1 / 28
プロローグ
乙女ゲーム「ブランクコード」
しおりを挟む
玲奈は乙女ゲームが苦手だった。食わず嫌いは駄目かと思い、少しはプレイするものの、いつも序盤でやめてしまった。
まず主人公が気に食わない。主人公に対する周りの態度も気色悪く感じてしまう。そんな体たらくだったので、乙女ゲーム好きの友達とはゲームの話が合わなかった。
スマホ用乙女ゲーム「ブランクコード」に熱中するまでは。
ブランクコードはシングルプレイ専用のアドベンチャーゲームで、架空世界の小さな王国で物語が繰り広げられる。
主な舞台は、西洋風の街並みが美しい王都と、王都南部に広大な敷地を持つ王立学園だ。王立学園は全寮制の学校で、15歳から18歳の王族や貴族たちが学びと人脈を得る場所とされている。しかし、魔法の才能が高ければ平民でも入学できる。主人公は平民の少女で、王立学園に入学するところから話は始まる。
玲奈は友達に勧められて、渋々これをインストールした。浪人生なのでゲームをしている場合ではないのだが、そう思えば思うほど、したくもないゲームでも勉強よりマシな気がしてくる。
最初は1つのルート〈攻略対象:学年主席ウィリアム〉しか選べず、玲奈は「あ、やっぱり無理なやつ」と思って序盤だけでやめた。だが、その旨を友達に話したところ、彼女は熱心に言ってきたのだ。「そのルート終わったら、攻略対象が3人追加されるから! どのルートも玲奈が好きそうな感じだから! 私は合わなかったけど!」と。
ここまでしつこく勧められたのは初めてだったので、頑張ってプレイを続けることにした。
このルートのストーリーはこうだ。
主人公は学年主席の貴族ウィリアムに思いを寄せるが、ウィリアムは「シャルロッテと婚約しているから」と断り続ける。
だが、ウィリアムはだんだん主人公に惹かれていき、シャルロッテを邪魔と感じるようになる。婚約を破棄したいと思うが、シャルロッテの方が遥かに身分が高いため、婚約解消を申し出ることも出来ない。
思いつめたウィリアムはシャルロッテの命を狙おうとするのだが、主人公が止める。
この件でシャルロッテは主人公に恩を感じ、主人公の危機に駆けつけるのだ。
結果、シャルロッテは主人公を庇って死んでしまう。
主人公はウィリアムと結ばれて終わり。
(ああ、やっと終わった!)
玲奈は解放感に浸りながら、エンディングを流し読みした。
主人公の名前はプレイヤーが自由に付けられるのだが、玲奈はデフォルトの「アイン」という名前でプレイしている。
(アインは何か嫌だけど、シャルロッテはかっこいいな)
そんなことを思いながら、ついに別のルートをプレイすることになる。そして……ハマった。ものの見事にハマった。
選択肢を間違うと、すぐに主人公が死んでゲームオーバーだ。正しい選択肢を選び続けても、主要人物が容赦なく死ぬ。話が進めば進むほどシリアスになっていく。
玲奈は、敢えて間違っていそうな選択肢を選び、アインがどんな風に死ぬかを見て楽しんでいた。
(にしても、私のことを何だと思ってるんだか)
友達の言葉と現状を照らし合わせ、玲奈は苦笑した。
そうして2か月。玲奈は追加されたルートを3つともクリアした。エンディングはトゥルーエンドしか存在しなかった。
3つのルートは、〈攻略対象:第一王子クラウス〉〈攻略対象:第二王子アルベルト〉〈攻略対象:幼馴染ハンス〉というものだ。どのルートにも、ウィリアムは全く出てこなかった。最初に見せられた学年主席ルートは何だったのかと玲奈は呆れたが、シャルロッテを悪役令嬢たらしめるために必要だったのかもしれない。尚、追加された3つのルートのどれもにシャルロッテは出てくるのだが、必ず主人公のために死ぬ。
SNSなどでは、「こんなの乙女ゲームじゃない」「シャルロッテは本当に悪役令嬢なのか……?」といった意見が見受けられる。しかし玲奈は、「公式が乙女ゲームと謳い、シャルロッテは公式サイトで悪役令嬢と紹介されているのだから、それは疑いようのない事実だ」と考えていた。
玲奈は歩道で信号を待ちながら、ブランクコード公式サイトの情報を見ていた。
(アインは帝国人に命を狙われてた訳だけど……理由はよく分からないままだったな。アプデでルートが追加されて、そこで判明するとかかな?)
スマホを凝視していた玲奈は、気付かなかった。暴走した車が、猛スピードで向かってきていることに。
まず主人公が気に食わない。主人公に対する周りの態度も気色悪く感じてしまう。そんな体たらくだったので、乙女ゲーム好きの友達とはゲームの話が合わなかった。
スマホ用乙女ゲーム「ブランクコード」に熱中するまでは。
ブランクコードはシングルプレイ専用のアドベンチャーゲームで、架空世界の小さな王国で物語が繰り広げられる。
主な舞台は、西洋風の街並みが美しい王都と、王都南部に広大な敷地を持つ王立学園だ。王立学園は全寮制の学校で、15歳から18歳の王族や貴族たちが学びと人脈を得る場所とされている。しかし、魔法の才能が高ければ平民でも入学できる。主人公は平民の少女で、王立学園に入学するところから話は始まる。
玲奈は友達に勧められて、渋々これをインストールした。浪人生なのでゲームをしている場合ではないのだが、そう思えば思うほど、したくもないゲームでも勉強よりマシな気がしてくる。
最初は1つのルート〈攻略対象:学年主席ウィリアム〉しか選べず、玲奈は「あ、やっぱり無理なやつ」と思って序盤だけでやめた。だが、その旨を友達に話したところ、彼女は熱心に言ってきたのだ。「そのルート終わったら、攻略対象が3人追加されるから! どのルートも玲奈が好きそうな感じだから! 私は合わなかったけど!」と。
ここまでしつこく勧められたのは初めてだったので、頑張ってプレイを続けることにした。
このルートのストーリーはこうだ。
主人公は学年主席の貴族ウィリアムに思いを寄せるが、ウィリアムは「シャルロッテと婚約しているから」と断り続ける。
だが、ウィリアムはだんだん主人公に惹かれていき、シャルロッテを邪魔と感じるようになる。婚約を破棄したいと思うが、シャルロッテの方が遥かに身分が高いため、婚約解消を申し出ることも出来ない。
思いつめたウィリアムはシャルロッテの命を狙おうとするのだが、主人公が止める。
この件でシャルロッテは主人公に恩を感じ、主人公の危機に駆けつけるのだ。
結果、シャルロッテは主人公を庇って死んでしまう。
主人公はウィリアムと結ばれて終わり。
(ああ、やっと終わった!)
玲奈は解放感に浸りながら、エンディングを流し読みした。
主人公の名前はプレイヤーが自由に付けられるのだが、玲奈はデフォルトの「アイン」という名前でプレイしている。
(アインは何か嫌だけど、シャルロッテはかっこいいな)
そんなことを思いながら、ついに別のルートをプレイすることになる。そして……ハマった。ものの見事にハマった。
選択肢を間違うと、すぐに主人公が死んでゲームオーバーだ。正しい選択肢を選び続けても、主要人物が容赦なく死ぬ。話が進めば進むほどシリアスになっていく。
玲奈は、敢えて間違っていそうな選択肢を選び、アインがどんな風に死ぬかを見て楽しんでいた。
(にしても、私のことを何だと思ってるんだか)
友達の言葉と現状を照らし合わせ、玲奈は苦笑した。
そうして2か月。玲奈は追加されたルートを3つともクリアした。エンディングはトゥルーエンドしか存在しなかった。
3つのルートは、〈攻略対象:第一王子クラウス〉〈攻略対象:第二王子アルベルト〉〈攻略対象:幼馴染ハンス〉というものだ。どのルートにも、ウィリアムは全く出てこなかった。最初に見せられた学年主席ルートは何だったのかと玲奈は呆れたが、シャルロッテを悪役令嬢たらしめるために必要だったのかもしれない。尚、追加された3つのルートのどれもにシャルロッテは出てくるのだが、必ず主人公のために死ぬ。
SNSなどでは、「こんなの乙女ゲームじゃない」「シャルロッテは本当に悪役令嬢なのか……?」といった意見が見受けられる。しかし玲奈は、「公式が乙女ゲームと謳い、シャルロッテは公式サイトで悪役令嬢と紹介されているのだから、それは疑いようのない事実だ」と考えていた。
玲奈は歩道で信号を待ちながら、ブランクコード公式サイトの情報を見ていた。
(アインは帝国人に命を狙われてた訳だけど……理由はよく分からないままだったな。アプデでルートが追加されて、そこで判明するとかかな?)
スマホを凝視していた玲奈は、気付かなかった。暴走した車が、猛スピードで向かってきていることに。
11
あなたにおすすめの小説
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる
アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。
自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。
魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。
しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。
前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。
「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる