悪役令嬢に転生したので、剣を執って戦い抜く

秋鷺 照

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4章 エンディングに向けて

4-4 臨時会議

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「兄ちゃん、情報過多で混乱してるところ悪いが、もっと混乱させること言うぜ」
 そう前置きし、アルベルトは真面目な顔で話し出した。
「街の東で古代兵器が暴れた。帝国にあるはずの古代兵器だ」
「古代兵器だと……」クラウスが唸るような声を出す。「何でそんな物が……」
「理由は分からねーけど、とにかくアインはそれに襲われた。ハンスが偶然居合わせていて事なきを得たらしいが、これは帝国に抗議すべき事案だ」
「そうだな。僕から父上に伝えておこう」
「で、帝国の奴に命を狙われてるアインと俺はまだ危ない。ゼルドが味方に付いて古代兵器が壊されても、まだ他にもヤベー敵が王都内に残ってる。古代兵器を起動させた奴とかな」
「確かに……」
 険しい顔で対策を考え込むクラウス。だが、アルベルトは既にどうするか決めていた。
「俺とアインで皇国に逃げようと思う。短期留学って形を取れば問題無いし、さすがに皇国にまでは手を出せねーだろ」
 オストラ帝国と陸続きのこの国とは違い、レリーシャ皇国は海を隔てている。その上、皇国は帝国同様……いや、帝国とはまた種類の違う古代の技術や遺物を擁しており、帝国の戦力と拮抗しているので、下手に手を出して戦争になることは避けたいはずだ。
 皇国も、同盟国の王族が短期留学に来たなら国の威信をかけて守ろうとするだろう。
 これらのことから皇国に逃げるのが最も安全だと、アルベルトは考えた。
「良いよな、アイン」
「うん」
「アルベルト。先にアインに話を通しておくのが筋だろう。結構重大な決断を、そんな軽く……」
 クラウスがたしなめるように言うが、アルベルトはにやにや笑うばかりで取り合わない。
「まったく」
 そう呟いて嘆息したクラウス。表面上は「仕方のない弟だなぁ」と呆れているように見えるが、内心では、アルベルトの話を理解するので精一杯な自分を恥じていた。
 アルベルトはテーブルに頬杖をつく。
「ところでシャルロッテ」
「何かしら?」
「色々気になってることあるんだけど、教えてくれねーの? 生きてること隠してた理由とかさぁ」
「予想はついているのではなくて?」
「誰かに狙われてて身を隠してるんだと思ってたけど、それにしては今日の動きが不自然なんだよなぁ……。3週間前に教会行ってたのも、今日のための下見だったんだろ?」
「いいえ、全く別の用事よ」
「んな訳あるかよ。っと、まだ礼を言ってなかったな」
「言葉は要らないわ。その代わり、護衛が必要な時はシャッテを頼って頂戴?」
「ああ、また頼む」
 悪戯っぽい笑みを浮かべ合う2人に、クラウスが口を挟む。
「会議中に悪だくみとはけしからんな」
「まあまあ兄ちゃん、ちょっとくらい大目に見てくれよ」
「そうよクラウス。私を見るなり亡霊にでも会ったような顔してくれちゃって。けしからんのはどちらかしら?」
「う、それはすまなかった。あと、狙撃を阻止してくれてありがとう」
 クラウスは慌ててそう言った。シャルロッテはにっこり笑って頷き、アルベルトは話を戻す。
「なあシャルロッテ。狙撃の情報もそうだが、今日あの場所で古代兵器が暴れるってことも掴んでたんだろ? そうじゃなけりゃ、あんな所にいるなんて有り得ねー」
「偶然よ。ハンスだって偶然居合わせたんだもの」
「ハンスはアインの後をつけてたんだろ、タイミング的に。でも、お前は違う。一体どんな情報源を持ってるんだ?」
「興味本位で聞いてる?」
「半分はな。もう半分は、俺もその情報源使いたいから紹介してほしい」
「残念ながら、情報源はもう使えないわ。予言書のようなものでね。今日の、古代兵器のことまでしか書かれてなかったのよ」
「生きてること隠してたのも、予言に従ってたってことか?」
「そんなところよ」
 シャルロッテはしれっと嘘をついた。追及されるだろうと思っていたので、予め誤魔化し方を考えておいたのだ。前世の記憶がどうのゲームのシナリオがどうのと正直に言う気は起こらなかった。
 アルベルトは納得したような顔をする。
「そうか、残念」
「あら、随分とすんなり信じてくれるのね」
「古代の遺物とか訳分かんねーモン色々あるしな。そういうのもあるんだろ」
 そこで会話が途切れた。クラウスは待ってましたとばかりに告げる。
「短期留学は明日の午前中にでも出立できるよう手配しておく。準備しておけ。
 これにて臨時会議を終了する」


 寮の自室に戻ったシャルロッテは、思案にふける。
(シナリオが崩れても、2人が皇国に行くのは変わらないのね)
 ゲームではハンスが死ぬので、帝国への抗議が「古代兵器のせいで死者が出た」というものになる。その抗議文によって敵は「アインが死んだ」と勘違いし、油断する。その隙にアインとアルベルトは皇国へ避難するのだ。
 だが、この現実では、古代兵器による死者が出ていない。よって、敵はアインが生きていると知っている。
 偽装するために嘘の抗議文を書いてもらう訳にもいかなかった。帝国に嘘がバレれば、この国が不利になる。そんな危険は冒せない。もしシャルロッテが提案していても、王子たちに却下されていただろう。
(上手くいくかしら)
 シャルロッテは不安だった。
 敵からすれば、皇国へ逃亡されて手出しできなくなる前にアインを始末したいはずだ。敵が何らかの手段で情報を得て短期留学の計画を知ったなら、2人の前に立ち塞がるだろう。
 護衛として同行しようか、とシャルロッテは思ったが、すぐに頭を振る。
(ゲームのエンディング部分だし、2人の恋の邪魔はしたくないわ)
 とはいえ不安は拭えない。
(……そうだ、隠れて後をつければ良いんだわ!)
 何も無ければそれで良し。何かあれば出て行って戦えば良い。
 シャルロッテはそう思いながら眠りについた。




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