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フェノリアが聖女として神殿に入ったのは10年前。8歳の時だ。その時既にアーシャは神殿にいて、聖女は3人になった。最も年上の聖女は20代で、彼女が一人で仕事をしていた。子供には任せられないと思ったらしい。そして数週間後、仕事をしていた聖女が死んだため、フェノリアとアーシャが仕事をすることになったのだった。
神殿の北半分は〈聖女棟〉だ。聖女の居住区画があり、仕事の場もある。
幼い頃から働いていたフェノリアにとって、〈聖女棟〉は庭だった。誰にも気付かれず忍び込み、仕事の場を経由して居住区画へ向かう。アーシャに会うために。
そうして居住区画に足を踏み入れた時。
「あらぁ? フェノリアじゃない」
聞く者の思考を奪うような甘い声が、フェノリアの脳を揺さぶった。
「……アーシャ」
「どうしてここにいるの? 追い出されたはずでしょ?」
「そうですね、貴女のせいで追い出されました」
煮えたぎるような怒りをこらえ、フェノリアは淡々と言う。それを嘲笑うかのように、アーシャは可愛らしく首を傾げた。
「こんな所にいるのが警備の人に知られたら、酷い目に遭っちゃうかもよ?」
「……脅しのつもりですか? 他者が入れないよう結界を張っているので、何の問題もありませんね」
フェノリアの言葉に、アーシャはつまらなさそうな顔をした。
「ふーん。一応聞いてあげる。わたしに何の用?」
「神官に洗いざらい吐いてください。貴女が仕事をしていないこと、全て私の働きだということ、私は殺人未遂など犯していないこと」
「嫌よ」
清々しいほどきっぱりと言ったアーシャは、優し気な笑みを浮かべた。
「フェノリアは神殿に戻りたいのね。よく分かったわ。でも……それじゃ困るの」
「何が困るのかは知りませんが、それなら私と勝負してください。私が勝ったら貴女に出て行ってもらいます」
「わたしが出て行っても、あなたは戻れないわよ?」
「貴女さえいなければ、どうとでもなります」
聖女不在になるのは避けねばならない。神官はそれを分かっているはずだ。だから、アーシャが出て行けば、フェノリアを戻さざるを得なくなる。
アーシャはくすくすと笑った。
「そんな勝負、受けるわけないじゃない」
「なら、受ける気にさせるまでです」
光芒が、アーシャの腕を貫いた。
「っ⁉ 痛いじゃない!」
まさか攻撃されるとは思っていなかったのだろう。アーシャは少し取り乱し、憎しみを込めた瞳でフェノリアを睨む。
「どういうつもりよ!」
「勝負を受けないなら、もっと撃ちます」
「聖女に怪我させてただで済むと思ってるの⁉」
「怪我なんてしていないでしょう」
フェノリアの言葉の通り、アーシャの腕に傷は無い。先ほどの攻撃は、痛みだけを与えるものだったのだ。
アーシャは悔しそうに顔を歪めた。
「分かったわ」
「なら、勝負の内容を……」
「勝負なんて受けないってば。フェノリア、最後にもう一度忠告してあげる。神殿から出て二度と戻って来ないで。断れば、あなたを殺すわ」
神殿の北半分は〈聖女棟〉だ。聖女の居住区画があり、仕事の場もある。
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「ふーん。一応聞いてあげる。わたしに何の用?」
「神官に洗いざらい吐いてください。貴女が仕事をしていないこと、全て私の働きだということ、私は殺人未遂など犯していないこと」
「嫌よ」
清々しいほどきっぱりと言ったアーシャは、優し気な笑みを浮かべた。
「フェノリアは神殿に戻りたいのね。よく分かったわ。でも……それじゃ困るの」
「何が困るのかは知りませんが、それなら私と勝負してください。私が勝ったら貴女に出て行ってもらいます」
「わたしが出て行っても、あなたは戻れないわよ?」
「貴女さえいなければ、どうとでもなります」
聖女不在になるのは避けねばならない。神官はそれを分かっているはずだ。だから、アーシャが出て行けば、フェノリアを戻さざるを得なくなる。
アーシャはくすくすと笑った。
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「なら、受ける気にさせるまでです」
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「勝負を受けないなら、もっと撃ちます」
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