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第二部 すべてを奪われた少女は隣国にて返り咲く
さよならの行方 1
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シャミナード公爵家の息のかかった貴族が全員捕縛され、ウォレスは城に戻ることになった。
サーラはウォレスの気遣いで、しばらくサヴァール伯爵家で家族とともに過ごすように言われた。とはいえ、シャルは近衛兵なので忙しく、ほとんど城に泊まりこみであるが。
サーラを侍女として城に連れて行かなかったのは、ウォレスなりの気遣いだろう。
城にはまだ捕らえられたシャミナード公爵がいる。
取り調べは依然として続いているし、身柄をどうするかも決まっていないからだ。
下町の神の子のファンを名乗る者たちは、暴徒となる前に取り締まられた。
下町に大きな被害はなく、貴族の間でも多少の衝突はあれど、こちら側に大きな被害は出なかったと聞く。
しかし、捕縛は終わったが、城の混乱はまだ続くだろう。
まず、役職についている文官の大勢が捕縛されたため、体勢を整えるのが大変だ。
ブノアもアルフレッドたちも、寝る暇がないほどだという。
(これで、終わり……)
サーラはペンを置いて、ゆっくりと目を閉じる。
最後の一通。「ウォレス様へ」と書かれたそれを、ライディングデスクの鍵付きの引き出しへ納めて、テーブルの上に鍵と、それからサーラの母の形見であるサファイアのブローチを置いた。
(ほんのひと時、わたしがあなたの側にいたことを……どうか、忘れないで)
――この日、サーラはひっそりと、王都から去った……。
☆
サーラが消えて、五日――
「まだ見つからないのか‼」
ウォレスが激情のまま机の上から払い落とした書類を静かに拾いつつ、ブノアが、申し訳ございませんと小さくつぶやく。
その悄然とした声にハッとしたウォレスは、がしがしと頭をかいて椅子に座りなおした。
ブノアにあたったところで仕方がない。
サーラがみんなに黙って一人で姿を消すなんて、誰も思っていなかったからだ。
(サーラはいつから計画していたんだろう……)
ぐしゃりと、サーラの残した手紙を握り締める。
何度も読み返し、何度も叫んだ。
何故――何故、と答えのない問いを何度も繰り返す。
(一緒に行こうと言ったのに、どうして……)
サーラの手紙とともに残された綺麗なサファイアのブローチ。
まるでサーラの瞳そのもののようなそれは、彼女の残した執着のようにも思えるのに、何故。
「殿下、荒れているところすみませんが、こちらも仕事が片付かないんです。それに、もうお昼ですよ。陛下に呼ばれているのを忘れているんじゃないでしょうね?」
アルフレッドが苛立った口調で言う。
ウォレスはアルフレッドに怒鳴り返しそうになって、やめた。
この変人が、意外にもサーラの失踪にショックを受けていることを知っていたからだ。
「……悪い。少し、一人にしてくれ。十分でいい」
今のこのとぐろを巻いた感情のまま父に謁見はできない。
ウォレスが言うと、アルフレッドが息を吐き出して、「十分だけです」と執務室を出て行った。
オーディロンがそれに続くと、ブノアも心配そうな顔で一礼し、マルセルの肩を叩いて一緒に部屋の外へ連れて行く。
一人だけになった執務室に、サーラがいなくなってから、もう軽く数百回はついているため息が落ちた。
何度読み返したかわからない、握り締めてぐしゃぐしゃになった手紙を開く。
ウォレス様へ、とはじまる手紙の文字は、少し震えていた。
『ウォレス様へ
こんなものを一つ残して、突然消えることをお許しください。
去年の春、下町でウォレス様に出会ってからこの一年、とても濃密な時間を過ごしたように感じます。
あの日、ウォレス様がポルポルに来なければ、わたしは今もただのパン屋の娘だったでしょう。
ウォレス様に恋をすることも、好きな人と一緒にいられる幸せを知ることも、失恋の苦しさを知ることも……、きっと一生なかったのだろうなと思います。
わたしの人生は、サラフィーネ・プランタットという名前とともに一度終わりました。
サーラという名前で二度目の人生がはじまったとき、わたしの心は半分死んでいたように思います。
わたしであって、わたしではなく、でもやっぱりわたしでしかなく……。
そんな妙な感じを抱えたままただすごしていた日常は、ウォレス様によって引っ掻き回されるようになって、最初はちょっと、腹立たしかったんですよ?
わたしはもう貴族には関わり合いになりたくないのに、そんなわたしの気持ちを土足で踏み荒らして笑うウォレス様に、なんて面倒くさい人に関わってしまったのだろうと思っていました。
でも、ウォレス様はわたしの知っている貴族とはどこか違って。
それどころかこの国の王子様で。
わたしのような厄介な存在は、殺してしまった方がウォレス様のためだと思ったのに、本当のわたしが誰なのかを知った後も平然と側にいてくれて……そんな優しいウォレス様に、わたしはきっと救われていたのかもしれません。
わたしの失った半身ごとわたしを受け入れてくれて、本当に嬉しかった。
そして、自然とわたしは、自分が気づくよりもずっと前からウォレス様に心を奪われていたのでしょう。
でも、ディエリア国の罪人の娘で、今はただの平民のわたしがウォレス様の側にいられるはずもなくて、だから自分の気づかないふりをしていたのに、ウォレス様は容赦なくわたしの感情を引きずり出してしまって……。
好きだって言われたときも、本当は断ろうと思っていたのに、少しだけ、ほんの少しだけでいいから、ウォレス様の隣にいたいと思ってしまいました。
あのときは、まさか侍女になってお城に行くことになるとは思いもしませんでしたけどね。
本当はもっとずっと一緒にいたかった。
国を出ようと考えていたわたしの考えに気づいて、身分を捨てて一緒に来てくれると言ってくれたとき、心の底から嬉しかったけれど、やっぱりそれはできません。
わたしは、優しいウォレス様が、優しい王様になるところが見てみたい。
何年、何十年も経ってから、ウォレス様が治める国を、こっそりと見にいきたい。
あなたが治めるこの国は、きっと優しさに満ち溢れていると思うから……だから、ウォレス様はこの国にいて、ウォレス様の理想とする王様になってください。
もちろん簡単なことではないとわかっていますけど、ウォレス様ならきっと、素敵な王様になれると、わたしは信じています。
ウォレス様と出会ってからの一年と少し……。
きっと、わたしの人生の中で、これ以上の幸せな時はないと思います。
あなたのことが、大好きでした。
だから、さようなら。
どうか、いつまでもお元気で。
追伸。ウォレス様から頂いたペンダントはもらっていきます。代わりに、母の形見のブローチを置いて行きます。わたしという存在がいたことを、頭のほんの片隅でもいいから……覚えておいていただけると、嬉しいです。
サーラ、そして、サラフィーネ・プランタットより』
手紙を読み終え、ウォレスは大きく息を吸い込む。
「君は、ずるい……身勝手だ…………」
ウォレスは手紙の皺を丁寧に伸ばして封筒に入れると、サファイアのブローチとともに引き出しに収める。
「だが、サーラ、君はわかっていない」
(私は、君以上に身勝手な男だから――)
「覚えているか、サーラ。あの日の占いの結果を」
どちらかが死ぬか、もしくは。
「俺はこんな結果は、望んでいないぞ」
二人が望む結果になると、占い師は言った。
だからウォレスは絶対に、諦めない。
サーラはウォレスの気遣いで、しばらくサヴァール伯爵家で家族とともに過ごすように言われた。とはいえ、シャルは近衛兵なので忙しく、ほとんど城に泊まりこみであるが。
サーラを侍女として城に連れて行かなかったのは、ウォレスなりの気遣いだろう。
城にはまだ捕らえられたシャミナード公爵がいる。
取り調べは依然として続いているし、身柄をどうするかも決まっていないからだ。
下町の神の子のファンを名乗る者たちは、暴徒となる前に取り締まられた。
下町に大きな被害はなく、貴族の間でも多少の衝突はあれど、こちら側に大きな被害は出なかったと聞く。
しかし、捕縛は終わったが、城の混乱はまだ続くだろう。
まず、役職についている文官の大勢が捕縛されたため、体勢を整えるのが大変だ。
ブノアもアルフレッドたちも、寝る暇がないほどだという。
(これで、終わり……)
サーラはペンを置いて、ゆっくりと目を閉じる。
最後の一通。「ウォレス様へ」と書かれたそれを、ライディングデスクの鍵付きの引き出しへ納めて、テーブルの上に鍵と、それからサーラの母の形見であるサファイアのブローチを置いた。
(ほんのひと時、わたしがあなたの側にいたことを……どうか、忘れないで)
――この日、サーラはひっそりと、王都から去った……。
☆
サーラが消えて、五日――
「まだ見つからないのか‼」
ウォレスが激情のまま机の上から払い落とした書類を静かに拾いつつ、ブノアが、申し訳ございませんと小さくつぶやく。
その悄然とした声にハッとしたウォレスは、がしがしと頭をかいて椅子に座りなおした。
ブノアにあたったところで仕方がない。
サーラがみんなに黙って一人で姿を消すなんて、誰も思っていなかったからだ。
(サーラはいつから計画していたんだろう……)
ぐしゃりと、サーラの残した手紙を握り締める。
何度も読み返し、何度も叫んだ。
何故――何故、と答えのない問いを何度も繰り返す。
(一緒に行こうと言ったのに、どうして……)
サーラの手紙とともに残された綺麗なサファイアのブローチ。
まるでサーラの瞳そのもののようなそれは、彼女の残した執着のようにも思えるのに、何故。
「殿下、荒れているところすみませんが、こちらも仕事が片付かないんです。それに、もうお昼ですよ。陛下に呼ばれているのを忘れているんじゃないでしょうね?」
アルフレッドが苛立った口調で言う。
ウォレスはアルフレッドに怒鳴り返しそうになって、やめた。
この変人が、意外にもサーラの失踪にショックを受けていることを知っていたからだ。
「……悪い。少し、一人にしてくれ。十分でいい」
今のこのとぐろを巻いた感情のまま父に謁見はできない。
ウォレスが言うと、アルフレッドが息を吐き出して、「十分だけです」と執務室を出て行った。
オーディロンがそれに続くと、ブノアも心配そうな顔で一礼し、マルセルの肩を叩いて一緒に部屋の外へ連れて行く。
一人だけになった執務室に、サーラがいなくなってから、もう軽く数百回はついているため息が落ちた。
何度読み返したかわからない、握り締めてぐしゃぐしゃになった手紙を開く。
ウォレス様へ、とはじまる手紙の文字は、少し震えていた。
『ウォレス様へ
こんなものを一つ残して、突然消えることをお許しください。
去年の春、下町でウォレス様に出会ってからこの一年、とても濃密な時間を過ごしたように感じます。
あの日、ウォレス様がポルポルに来なければ、わたしは今もただのパン屋の娘だったでしょう。
ウォレス様に恋をすることも、好きな人と一緒にいられる幸せを知ることも、失恋の苦しさを知ることも……、きっと一生なかったのだろうなと思います。
わたしの人生は、サラフィーネ・プランタットという名前とともに一度終わりました。
サーラという名前で二度目の人生がはじまったとき、わたしの心は半分死んでいたように思います。
わたしであって、わたしではなく、でもやっぱりわたしでしかなく……。
そんな妙な感じを抱えたままただすごしていた日常は、ウォレス様によって引っ掻き回されるようになって、最初はちょっと、腹立たしかったんですよ?
わたしはもう貴族には関わり合いになりたくないのに、そんなわたしの気持ちを土足で踏み荒らして笑うウォレス様に、なんて面倒くさい人に関わってしまったのだろうと思っていました。
でも、ウォレス様はわたしの知っている貴族とはどこか違って。
それどころかこの国の王子様で。
わたしのような厄介な存在は、殺してしまった方がウォレス様のためだと思ったのに、本当のわたしが誰なのかを知った後も平然と側にいてくれて……そんな優しいウォレス様に、わたしはきっと救われていたのかもしれません。
わたしの失った半身ごとわたしを受け入れてくれて、本当に嬉しかった。
そして、自然とわたしは、自分が気づくよりもずっと前からウォレス様に心を奪われていたのでしょう。
でも、ディエリア国の罪人の娘で、今はただの平民のわたしがウォレス様の側にいられるはずもなくて、だから自分の気づかないふりをしていたのに、ウォレス様は容赦なくわたしの感情を引きずり出してしまって……。
好きだって言われたときも、本当は断ろうと思っていたのに、少しだけ、ほんの少しだけでいいから、ウォレス様の隣にいたいと思ってしまいました。
あのときは、まさか侍女になってお城に行くことになるとは思いもしませんでしたけどね。
本当はもっとずっと一緒にいたかった。
国を出ようと考えていたわたしの考えに気づいて、身分を捨てて一緒に来てくれると言ってくれたとき、心の底から嬉しかったけれど、やっぱりそれはできません。
わたしは、優しいウォレス様が、優しい王様になるところが見てみたい。
何年、何十年も経ってから、ウォレス様が治める国を、こっそりと見にいきたい。
あなたが治めるこの国は、きっと優しさに満ち溢れていると思うから……だから、ウォレス様はこの国にいて、ウォレス様の理想とする王様になってください。
もちろん簡単なことではないとわかっていますけど、ウォレス様ならきっと、素敵な王様になれると、わたしは信じています。
ウォレス様と出会ってからの一年と少し……。
きっと、わたしの人生の中で、これ以上の幸せな時はないと思います。
あなたのことが、大好きでした。
だから、さようなら。
どうか、いつまでもお元気で。
追伸。ウォレス様から頂いたペンダントはもらっていきます。代わりに、母の形見のブローチを置いて行きます。わたしという存在がいたことを、頭のほんの片隅でもいいから……覚えておいていただけると、嬉しいです。
サーラ、そして、サラフィーネ・プランタットより』
手紙を読み終え、ウォレスは大きく息を吸い込む。
「君は、ずるい……身勝手だ…………」
ウォレスは手紙の皺を丁寧に伸ばして封筒に入れると、サファイアのブローチとともに引き出しに収める。
「だが、サーラ、君はわかっていない」
(私は、君以上に身勝手な男だから――)
「覚えているか、サーラ。あの日の占いの結果を」
どちらかが死ぬか、もしくは。
「俺はこんな結果は、望んでいないぞ」
二人が望む結果になると、占い師は言った。
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