が綺麗な気がした。王都と比べて緑が多いのでそう思うのだろうか。
馬車を降りると、邸の玄関前には、青白い顔をした頬のこけた中年男性と、眉がやたらと細い少し気の強そうな中年女性。そして十数名の男女の使用人がずらりと並んでいる。
青白い顔をした男がティル伯爵で、眉の細い女性が伯爵夫人であろう。
「まあまあ殿下、わざわざご足労頂き恐縮ですわ」
家長である夫を押しのけるようにして前に出て、両手を胸の前で組んでやたらと高い声でウォレスに挨拶する夫人を見れば、この夫婦の力関係がわかるというものだ。
(ま、伯爵は気が弱そうだものね)
だから、精霊の祟りを恐れてやつれてしまったのだろう。豪胆な人間ならば、ここまでやつれたりはしない。
さあさあどうぞ、と夫人の先導で邸の中に入る。
「本当に、申し訳ございません。まさかオクタヴィアン殿下がいらしてくださるなんて……」
恐縮しきった様子の伯爵が、ウォレスの隣を歩きながら言う。
「兄が新婚旅行中だからな。妙な事件だ、調査は早い方がいいだろう?」
可哀想なくらいやつれているティル伯爵を気遣っているのか、ウォレスの口調はとても優しい。
ウォレスが伯爵夫妻と話をしている間に、サーラはベレニスとともに、使用人に案内されて二階の客室へ向かった。ウォレスの部屋に荷物を運び、整えるのである。
マルセルとシャルはウォレスの護衛としてウォレスに同行だ。
ウォレスが使う部屋は続き部屋で、中央の主寝室の扉に立って左の部屋が侍女の控室になるという。
マルセルとシャルは廊下を挟んで反対側の部屋だ。
バスルームは主寝室の右隣。こちらも内扉でつながっている。
侍女が使う左の部屋にも、続きのバスルームがあったが、こちらは使用人が使うことが想定されているので主寝室の続きのバスルームよりも小さい。しかし、もちろんサーラの家のバスルームよりははるかに広かった。
バスルームにはすでにソープやバスオイルなどが揃っている。
「サーラ、殿下の着替えをクローゼットへお願いしますね」
案内役の使用人が下がると、ベレニスがサーラにそう命じて、自分は手荷物の中から何かの試薬を取り出した。
(ああ、毒物検査ね)
ないとは思うが、何かあってからでは遅い。
ベレニスはバスルームのソープやオイル、それから備え付けの茶葉など、確認できるものはすべて試薬を使って検査をするようだ。
ウォレスからの事前情報では、ティル伯爵家は第一王子寄りらしい。
とはいえ、ティル伯爵夫人がセザールの母である第三妃と友人という関係であるだけで、伯爵個人はどちらかといえば中立だそうだ。夫人が第三妃と仲がいいので、周囲から第一王子寄りだと思われているのだと言う。
第一王子と第二王子の王位争いがどのようなものなのかは、サーラは詳しくは知らない。
ウォレスの雰囲気を見るに、互いの足を引っ張りあうと言うよりは、自分自身を高め評価を集めるという方向性のようなので、それほどぎすぎすしたものではないような気もしているが、こればっかりは想像では語れまい。
当人たちの思惑だけでなく、派閥間の問題もあるだろうからだ。
ウォレスが使う部屋の毒物検査を終えると、ベレニスは今度は侍女が使う部屋の毒物検査もはじめた。
その頃にはサーラはウォレスの荷物を片付け終えていたので、自分とベレニスの荷物の荷解きへ移る。
「サーラ、こちらへ」
毒物検査が終わると、ベレニスが少し声を落としてサーラを呼んだ。そして、何かの液体が入った小瓶を手渡す。
「念のため解毒薬を渡しておきます。瓶の色が違うので覚えてください」
青と赤、それから白い小瓶の解毒薬の説明を受け、さらには解毒薬が存在しない毒が盛られた時のために嘔吐薬も渡される。
ウォレスの様子がおかしければすぐベレニスを呼ぶように、万が一近くにいない場合は渡した薬で応急処置をするように言われた。
「ここはそれほど警戒が必要な場所ですか?」
「伯爵夫妻については殿下の命を狙うようなことはないと思っています。ただ、今回の護衛は、シャルさんを入れて二人です。精霊の祟りなんて大声で言えるものではありませんから、伯爵家に招待されて都合がついたので遊びに行ったと言う体を取っておりますので、護衛は最低限にしておりますから」
それもあるだろうが、護衛を少なくせざるを得なかったのはサーラが同行したことが大きい。騎士の中には仕事などで下町を訪れる者もいる。気を使ってくれたのだ。
「殿下にも武術の心得はありますし、毒に対する知識もあります。お渡しするのは、あくまで万が一の時の保険ですから、それほど緊張なさらないでください」
「はい……」
万が一の保険と言われても、毒を盛られる可能性があると言われれば緊張してしまう。
かつて公爵令嬢として生き、そしてその立場を奪われたサーラは、貴族社会の恐ろしさをわかっていたつもりだった。
けれども、社交デビューする以前に幼くして貴族社会を離れたサーラは、本当の意味では理解できていなかったのかもしれない。
(ウォレス様は……こんな世界で生きていたのね)
きらびやかな貴族社会の、どろどろと陰湿な裏の顔。
邪魔な人間を陥れ、時には命すら奪い、その骸の上でワルツを踊るような、そんな世界。
謀略が蜘蛛の巣のように張り巡らされた世界では、小さな油断が命取りになる。
サーラの実の両親は、そんな蜘蛛の巣にからめとられた敗者なのだ。
だから捕食された。
サーラは渡された薬をきゅっと握り締めて、大きく息を吸い込む。
サーラは今、貴族社会にいる。
下町のあの家に戻るまで、決して油断はしてはならないのだと、サーラは己に言い聞かせた。
190
あなたにおすすめの小説
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる
鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳――
それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。
公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。
だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、
王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。
政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。
紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが――
魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、
まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。
「……私が女王? 冗談じゃないわ」
回避策として動いたはずが、
誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。
しかも彼は、
幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた――
年を取らぬ姿のままで。
永遠に老いない少女と、
彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。
王妃になどなる気はない。
けれど、逃げ続けることももうできない。
これは、
歴史の影に生きてきた少女が、
はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。
ざまぁも陰謀も押し付けない。
それでも――
この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる