81 / 173
第一部 街角パン屋の訳あり娘
神の子を名乗る男 2
しおりを挟む
「なるほどな……」
次の日の十時十分ごろ、ウォレスがパン屋ポルポルにやって来た。
リジーはまだ来ていない。おそらくあと五分か十分もすれば来るだろう。
飲食スペースの前に座ったウォレスにお茶を出し、シナモンロールを出した。今日は来ることを知らなかったのでブリオッシュは取り置きしていなかったのだ。
サーラが対面に座ると、ウォレスがちらりと首元を確かめる。そして首元で揺れる青い輝きに満足そうに目を細めると、シナモンロールにかぶりついた。
「神の子か。それはこの目で見ておきたいが……娼館は無理だろうな」
ウォレスの視線が、パン屋の扉のガラス窓の奥へと向く。
外に停められている馬車の御者台には、いつも通りマルセルが座っていた。
「だから、もしセレニテが来るならわたしが行ってこようと思って」
「危ないんじゃないのか?」
「娼館通りのあたりは、あれでなかなか治安がいいらしいんです。男衆が見回りしていますから。お兄ちゃんが言っていました」
「だが、娼婦目当ての男がたくさん来るのだろう?」
テーブルの上に投げ出していたサーラの手に、シナモンロールを持っていない方のウォレスの片手が重なる。
つーっとくすぐるように手の甲を撫でられて、サーラは恥ずかしくなって視線を斜めに落とした。
顔がほてっていくのがわかる。
「露出の高い服は着るなよ」
「もともと、そんな服は持ってませんよ」
「香水もつけるな」
「つけませんって」
「化粧もだめだ。ついでに帽子をかぶっていけ」
あれこれと注文をつけてくる。
心配性だなあと肩をすくめて、サーラは頷いた。
「そうしますけど、わたしに興味を持つ人はいないと思いますよ」
(なんたって、絶壁だし)
ヴァルヴァラの、あの豊満な胸のふくらみを思い出しながら胸の中でつぶやく。
色を売る町に来る男たちだ。サーラのような色気の欠片もないような女に興味を示すはずがない。
「いないはずがないだろう。現に君の目の前に一人いるじゃないか」
真顔で、照れるようなことを言わないでほしい。
サーラはどきどき言いはじめた鼓動を落ち着けようと、ティーカップに手を伸ばす。
「なあ」
「なんです?」
「ちょっと、馬車に行かないか」
「馬車に何の用事があるんですか?」
「用事というか……。ここじゃあ、キスの一つもできない」
「ぶっ!」
変なことを言うから、紅茶をちょっと噴き出してしまったではないか。
「なっ、何を言うんですかっ! 行きませんよ!」
「じゃあここでいいのか? いつ客が入ってくるかわからないが……」
「いいはずないでしょう⁉」
真面目な話をしていたはずなのに、この男は何を考えているのだろう。
ウォレスはむっと口をへの字に曲げだ。
「なかなか二人きりになれないのは考えものだな……」
パン屋の中には二人きりだが、完全に二人きりというわけでもない。
カウンターの奥の調理場にはアドルフがいるし、たまにグレースも出入りしている。
パン屋なので、いつ客が入って来るかもわからない。
本当ならば、こんなところでの際どい会話も避けるべきなのだ。
まったくもう、とため息を吐いたとき、チリンとベルが鳴った。
ウォレスの手が、ぱっとサーラの手から離れる。
「あー! ウォレス様!」
入って来たのはリジーだった。
ぱあっと顔を輝かせて、スキップでもしそうな足取りで飲食スペースまでやって来た。
「サーラ、サーラ、あたしも~」
「はいはい、お茶ね。パンはどうする?」
「じゃあ、ウォレス様と同じシナモンロールで!」
「了解」
ちょっと赤い顔がリジーに気づかれないうちに、サーラは少々急ぎ足で、紅茶を淹れるためにカウンターの奥へ向かう。
ウォレスにくすぐられていた手の甲が左の手の甲が熱い。
(キスなんて、さらっと言わないでよ……)
付き合いはじめて八日。
四阿でして以来、まだ一度もキスしていないが、だからってわざわざそのために馬車の中に入るのはおかしいだろう。馬車の帳を閉めたところでマルセルには勘繰られるだろうし、恥ずかしくてサーラの頭がどうにかなってしまいそうになる。
グレースの腰の具合もだんだん良くなってきていて、最近では、たまには店番を変わるから遊んできなさいと言ってくれるけれど、それをウォレスに言うのは、なんだか自分からデートに誘っているみたいで照れてしまって言えなかった。
ウォレスも紅茶のお代わりがほしいだろうからと、多めに入れた紅茶をティーポットに入れたまま飲食スペースに戻る。
リジーに紅茶を差し出し、それからからっぽになっていたウォレスのティーカップに紅茶を注いだ。
サーラが紅茶を淹れている間、リジーは昨日のセレニテの噂話を披露していたらしい。
「もし姐さんがセレニテを呼ぶことに成功したら、ウォレス様も見に行きましょうよぅ」
「いや、私はたぶん無理だ。だが、マルセルを行かせるよ。女の子たちがあのあたりをうろうろするのなら護衛も必要だろう?」
マルセルに相談もなく、彼の同行が決定していた。
(……可哀想に)
マルセルは第二王子の筆頭護衛官のはずなのに、いつもいいように使われている。
「それにしても、セレニテは今度はどんな『奇跡』を起こしたんだろうね」
「前回のは、サーラの推理通りなら奇跡でも何でもないですもんね~」
セレニテが人を生き返らせたというあの奇跡は、サーラの予想通りならただの自作自演だ。
奇跡どころか、トリックですらない。
(たぶん今回も奇跡ではないと思うけど……、あちこちで『奇跡』と言って妙なことをして回っているなんて、セレニテの目的は何なのかしらね)
サーラとしては、奇跡の内容そのものよりも、セレニテの目的の方に興味がある。
――リジーから、ヴァルヴァラがセレニテを娼館に招くことに成功したと聞かされたのは、翌日のことだった。
次の日の十時十分ごろ、ウォレスがパン屋ポルポルにやって来た。
リジーはまだ来ていない。おそらくあと五分か十分もすれば来るだろう。
飲食スペースの前に座ったウォレスにお茶を出し、シナモンロールを出した。今日は来ることを知らなかったのでブリオッシュは取り置きしていなかったのだ。
サーラが対面に座ると、ウォレスがちらりと首元を確かめる。そして首元で揺れる青い輝きに満足そうに目を細めると、シナモンロールにかぶりついた。
「神の子か。それはこの目で見ておきたいが……娼館は無理だろうな」
ウォレスの視線が、パン屋の扉のガラス窓の奥へと向く。
外に停められている馬車の御者台には、いつも通りマルセルが座っていた。
「だから、もしセレニテが来るならわたしが行ってこようと思って」
「危ないんじゃないのか?」
「娼館通りのあたりは、あれでなかなか治安がいいらしいんです。男衆が見回りしていますから。お兄ちゃんが言っていました」
「だが、娼婦目当ての男がたくさん来るのだろう?」
テーブルの上に投げ出していたサーラの手に、シナモンロールを持っていない方のウォレスの片手が重なる。
つーっとくすぐるように手の甲を撫でられて、サーラは恥ずかしくなって視線を斜めに落とした。
顔がほてっていくのがわかる。
「露出の高い服は着るなよ」
「もともと、そんな服は持ってませんよ」
「香水もつけるな」
「つけませんって」
「化粧もだめだ。ついでに帽子をかぶっていけ」
あれこれと注文をつけてくる。
心配性だなあと肩をすくめて、サーラは頷いた。
「そうしますけど、わたしに興味を持つ人はいないと思いますよ」
(なんたって、絶壁だし)
ヴァルヴァラの、あの豊満な胸のふくらみを思い出しながら胸の中でつぶやく。
色を売る町に来る男たちだ。サーラのような色気の欠片もないような女に興味を示すはずがない。
「いないはずがないだろう。現に君の目の前に一人いるじゃないか」
真顔で、照れるようなことを言わないでほしい。
サーラはどきどき言いはじめた鼓動を落ち着けようと、ティーカップに手を伸ばす。
「なあ」
「なんです?」
「ちょっと、馬車に行かないか」
「馬車に何の用事があるんですか?」
「用事というか……。ここじゃあ、キスの一つもできない」
「ぶっ!」
変なことを言うから、紅茶をちょっと噴き出してしまったではないか。
「なっ、何を言うんですかっ! 行きませんよ!」
「じゃあここでいいのか? いつ客が入ってくるかわからないが……」
「いいはずないでしょう⁉」
真面目な話をしていたはずなのに、この男は何を考えているのだろう。
ウォレスはむっと口をへの字に曲げだ。
「なかなか二人きりになれないのは考えものだな……」
パン屋の中には二人きりだが、完全に二人きりというわけでもない。
カウンターの奥の調理場にはアドルフがいるし、たまにグレースも出入りしている。
パン屋なので、いつ客が入って来るかもわからない。
本当ならば、こんなところでの際どい会話も避けるべきなのだ。
まったくもう、とため息を吐いたとき、チリンとベルが鳴った。
ウォレスの手が、ぱっとサーラの手から離れる。
「あー! ウォレス様!」
入って来たのはリジーだった。
ぱあっと顔を輝かせて、スキップでもしそうな足取りで飲食スペースまでやって来た。
「サーラ、サーラ、あたしも~」
「はいはい、お茶ね。パンはどうする?」
「じゃあ、ウォレス様と同じシナモンロールで!」
「了解」
ちょっと赤い顔がリジーに気づかれないうちに、サーラは少々急ぎ足で、紅茶を淹れるためにカウンターの奥へ向かう。
ウォレスにくすぐられていた手の甲が左の手の甲が熱い。
(キスなんて、さらっと言わないでよ……)
付き合いはじめて八日。
四阿でして以来、まだ一度もキスしていないが、だからってわざわざそのために馬車の中に入るのはおかしいだろう。馬車の帳を閉めたところでマルセルには勘繰られるだろうし、恥ずかしくてサーラの頭がどうにかなってしまいそうになる。
グレースの腰の具合もだんだん良くなってきていて、最近では、たまには店番を変わるから遊んできなさいと言ってくれるけれど、それをウォレスに言うのは、なんだか自分からデートに誘っているみたいで照れてしまって言えなかった。
ウォレスも紅茶のお代わりがほしいだろうからと、多めに入れた紅茶をティーポットに入れたまま飲食スペースに戻る。
リジーに紅茶を差し出し、それからからっぽになっていたウォレスのティーカップに紅茶を注いだ。
サーラが紅茶を淹れている間、リジーは昨日のセレニテの噂話を披露していたらしい。
「もし姐さんがセレニテを呼ぶことに成功したら、ウォレス様も見に行きましょうよぅ」
「いや、私はたぶん無理だ。だが、マルセルを行かせるよ。女の子たちがあのあたりをうろうろするのなら護衛も必要だろう?」
マルセルに相談もなく、彼の同行が決定していた。
(……可哀想に)
マルセルは第二王子の筆頭護衛官のはずなのに、いつもいいように使われている。
「それにしても、セレニテは今度はどんな『奇跡』を起こしたんだろうね」
「前回のは、サーラの推理通りなら奇跡でも何でもないですもんね~」
セレニテが人を生き返らせたというあの奇跡は、サーラの予想通りならただの自作自演だ。
奇跡どころか、トリックですらない。
(たぶん今回も奇跡ではないと思うけど……、あちこちで『奇跡』と言って妙なことをして回っているなんて、セレニテの目的は何なのかしらね)
サーラとしては、奇跡の内容そのものよりも、セレニテの目的の方に興味がある。
――リジーから、ヴァルヴァラがセレニテを娼館に招くことに成功したと聞かされたのは、翌日のことだった。
140
あなたにおすすめの小説
偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~
咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】
あらすじ
「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」
聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。
彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。
しかし、エリーナはめげなかった。
実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ!
北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。
すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。
「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」
とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。
以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。
最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!
エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」
華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。
縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。
そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。
よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!!
「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。
ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、
「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」
と何やら焦っていて。
……まあ細かいことはいいでしょう。
なにせ、その腕、その太もも、その背中。
最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!!
女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。
誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート!
※他サイトに投稿したものを、改稿しています。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる
鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳――
それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。
公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。
だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、
王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。
政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。
紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが――
魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、
まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。
「……私が女王? 冗談じゃないわ」
回避策として動いたはずが、
誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。
しかも彼は、
幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた――
年を取らぬ姿のままで。
永遠に老いない少女と、
彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。
王妃になどなる気はない。
けれど、逃げ続けることももうできない。
これは、
歴史の影に生きてきた少女が、
はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。
ざまぁも陰謀も押し付けない。
それでも――
この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる