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王の誕生
十八
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だが、ある時、王齕の地獄のような日々は終わりを告げた。いつものように、血反吐を吐くまで打ち据えられ、気を失い、眼が覚めた時、不思議と白への憎悪は消え、毬を抱いていた心が嘘のように凪いでいた。
「眼が覚めたか」
傍らには白が腰を落としていた。声音は何処か、普段より穏やかである気がする。
「俺はー」
「お前は自身の奥底に眠る、野性を摺伏させた」
「だが、俺はお前に傷一つつけることができなかった」
王齕は大の字になったまま、告げた。見上げた夜空は普段より清明に映る。
「そんなもの必要はない。大事なのは、お前の野性から不要なものを削ぎ落すことになった」
「削ぎ落す?」
「ああ。お前は死の淵に立ち、理性の鎖を野性で食い破った。しかし、放たれた野性は獣の如く、荒削りで制御が出来ない力だ。だから、俺は荒削りな部分を、お前を苛め抜くことで、削りとったのさ」
何処か茫洋とした話だった。それでも、すっと彼の話はすっと肚の底に落ち着いた。感じるのだ。以前の己とは別人であると。五感全ての感覚が冴えわたり、己の命などいつでも捨てることができるほどの淡泊な精神が備わっている。今なら白に、自ら首を刎ねよと命じられても、平然とやってのける自信さえある。
「お前は奴隷から解放されることを望み、戦士として生きることを決意した。命に頓着するものは、戦場で生き残ることはできない。だから、俺はお前が望んだものを与えた」
「そうか。俺は奴隷ではなくなったのか。でも、何処か人ではなくなったという気がしてならない」
呟いたが、別に感傷もない。
「いや。お前はまだ人だよ。人ではないとは、俺のような男を言うのさ」
言った白は無表情だった。だが、昏い闇を見つめる、双眸は銀砂を撒いたように美しく光っていた。
「眼が覚めたか」
傍らには白が腰を落としていた。声音は何処か、普段より穏やかである気がする。
「俺はー」
「お前は自身の奥底に眠る、野性を摺伏させた」
「だが、俺はお前に傷一つつけることができなかった」
王齕は大の字になったまま、告げた。見上げた夜空は普段より清明に映る。
「そんなもの必要はない。大事なのは、お前の野性から不要なものを削ぎ落すことになった」
「削ぎ落す?」
「ああ。お前は死の淵に立ち、理性の鎖を野性で食い破った。しかし、放たれた野性は獣の如く、荒削りで制御が出来ない力だ。だから、俺は荒削りな部分を、お前を苛め抜くことで、削りとったのさ」
何処か茫洋とした話だった。それでも、すっと彼の話はすっと肚の底に落ち着いた。感じるのだ。以前の己とは別人であると。五感全ての感覚が冴えわたり、己の命などいつでも捨てることができるほどの淡泊な精神が備わっている。今なら白に、自ら首を刎ねよと命じられても、平然とやってのける自信さえある。
「お前は奴隷から解放されることを望み、戦士として生きることを決意した。命に頓着するものは、戦場で生き残ることはできない。だから、俺はお前が望んだものを与えた」
「そうか。俺は奴隷ではなくなったのか。でも、何処か人ではなくなったという気がしてならない」
呟いたが、別に感傷もない。
「いや。お前はまだ人だよ。人ではないとは、俺のような男を言うのさ」
言った白は無表情だった。だが、昏い闇を見つめる、双眸は銀砂を撒いたように美しく光っていた。
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