1 / 1
ハチミツ喫茶へようこそ
しおりを挟む
ふんわりと、花の香りがしました。ふと気づくと目の前には木々のトンネル。その下にはクローバーの道。木漏れ日に照らされた白い花が、小さな明かりのように道案内してくれます。そしてトンネルを抜けると、透き通るようなはちみつ色の屋根。
ドアを開けると、歌うような優しい話声が聞こえてきます。そして、黄色と黒の縞々エプロンのマスター。
「いらっしゃいませ。はちみつ喫茶へようこそ。」
そう。ここは、はちみつ喫茶。
「こんにちは。」お客さんはそういって、ごほごほとせき込みました。
「こんにちは。大丈夫ですか?」
「大丈夫。ちょっとかぜをひいちゃって。」
『それなら私の出番ね!』
「えっ?誰?」歌うような話声。お客さんはお店中を見渡しました。しかし誰もいません。
『びっくりさせちゃったわね。』
『いきなり話しかけるからよ。』
『あら、この私が話しかけてあげたのよ。』
「はちみつたちです。」そう言ってマスターは、はちみつの瓶を手に取りました。
「このはちみつがしゃべったっていうんですか?」
『そうよ。私よ。』
「しゃべった!」お客さんは、また、ごほごほとせき込みました。
「まぁ、まずはあちらのソファーにおかけください。」
お客さんは言われるがままソファーに腰かけました。ソファーは花びらのように柔らかく、優しい肌触りをしていて、花の香りがしました。
お客さんは少し安心した気持ちになって、店内を見渡しました。さっきから話声はするのに、お客さんは一人きり。棚にはたくさんのはちみつが並んでいました。
「どのはちみつも違う色をしているのですね。」
「えぇ、色も香りも味もみんな違いますよ。それぞれに個性があっておもしろいです。」
マスターはスプーンを差し出しました。
「特に個性的なはちみつですが、今のあなたにとても合うと思います。」
「キャラメル?」
「いいえ。はちみつですよ。マヌカはちみつ。うちのお姫様です。」
『そうよ。私を食べて。さぁ、お話ししましょ。』
お客さんは思い切って口に入れました。すると…
そこはお城の庭。ハーブやお花が沢山植えられていました。小鳥のさえずりも聞こえます。
「どうゆうこと?」
『まぁ、いいじゃない。ゆっくりお話しましょうよ。』はちみつは優雅な声で言いました。
「えぇ…。」お客さんは戸惑いながらも、はちみつとおしゃべりを始めました。最初は慣れずにいましたが、次第に楽しくなっていきました。はちみつのように、優雅に話すと、まるで、お姫様になった気分になれました。そして、のどの痛みもすっかり忘れてしまいました。
「どうもありがとう!また来るわ!」しっかりとした声で、お客さんは出て行きました。
「こんにちはー!」元気な男の子の声が響きました。次のお客さんです。
「いらっしゃいませ。はちみつ喫茶へようこそ。」
「マスター!いつもの!」小さなお客さんはお店を走ってソファーに飛び込みました。花の香が広がります。
「あー気持ちい!」
マスターとはちみつは微笑みました。
『待ってたよ。さぁ、お話しましょう。』
「どうぞ。」
マスターが持ってきてくれたのは、こんがり焼けたトースト。そして、淡い黄色をしたはちみつ。クローバーのはちみつです。
「ありがとう!いただきます!」
お客さんは、はちみつをパンに塗ると、大きな口を開けて、サクッと音を立てながら食べ始めました。すると…
そこはクローバー畑。花と草の香りに包まれます。
「じゃぁ、おにごっこしようよ!」
『君はお話より、おにごっこだったね。』はちみつはくすくす笑いました。
「そうだよ!楽しみにしてたんだから!いくよ!よーいどん!」お客さんは走り出しました。はちみつも、さらさらと滑るように追いかけます。
『まって、まって』
「こっちだよ!」
『たっち!やったぁ!』
「つかまっちゃたぁ。じゃあ交代ね!」お客さんとはちみつは、元気いっぱい走りました。
「あー楽しかった!また遊ぼうね!」
「ちょっと待ってください。」マスターがお客さんを呼び止め、ひじをそっと触りました。少しすりむいています。
『マスターお願い。』マスターは、はちみつをお客さんのひじに塗ってあげました。
「僕パンじゃないよ?」お客さんはびっくりしました。マスターとはちみつは声を上げて笑いました。
『君を食べたりしないよ。私はお薬にもなるの。』
「そうだったんだ。ありがとう!」
お客さんはマスターとはちみつに手を振りました。
次のお客さんが来ました。
「いらっしゃいませ。はちみつ喫茶へようこそ。」
「こんにちは。アイスコーヒーを一杯いただけますか?」お客さんは疲れたように言いました。
「かしこまりました。では、こちらにおかけください。」
お客さんはソファーに座りました。
「ふぅー。」柔らかなソファーがゆっくり沈み、お客さんの体を優しく包んでくれました。まるでお花の中にいるようです。
お客さんはうとうと。すると、あの歌うような話声が聞こえてきました。
『あら。あのお客さん眠ってしまったわ。』
『本当。気持ちよさそう。』
お客さんは飛び起きて店内を見渡しました。しかしお店には誰もいません。
「おかしいな…」
「おまたせしました。アイスコーヒーでございます。」
カランと氷が優しくなりました。アイスコーヒーのそばには、柔らかなコーヒーの色をしたはちみつが添えられていました。
『さぁ、お話しましょう。』またあの声です。
「あの、マスター。さっきから、変な声がするんですけれど。」
「あぁ、今お話したのはこの子ですよ。」
マスターが指さしたのは、はちみつでした。
『えぇ、僕です。』
「はちみつがしゃべった!!」
「はい。うちのはちみつはおしゃべりで。まぁ、このはちみつは静かな子ですが。どうぞ、はちみつとのおしゃべりもお楽しみください。」
「は、はぁ…」
『まぁ、まずは私をコーヒーの中に入れて飲んでみてください。』
「わかりました…」お客さんは恐る恐るはちみつをスプーンですくいました。ふんわりとコーヒーの香りが広がります。アイスコーヒーの中に入れ、かき混ぜました。
『さぁ、召し上がれ。』
お客さんが一口飲むと…
そこは星空。空も地面も星空だけが広がっていました。
「喫茶店にいたはずなのに…」
『まぁまぁ、いいではないですか。ゆっくりおくつろぎくださいな。』
何も音がしない。そんな中、はちみつの落ち着いた優しい声だけがよく響きました。
「なんだか、不思議だけれど、まぁいっか。って気持ちになっちゃいますね。」お客さんは笑った。
『そうです。そんなものですよ。』
「何だか眠くなってきました。最近良く眠れてなかったのですよ。」
『そうでしたか。休んでも、大丈夫ですよ。』
「ありがとうございます…」お客さんは気持ちよさそうに眠りだしました。
「あれ?」お客さんが目を覚ますと、そこは喫茶店。
「よく眠れましたか?」
「えぇ。おかげさまで!何だか心も体もすっきりした気がします!」
『それは良かったです。』
「よし!がんばるぞ!」
お客さんは元気いっぱいになってお店を出て行きました。
ここは、はちみつ喫茶。さぁ、次のお客さんがやってきました。
「いらっしゃいませ。はちみつ喫茶へようこそ。」
『さぁ、お話しましょ。』
ドアを開けると、歌うような優しい話声が聞こえてきます。そして、黄色と黒の縞々エプロンのマスター。
「いらっしゃいませ。はちみつ喫茶へようこそ。」
そう。ここは、はちみつ喫茶。
「こんにちは。」お客さんはそういって、ごほごほとせき込みました。
「こんにちは。大丈夫ですか?」
「大丈夫。ちょっとかぜをひいちゃって。」
『それなら私の出番ね!』
「えっ?誰?」歌うような話声。お客さんはお店中を見渡しました。しかし誰もいません。
『びっくりさせちゃったわね。』
『いきなり話しかけるからよ。』
『あら、この私が話しかけてあげたのよ。』
「はちみつたちです。」そう言ってマスターは、はちみつの瓶を手に取りました。
「このはちみつがしゃべったっていうんですか?」
『そうよ。私よ。』
「しゃべった!」お客さんは、また、ごほごほとせき込みました。
「まぁ、まずはあちらのソファーにおかけください。」
お客さんは言われるがままソファーに腰かけました。ソファーは花びらのように柔らかく、優しい肌触りをしていて、花の香りがしました。
お客さんは少し安心した気持ちになって、店内を見渡しました。さっきから話声はするのに、お客さんは一人きり。棚にはたくさんのはちみつが並んでいました。
「どのはちみつも違う色をしているのですね。」
「えぇ、色も香りも味もみんな違いますよ。それぞれに個性があっておもしろいです。」
マスターはスプーンを差し出しました。
「特に個性的なはちみつですが、今のあなたにとても合うと思います。」
「キャラメル?」
「いいえ。はちみつですよ。マヌカはちみつ。うちのお姫様です。」
『そうよ。私を食べて。さぁ、お話ししましょ。』
お客さんは思い切って口に入れました。すると…
そこはお城の庭。ハーブやお花が沢山植えられていました。小鳥のさえずりも聞こえます。
「どうゆうこと?」
『まぁ、いいじゃない。ゆっくりお話しましょうよ。』はちみつは優雅な声で言いました。
「えぇ…。」お客さんは戸惑いながらも、はちみつとおしゃべりを始めました。最初は慣れずにいましたが、次第に楽しくなっていきました。はちみつのように、優雅に話すと、まるで、お姫様になった気分になれました。そして、のどの痛みもすっかり忘れてしまいました。
「どうもありがとう!また来るわ!」しっかりとした声で、お客さんは出て行きました。
「こんにちはー!」元気な男の子の声が響きました。次のお客さんです。
「いらっしゃいませ。はちみつ喫茶へようこそ。」
「マスター!いつもの!」小さなお客さんはお店を走ってソファーに飛び込みました。花の香が広がります。
「あー気持ちい!」
マスターとはちみつは微笑みました。
『待ってたよ。さぁ、お話しましょう。』
「どうぞ。」
マスターが持ってきてくれたのは、こんがり焼けたトースト。そして、淡い黄色をしたはちみつ。クローバーのはちみつです。
「ありがとう!いただきます!」
お客さんは、はちみつをパンに塗ると、大きな口を開けて、サクッと音を立てながら食べ始めました。すると…
そこはクローバー畑。花と草の香りに包まれます。
「じゃぁ、おにごっこしようよ!」
『君はお話より、おにごっこだったね。』はちみつはくすくす笑いました。
「そうだよ!楽しみにしてたんだから!いくよ!よーいどん!」お客さんは走り出しました。はちみつも、さらさらと滑るように追いかけます。
『まって、まって』
「こっちだよ!」
『たっち!やったぁ!』
「つかまっちゃたぁ。じゃあ交代ね!」お客さんとはちみつは、元気いっぱい走りました。
「あー楽しかった!また遊ぼうね!」
「ちょっと待ってください。」マスターがお客さんを呼び止め、ひじをそっと触りました。少しすりむいています。
『マスターお願い。』マスターは、はちみつをお客さんのひじに塗ってあげました。
「僕パンじゃないよ?」お客さんはびっくりしました。マスターとはちみつは声を上げて笑いました。
『君を食べたりしないよ。私はお薬にもなるの。』
「そうだったんだ。ありがとう!」
お客さんはマスターとはちみつに手を振りました。
次のお客さんが来ました。
「いらっしゃいませ。はちみつ喫茶へようこそ。」
「こんにちは。アイスコーヒーを一杯いただけますか?」お客さんは疲れたように言いました。
「かしこまりました。では、こちらにおかけください。」
お客さんはソファーに座りました。
「ふぅー。」柔らかなソファーがゆっくり沈み、お客さんの体を優しく包んでくれました。まるでお花の中にいるようです。
お客さんはうとうと。すると、あの歌うような話声が聞こえてきました。
『あら。あのお客さん眠ってしまったわ。』
『本当。気持ちよさそう。』
お客さんは飛び起きて店内を見渡しました。しかしお店には誰もいません。
「おかしいな…」
「おまたせしました。アイスコーヒーでございます。」
カランと氷が優しくなりました。アイスコーヒーのそばには、柔らかなコーヒーの色をしたはちみつが添えられていました。
『さぁ、お話しましょう。』またあの声です。
「あの、マスター。さっきから、変な声がするんですけれど。」
「あぁ、今お話したのはこの子ですよ。」
マスターが指さしたのは、はちみつでした。
『えぇ、僕です。』
「はちみつがしゃべった!!」
「はい。うちのはちみつはおしゃべりで。まぁ、このはちみつは静かな子ですが。どうぞ、はちみつとのおしゃべりもお楽しみください。」
「は、はぁ…」
『まぁ、まずは私をコーヒーの中に入れて飲んでみてください。』
「わかりました…」お客さんは恐る恐るはちみつをスプーンですくいました。ふんわりとコーヒーの香りが広がります。アイスコーヒーの中に入れ、かき混ぜました。
『さぁ、召し上がれ。』
お客さんが一口飲むと…
そこは星空。空も地面も星空だけが広がっていました。
「喫茶店にいたはずなのに…」
『まぁまぁ、いいではないですか。ゆっくりおくつろぎくださいな。』
何も音がしない。そんな中、はちみつの落ち着いた優しい声だけがよく響きました。
「なんだか、不思議だけれど、まぁいっか。って気持ちになっちゃいますね。」お客さんは笑った。
『そうです。そんなものですよ。』
「何だか眠くなってきました。最近良く眠れてなかったのですよ。」
『そうでしたか。休んでも、大丈夫ですよ。』
「ありがとうございます…」お客さんは気持ちよさそうに眠りだしました。
「あれ?」お客さんが目を覚ますと、そこは喫茶店。
「よく眠れましたか?」
「えぇ。おかげさまで!何だか心も体もすっきりした気がします!」
『それは良かったです。』
「よし!がんばるぞ!」
お客さんは元気いっぱいになってお店を出て行きました。
ここは、はちみつ喫茶。さぁ、次のお客さんがやってきました。
「いらっしゃいませ。はちみつ喫茶へようこそ。」
『さぁ、お話しましょ。』
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
稀代の悪女は死してなお
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」
稀代の悪女は処刑されました。
しかし、彼女には思惑があるようで……?
悪女聖女物語、第2弾♪
タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……?
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる